日本のヤバい女の子 静かなる抵抗

日本のヤバい女の子 静かなる抵抗

1,540円 (税込)

7pt

引きこもっていたのに働かされるアマテラスオオミカミ、妊娠したら男に「ホントに俺の子?」と疑われるコノハナノサクヤヒメ、恋人と引き離されて石化する松浦佐用(まつらさよ)姫。見知らぬ男にさらわれる絵姿女房。日本の昔話や神話に登場する、理不尽な目に遭う「女の子」たち。

──でも、みんな本当に平気だったのでしょうか。怒っていなかったのでしょうか。

著者は、怒りや悲しみをスルーされてきた昔話の女の子たちの素顔と本心に向き合い、彼女たちがどんなふうに「抵抗」してきたのかとことん語り合う。時に痛切で、時に痛快な、命を懸けた多種多様の異議申し立ては、現代の私たちにきっと力を与えてくれるはず。

優しくて、パワフルで、軽やかなイマジネーションが、千年前の女の子たちとあなたを自由にする新感覚エッセイ「日本のヤバい女の子」第2弾。女の子たちがわいわい語り合う4コマ漫画も収録。


【著者】
はらだ有彩 Harada Arisa
関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストレーションを作るテキストレーター。デモニッシュな女の子のためのファッションブランド《mon.you.moyo》代表。2018年5月、『日本のヤバい女の子』(柏書房)を刊行。新聞・雑誌・ウェブメディアで、小説、エッセイ、漫画を発表している。本書のイラストも担当。

公式サイト:https://arisaharada.com/
Twitter:@hurry1116
Instagram:@arisa_harada

[はじめに全文]

降ろされた幕をこじ開けて、物語の続きを

昔話の中には、理不尽な目に遭う女性がいます。彼女たちは奪われたり、捨てられたり、無理やり結婚させられたり、重責を背負わされたり、ナメられたり、敬遠されたり、ときには殺されたりします。
たとえば、「古事記」「日本書紀」に登場するコノハナノサクヤヒメは、妊娠したお腹を指して「ホントに俺の子?」と疑われます。同じくアマテラスオオミカミは引きこもるほど心に傷を負っても働かなくてはなりません。「絵姿女房」は会ったこともない男に攫われます。「松浦佐用姫」は社会に愛する人を奪われました。身体を揶揄されたり、一度ならず二度も命を奪われた女性たちもいます。
物語はなぜか、彼女たちの悲しみや苦悩をなんとなくスルーしたまま進んでいきます。
――そういう話だから。そういう風に決まっているから。

でも、みんな、本当に平気だったのでしょうか。怒っていなかったのでしょうか。

怒っていいんだよ、と言われる、言える時代になってしばらく経ちました。いやだと思ったら声を出せる。運命だと受け入れず、拒否したり、怒りをあらわにできる。
それでも、怒るのは難しいことです。始めるのも持続させるのも体力を消耗します。「また?」と面倒な顔をされたり、その瞬間の表情を切り取って感情的だと言われたり、すぐに十分な手ごたえを感じられない場合もあります。怒りが薄れていくことに罪悪感を抱くこともあります。

昔話の中には、取り返しのつかない罪を犯してしまった女性もいます。裁かれる彼女たちの横顔を「うつくしい悪女萌え」と持て囃す視線はあれど、「どうしてそんなことをしたの」と聞く人は多くありません。生まれながらにして悪逆非道だったのか、それとも救済の欠如によって、悩み、後悔しながら人ならざるものに変わっていったのか。限界を迎えてしまう、もっともっと前に怒ることができていれば、破滅に向かわずに住んだのか。いずれにせよ彼女たちの罪の理由もまた、なんとなくスルーされたままです。
――女というのはそういう生き物だから。そういう風に決まっているから。

昔話を見渡して、ふと気づいたことがあります。

もしかしたら、怒りを表現する方法は一つだけではないのかもしれない。泣いたり、暴れたり、叫んだりしていないからといって、怒っていないとは限らないのかもしれない。
たとえば――

楽しく暮らすこと。サボること。
全然話を聞かないこと。真実を教えないこと。
ずっと忘れないこと。二秒で忘れること。
ここに立っていること。消えてやらないこと。
生きていること。生きていたこと。

