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戦時中のモノクロ写真をカラー化した『時をかける色彩』という写真集が刊行された。戦争を知らない二十代の書店員がそれを店頭に並べたことで、世界が少しずつ変わり始める。セクシャルマイノリティの書店員、保健室登校の女子中学生、家族に引け目を感じるテレビディレクター、アメリカと福島からの転校生たち……若い彼らを後押しする感動の青春小説。
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Posted by ブクログ
わたしの祖父母は戦後生まれで、身近な人からリアルな戦争体験を聞いたことがありません 作中にあった「戦争を知る世代から直接バトンを受け取ることができる、最後の世代」ということに、そうだよなと深く頷きました 正直戦争のことはよく分からず、歴史上の話と認識してしまいます 今でも当事者の方は沢山いるのに… ...続きを読む戦争や震災についてどんな風に触れたらいいのかわからない漠然とした感情を作中の登場人物がほどいてくれました 「未来にしか約束をすることができない」けれど、これからは寄り添える人でありたいと思います 戦後80年のタイミングでこの作品を読めてよかったです
戦時中のモノクロ写真をカラー化した「時をかける色彩」という写真集を中心に描かれる5つの物語。 私たち20代ぐらいの若者を指して「戦争を知らない世代」と呼ばれることがある。あれが私はすごく苦手だった。 この前、日本では終戦記念日だったけど現在進行形で戦争は世界中で起きていて、そして今この瞬間も沢山の...続きを読む人が死んでいる。それなのに、どうして知らない世代と区切られて、知ろうとすれば偉いと言われ、平和を願えば偽善と批判されるんだろう。今生きている人はみんな戦争の時代を生きる当事者じゃないのかと私は思う。 この本はそんな心のモヤモヤを具現化したような一冊だった。 生まれた環境や経験、立場によって戦争へのイメージ、平和学習への意識は違う。全員で向き合おうと叫ぶには戦争は怖くて、辛くて、しんどすぎるから押し付けることは出来ない。温度差がある。 偽善、自己満、戦争を知らないくせにと他人から揶揄されることもあるかもしれない。それに自分自身が1番分かっている。私たちは戦争を知らない。少し勉強をしたぐらいで知った気になって、終戦記念日の報道特集を少し見てやめて、すぐ日常に戻る。そんな私たちが戦争を語る意味はあるのか。 だけど、そんな葛藤きっと誰だって抱えてる。 「時をかける色彩」と出会った物語上の彼らが、自身を省みながら、時に周囲に批判されながら、それでも動き出すのは、それが彼らの意志だからに他ならない。 私たちは戦争を知らない世代だ。だけど、この意志は私自身のもの。だから、もしも私が、あなたが、平和を願う時代の当事者でありたいと思うなら出来ることから始めてみるのは悪くない。 そんなふうに背中を押してくれる本だった。より多くの人に読んでほしい。
額賀さんの本をずっと読んでみたいと思いつつ、 タイミングを逃し続けていましたが、 お盆に行った書店で新刊を見つけ手に取りました。 ---------------------------------- 戦後80年。 近い将来戦争を経験している人が いなくなる日本で 若い僕達に何ができるのだろう。 古...続きを読むい1枚の写真が 色づくことで 世界の見え方が変わる 一歩踏み出す勇気を 与えてくれる 感動の青春小説! ---------------------------------- 本作はずっと読みかけになっていて、 通勤中に読んでたんですが、なかなか手が進まず。 暑くて電車通勤も辛くて、 本を読める余裕がなかった上に、 仕事も大変で、 さらに本を読む余裕がありませんでした。 この三連休で読みきる!と思ったものの、 土日はかなり寝てしまいました。 やっと頭がスッキリして、 本が読めるようになって思ったのは、 読書の楽しさ面白さでした。 実は通勤中に読んでても、 いまいちハマらないな…合ってないのかも… と思っていましたが、 実は私自身のコンディションが悪かったんだな、と。 本書を読み終えてそう思いました。 夏の間にどうしても読み切りたかった一冊。 戦争、平和について考えると言うと、 ありきたりに聞こえてしまうかもしれないですが、 本書では現代を生きる私たちが、 それぞれの立場や環境から見える景色と重ねて描いてくれています。 中盤からは、 次はどんな人にバトンが繋がれていくんだろうと 読み進める手が止まりませんでした。 10〜20代の感受性が形成されていくときに読みたかったなと思いました。 そして今の自分の感想と比較したかった!
