Posted by ブクログ
2018年11月04日
風俗関連記者によるAV女優の実態を記した本。AV業界にくわしく、特にAV女優への取材を以前から続け、その実態を明らかにしている。業界の80年代からの変遷が理解でき参考となった。AV女優一人一人に様々なドラマがあることがわかった。
「不景気で収入源を補おうとする女性から、好奇心や刺激ほしさの女性まで...続きを読む、幅広い層からの応募で出演志願者は膨れあがり、完全に供給過剰な状態となっている。大多数の女性は出演したいと希望しても面接に呼ばれることすらなく、門前払いされているという現実がある」p15
「90年代後半、AV業界全体でも“健全化”の波が起こり、現在は怪しさや胡散臭さのないビジネスライクな世界になっている」p118
「AV女優たちは怪しさやいい加減さのかけらもない環境で“女優”として演技を求められ、その1つ1つが成功体験になっている。AV女優は各社からオファーをもらって経験を重ねるほど、やりがいを覚えて働く姿勢が前向きになる。現在生き残っているメーカーやモデルプロダクションは、一般企業家に成功した法人ばかりである」p118
「自殺をしてしまったAV女優たちは、AVというメディアに性搾取をされて弱り切ったから自殺をしたのではなく、意思を完遂する人間的能力が高く、一時期の気の迷いや心のぶれで不運なことに死ぬことに成功してしまった、といえるのである」p142
「どうしても女性を管理するモデルプロダクションには暴力性を背負っているイメージがないと、同業者や所属モデルに舐められて、なにが起こるかわからないといった事情がある」p187
「AV女優には誰かにバレるリスクより、一般社会と感覚がずれること、一度足を踏み入れてしまうと抜け出せないリスクの方が高い」p202
「引退後にそのような裸やセックスの写真や映像が残ってしまうことより、深刻なのは「楽に楽しく稼げた」、また「注目されて必要とされた」という裸の世界だからこそ摑むことが可能だった成功体験から抜けられないことにある。一時期の高コストな生活水準が忘れられなくて、普通の仕事はとてもできないと切り替えができない女性は多く、それがAV女優全体の2/3が性風俗に流れている所以である」p232
「AV女優としての一般論として女性は初々しい処女の状態が最も価値の高い状態と仮定すると、出演してカラダをお金に換えるほど価値は下がる。「カラダは減るものじゃない」というよく耳にする通説は、誰かに売るという競争がある以上、消費されているので明らかに価値は減っている」p232
「社会が裸の仕事に対して以前より寛容になったといってもカラダを売っている現役時代は、楽に稼げることの代償として他人から信用されづらく、恋愛をしてもうまくいかず、成長した友達からは見放され、周囲からは転落したと蔑まれる、ということが起こりがちである。非常に惨めで孤独な青春時代、人生といえる」p237