無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
◼️ 藍銅ツバメ「鯉姫婚姻譚」
若隠居の孫一郎は庭の池に住む人魚・おたつに人と人じゃないものが夫婦になる話を語るー。日本ファンタジーノベル大賞。
古書店で目に留めた一冊。異母弟が仕切る呉服屋から援助を受け、かつて父が愛人を囲った別宅に住む若隠居の孫一郎は、亡き父が拾ってきて庭の池に放した人魚・おたつに懐かれている。まだ童女のようなおたつは旺盛な食欲を示し、人語を話す。孫一郎はねだられるのに任せ、人と人以外のものが夫婦になる民話を語って聞かせるのだったー。
孫一郎が話すのは「猿婚」「八尾比丘尼」「つらら女」「蛇女房」「馬婚」という、ほぼ日本の昔話として定着しているもの。おおむねの内容は同じで、ラストはたぶん変えてあるものが多い。リアルで迫真のストーリーとなっている。「馬婚」は知らなかった。かつてどこかで読んだ話のバリエーションを丹念に辿る感覚でそれなりにおもしろい。
拗ねたり言うことを聞かなかったりするおたつを、孫一郎もまた偏愛している。一方、過去その家で育った妾の子の弟清吉、長く勤めているおいねはおたつに畏怖と嫌悪の目を向ける。
孫一郎は穏やかだが孤独だ。出て行った女房は再婚し、子も成している。人生の目的も、大した趣味も、知己もない。清吉は過剰に世話をしたがるが、起居を共にするおいねはそっけない。葛藤にも、過ぎたこととして背を向けている。冷静を装ってもこだわるのはおたつだけだ。おたつは冬眠の後、身体に変化が生じてくる。
その、諦観したような心境がラストにつながる。おたつが孫一郎と夫婦になりたいと言ったのはなぜなのか、正体は何なのか。どんな成り行きになるのか、物語のタッチを見てクライマックスを予感しながら待つ作品。
おたつについては、実は最初の方で察しがついた。ある意味本能に忠実だが、常軌を逸した世界。ファンタジックで苛烈な結末。
民話の語りという、哀しくもどこか安心感のある道を通り、様々なラストを通して暗示し、そこから飛躍する。よく出来た作品だと思う。
宮部みゆきの三島屋変調百物語シリーズを参考にしたとかで、確かにそのテイストが漂っていると思った。
Posted by ブクログ
孫一郎が庭に住まう人魚にせがまれて、異種族同士の婚姻譚を語って聞かせる。そんな孫一郎と人魚もまた結ばれる、という形の小説。
実際に語り継がれている異類婚姻譚が小説になったら、を味わえる。
文庫版の表紙は甘い恋愛小説じみているが、孫一郎が語る物語も、二人の結末も、わかりやすいハッピーエンドかというと……異類婚姻譚自体がけっこう独特の余韻というか物悲しい結末だったりするからなのか、それとも私たちがそう言うものに心惹かれるからそういった話が残り続けたのか。
孫一郎はうまくいかない婚姻譚として話をしているのに、人魚は別の解釈をし続けていること。必ず、二人が何かを食べるシーンを挟んでいることが、最後にいきてくる。登竜門の故事のように、ラストで竜になるお辰。元から龍だったというより、他の誰の肉も今後食べないと誓えるくらいの一心さで、彼女の感覚で結ばれたんだから、まあ龍にもなるか。人間感覚だと「思ってる婚姻と違う……」になるけど、現実世界のニュースを見ていると似たような恋人たちもいるのかも。
Posted by ブクログ
※ネタバレ注意
異類婚姻譚史上最高のラスト! というオビの文句に惹かれて買ったが、まったく予想の範疇を超えてこなかった。
オビを見た瞬間に「どっちかがどっちかを食うとか?」と思い、おたつが食欲旺盛になったあたりで「おたつが食うほうで孫一郎が食われるほうかな?」「このふたりの話自体が誰かに語られるのかな?」という予感がして、結局その通りになった。
おたつが竜になったのだけは良かったが。
連作短編的に語られる異類婚姻譚がどれも面白いし、文体も好きだし、ラストも行くべきところに行ったなという納得感はあるのに、期待しすぎてしまったせいで読後にガッカリが残ってしまったなあ。とっぴんぱらりのぷう。
異類婚姻譚て、私は相手と自分の違いに葛藤するところが好きなんだけど、おたつの「自分が考えた最高の成就!」をためらいもなく押しつけてくる感じが、あんまり好きになれなかったな。完全に清吉と同じ目でおたつを見てしまった。好みの問題ですね。
孫一郎の生活力なさげだけど善良でのほほんとした感じが好みだったぶん、余計におたつ憎し(?)になってしまったかもしれない。
結局は馬婿の話が一番おもしろかったです。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。