戦後80年。 80年という節目を感じながら読もうと思ったが、終戦記念日なんぞとっくに過ぎていた頃に読むことになってしまった…。 自分がこの世に生まれ成長し今に至るまで、どれだけの戦争・紛争が起きているのだろう?またどれだけの天災も起きているのだろうか? 5編からなる短編集は軸となるAIで彩られた資...続きを読む料集『時をかける色彩』。 ここで思い出したのは、地元の資料館(東京大空襲・関東大震災の遺物が遺されたところ)を、小学校の時に授業の一環で行ったこと。第三章の『平和教育の落ちこぼれ』に出てくる守美のように、凄惨であり目をつぶれば瞼に戦禍が蘇るトラウマと恐怖に慄いた記憶が蘇った。 目をつぶりたくなるような造形が今でも衝撃的に残っている(今ほどセンシティブな映像は出てきませんが、自分が幼い頃はよく終戦の日にそういったドキュメンタリーはありました)。 『モノクロの夏に帰る』というタイトルは、モノクロだった時代に遡り、当時の人たちを思い馳せ、自分たちの『浅はかだった思い』を、改めて自分がその立場であったら何を思うのか何を寄り添えばいいのか。 この物語の中で言語化されてて、それに気づいた時に自分自身も彼らと同様に上っ面だったのかな…と。 情けないですが、見て見ぬふりをしてて戦後の自分が戦争を知ったかのように語ってんじゃねぇと。 戦争を知ることはたくさん。学校で習った授業だけだと表向きしかない。だから私たち自身が、さらに学びを得ることは可能なんじゃないかと。 それをどうすれば未来の人たちに遺すことができるのかを改めて考えて行きたいと思いました。
8月15日で終戦からちょうど80年を迎える。 殆どの日本人が戦後の生まれとなった今、 太平洋戦争をはるか遠い昔話と感じる人も少なくない。 戦時下の写真はモノクロばかりで、灰色がかった光景はどこか「歴史上の出来事」のように感じさせる。 戦時中のモノクロ写真をカラー化した『時をかける色彩』という写真...続きを読む集をきっかけに様々な立場の人達が戦争を自分に一歩近付けて考えるという5編からなる連作短編集だ。 どの編も考えさせられるものがあり、特に書店員飛鳥の『時をかける色彩』のポップには心に刺さるものがあり読み応えのある1冊だ。 登場人物の名前に色が入っていたり、普通からちょっとはみ出したそれぞれの主人公達のキャラ設定にも奥深さを感じる。 教科書や本で見た戦争の写真って白黒で味気ないというか、殺風景な感じで暗いイメージがある。 というのも人の表情も良く分からないし、モノトーンで明るさがなく、一昔前の時代で身近に感じられないところだ。 そんな暗いイメージが戦争から遠ざけているところもある気がする。 戦前、戦時中の白黒写真をカラー化して戦争の記憶の寿命を延ばし継承に繋げる記憶の解凍プロジェクトの取り組みは本当に素晴らしいと思う。ただカラー化するだけでなく資料を調べたり対話を通して記憶の色をよみがえらせて記憶を未来に継承していく新しい伝え方がこれからは大切なのだと感じた。 青柳守美の言った言葉で「原爆のキノコ雲は真っ白だと思っていた」 私も真っ白だと思っていたのでネットで『AIでカラー化した写真でよみがえる戦前、戦争』の原爆の写真を見てみたらほのかに橙色に染まっていた。 その他に子犬を抱く特効隊員の写真を見比べると、不思議と色がつくことによって表情もハッキリしていきいきとした感じで全体が明るくなり、自分達の生きている時代と同じように見えた。写真をカラー化することによって悲惨さはより鮮明になるが、楽しさも見るものに伝わり気付きも得やすくなる。以前より身近に感じることが出来、今と戦時下は繋がっているんだなぁと感じた。 本書は反戦や戦争の悲惨さを訴える類いの本ではない。 戦争と平和について考える前の心得というか、入り口のような本ではないだろうか。 自分達の出来ることはなにか考え、出来ることからやってみようよ、手を伸ばしてみようよ! と勇気ときっかけを後押ししてくれる。 普通からはみ出したキャラ設定も差別や偏見、いじめを身近なところからなくしていこう。 そして違う意見や文化の人とも分かり合う努力をしていこう、相手の立場に寄り添い協力して個々の心の中にある火種を手の届くところからなくしていこうよ。 皆がそういう気持ちを持つ事が戦争を失くす事に繋がっていくんじゃないかと伝えたいのではないかな。 