静かだけど、これらも確かな抵抗の表明なのかもしれない。人々を尻目にニヤリとしている女の子を、あるいは気づかれずにがっかりしている女の子を、自分でも知らないうちに奮い立っている女の子たちを追いかけて、呼びとめて、「あの時」考えていたことを聞いてみたい。
これは昔話の女の子たちと「ああでもない、こうでもない」と文句を言いあったり、悲しみを打ち明けあったり、ひそかに励ましあったりして、一緒に生きていくための本です。



この本は、二〇一八年に刊行した『日本のヤバい女の子』を読んでいても読めるし、読んでいなくても読めるようになっています。

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日本のヤバい女の子 静かなる抵抗 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    ずっと気になっていてやっと読めた。
    フィクションでも昔のお話でも、「女らしさ」とか「普通」の規範から外れた女性たちが強く逞しく生きていたんだって思うだけで元気付けられるものがある。
    八百屋お七とか、恋に恋して情熱的でガチで強いし、とりかえばや物語の双子とか、生きてるだけで抵抗、感あった。
    古典自力で

    0
    2022年06月08日

    Posted by ブクログ

    昔話の女性たちに思い入れて書いたエッセイ。

    昔話は当然男目線で書かれているものが多いので、今の女性の感覚からするとおかしな、不条理な話が多い。
    筆者は「はじめに」で語る
    _______
    物語はなぜか、彼女たちの悲しみや苦悩をなんとなくスルーしたまま進んでいきます。
    ーーそういう話だから。そういう風

    0
    2021年06月12日

    Posted by ブクログ

    昔話や伝承のなかで異端として扱わられる女性達に友人のように寄り添う文章で紹介してくれる。
    皆「自分」でいただけなのだ。
    やまとなでしこなんてくそくらえ。
    鬼を拝んだお婆さんとちょうふくやまの山姥が特に好き。

    0
    2021年05月29日

    Posted by ブクログ

    すっごいパンチの効いたヤバい女の子たちから元気もらえる。
    静かな抵抗も全然静かじゃない抵抗も、パワー漲ってた

    0
    2020年08月14日

    Posted by ブクログ

    第一弾と比べるといくぶんマイナーなラインナップだったせいかやや、パワーダウンの印象。でも、前著と同様、様々な昔話の女子たちの気持ちをすくい取る姿勢がとにかく好印象。何百年も後の現代にこうやって気持ちを理解しようとする試みをする人がいることに本人たちも喜んでいることだろう(創作だんだろうけど)。一番グ

    0
    2019年11月30日

    Posted by ブクログ

    かつて存在していたかもしれない、昔々の女の子たちを深い敬意で「生き直す」。通り過ぎていった彼女たちの痛みや悲しみ、怒りに足を止める。怒り続けることは疲れること、それすら肯定してくれる。はらださんの解釈に、私も生きてていいんだと少し体が軽くなる。

    0
    2019年10月23日

    Posted by ブクログ

    前作に引き続き「静かなる抵抗」編もとてもよかった。言語化できないもやもやを晴らしてくれてありがとうございます。心に残る言葉がいくつもあり、書き写した。読んだそばから忘れてしまうタイプなので、折に触れて見返してまた勇気をもらいたいと思う。

    0
    2023年09月17日

    Posted by ブクログ

    ●なぜ読んだか
    →タイトルと帯のコピーに惹かれた。
    “今ですら生きづらいのに昔やばくない?”
    の言葉に、確かに…!と思い手に取ってみた本。

    ●感想
    →なんだか時代を超えて昔の女性たちから励まされているような、そんな元気が湧いてくる本。
    日本書紀や古事記、今昔物語、平家物語など
    歴史書に登場する女性

    0
    2022年01月13日

    Posted by ブクログ

    優しくて、パワフルで、軽やかなイマジネーションが、千年前の女の子たちとあなたを自由にする新感覚エッセイ「日本のヤバい女の子」第2弾。女の子たちがわいわい語り合う4コマ漫画も収録。
    前作が面白かったので迷わず購入。これこれ、求めていたのはこれですよ。私、古典とか苦手なんですけど、思いつきもしない発想で

    0
    2020年06月28日

    Posted by ブクログ

    初っ端の「鬼を拝んだおばあさん」で泣いてしまった…。推しがいる人はわかる、わかりみ、わかりすぎる…ってなると思うの…。

    あいも変わらず出てくる男のろくでなし度、ぼんくら度が高い。「結婚相手の連れ子の器量が悪いから殺した」「駆け落ち相手が病に伏せって足手まといになったから殺した」スサノオノミコトはお

    0
    2020年02月17日

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