第3章「平和教育の落ちこぼれ」 青柳守美の平和教育の話で、広島は幼稚園の頃から原爆ドームへ行ったりと平和教育を行っていることに驚かされた。 そして広島や長崎、沖縄の人達はそれが当たり前で今も当事者のように忘れられない出来事ととして根付いている。 それとは対照的に 「平和教育って、広島や長崎以外の土地や、日本以外の国でやらないと意味がないよね」 「広島で私達が忘れないように気を付けている間に、そうじゃない人達は8月6日が何の日か分からないで大人になるの」 守美の姉の台詞が凄く印象に残った。 戦争と平和教育が年々希薄になっているように感じる。 戦争体験者が減っていくなかで今までと同じやり方で大丈夫なのかな?と不安になる。 日本は現在、「アメリカの核の傘下」に守られているけど、もし「核の傘下」がなくなればウクライナと同じように軍事作戦という名のもとに近隣国から戦争に巻き込まれるかも知れない。 もしかしたら、の話をすれば切りがないかもしれないけど、戦争や平和への関心の低さが災いして、気付いたら戦争になっていた。そうならないためにも平和教育の重要さを感じずにはいられない。 私が感想を書くとちょっと重い感じになってしまうが、本書はもっと気軽に読める小説である。 本書をきっかけに多くの人が目の前の人に手を伸ばし連なって、繋がり、世界中の人達と手と手を取り合える世の中になればと、そして一刻も早く戦争や核の驚異が失くなってくれればと願うばかりです。
戦時中などの写真に色をつけた「時をかける色彩」と言う写真集をめぐる連作短編集。 年齢も住むところも違う様々な環境の人たちが「時をかける色彩」に触れることにより、戦争とは何だったのかを問いかける。 戦後80年。 もう太平洋戦争を直接語れる人は、ほとんどいない。 それでも数年前に比べて、当時の様子を語る...続きを読む人が増えて来た印象を受ける。 作られる作品も現実に忠実なものがある一方、ある意味、戦争に意味があるのかと反戦のメッセージが含まれてるものも出て来た。 どちらも間違いじゃないし、それを比較することで、今作中にもあるが、「戦争を二度と起こしてはいけない」ってしか言えなかった自分が少し恥ずかしくなってくる。 日本は広島、長崎で一旦終わったかに見える戦争も、今日、今、この時にも戦ってる人たちが世界にはいる。 でも、今の戦争も何のために戦っているの? そう言わずにいられない。 真珠湾攻撃がなかったら… 原爆が落ちなかったら… 何人もの命が奪われることはなかった。 それはどちらの国にも言えること。 この世に大切じゃない命なんて、一つもない。 日本目線で語られる戦争だけど、その裏には日本が起こした虐殺などがあることも忘れてはいけない。 誰が悪いのか? 誰の名誉の為の争いなのか? 今起きてる戦争が終わる方法を何とか見出して欲しい。 脱線してしまったけど、ラストには311の話も出てくる。 毎年311には、被災地に心を寄せることにしている。 その中で心に響いたレオの母の言葉。 寄り添おうと頑張ることを、許してくれる。
モノクロの戦争関連の写真集をカラーに。 写真集を手に取った人の思想を追っていくお話。 アウシュヴィッツ、パールハーバー、神風特攻隊、そして原爆等。 アメリカでは原爆を投下した事により 戦争を終わらせる事ができたと教えられる。 一方、日本は特攻隊や原爆の被爆者など日本は一見、かっこいい&可哀想...続きを読むと教えられる。 けどバターン死の行進など、日本が捕虜にしてきた迫害は意外と知られていない。 美化される部分も大事だと思うが、きちんと日本が世界にしてきた酷いことも知るべきだと思う。 私は、戦争はどっちが正しいとかど間違ってるを知るのではなく、戦争そのものの知識をきちんと身につける事が大事だと、これを読んで感じました。 読みやすいので、学生の方は読書感想文にピッタリな一冊だと思います。
読んで良かった。何度も心を叩かれた気がした。『時をかける色彩』、見てみたいし、そこで自分が何を感じるのかを知りたい。 感動の青春小説と帯にも裏表紙にもあるが、もっと広い大きい小説だと思う。 わたしにとっては今年1番心に響いた本であることは間違いない。
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