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呼人は、なにかを寄せてしまう
動物や、虫や、植物、自然現象
だから、ひとつの場所にとどまらず、
旅をする
人とちがうこと、それでも隣りあって生きること
痛みと希望の連作短編集。
「呼人」とは、なにかを引き寄せる特殊体質。原因は不明でごく少数だが一定の割合で発現する。政府機関によって認定され、生活に制限がある。5人の呼人と、呼人に関わる人たちの姿から、社会の中で少数であること、そうした状況で生きるというのはどういうことか、を描く。
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「……真帆ってすごいね」
「なにが?」
「あたしの目の前で、自分は恵まれてるって、はっきりいうなんて」
真帆は首をかしげた。
「だってそうじゃない? くいなは自分で選んでないのに旅をしなくちゃいけなくて、わたしは旅をするかしないか、好きに選べる。それってわたしが恵まれてるってことだよね?」
(本文より)
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Posted by ブクログ
何かを呼びよせてしまうという特異体質があるせいで2週間ごとに居場所を変えなければならない「呼人(よびと)」をめぐる連作短編集。
自分の立ち位置と折り合いをつけて達観した人と、そのクラスメート、特異体質が判明したせいで母からうとまれ、そのことがトラウマになってしまった人、今まさに自分が呼人であることが判明してうろたえる人、呼人を支援する役所の人、男を引き寄せてしまう人と、なぜかそこに寄ってきた女の子、鳥を寄せてしまう人。
あらゆるシチュエーションの呼人が描かれ、語り手の視点もさまざま。そうすることで、人とちがうことの不便や屈折した思い、まわりの人のとまどいや、浅薄な理解、簡単に口にされる励ましの言葉、率直な友情に対する心からの感謝などが活写され、あちこちでたちどまって深く考えさせられる。
2編めのたんぽぽの子のかかえる母へのトラウマと、それを埋めてくれる別の形の愛情に泣いた。
Posted by ブクログ
動物や虫、植物、自然現象など呼び寄せてしまう「呼人」。呼人は旅をする必要があり、滞在日数が個人差はあるが決められてます。この本は、物語が6つに分けられててどれも呼人に関係している人が主人公です。呼人が友人であったり、主人公であったり、唐突に呼人になった人など様々な視点から呼人について知ることができます。呼人になると、新しい環境や生活に移り変わらないといけないし、差別や偏見の目で見られることもあり大変だと思います。その中で、呼人であることを綺麗事で片付けず、鋭い視点から不満や困難、普通の人たちとの認識の違いで苦労する登場人物が悩みながら前に進もうとする姿は心を惹かれました。読み終わった後は、新たな価値観を感じることができて良かったと思いました。
Posted by ブクログ
マイノリティについて考えるためのとても良い本だったと思います。
“呼人”とは、何かを呼び寄せてしまう体質を持った人のこと。雨だったり、動物だったり、植物だったり。分かりやすく言えば雨女みたいなことですね。でもこのお話の中の呼人の力はハンパないので、ひと所にいるのを政府から禁じられるほど。ひと所にとどまると災害や自然破壊が起きてしまうから。
なので旅を続けなければならないのですが、国から保障を受けている存在。
そんな呼人たちの短編集。主人公は10代の子たちなので、その年代の人たちへのメッセージなんだろうな、と思われます。
呼人は特殊な存在という理由でいつでも我慢しなければいけないのか?という問題や、今まで遠巻きにしていた呼人という存在に、ある日突然自分がなってしまったら?とか、マイノリティとマジョリティの関係にバッサバッサとメスを入れてきます。呼人である我が子を受け入れられない母まで登場します。そして呼人である自分だって差別をすることがあることに気付いたりもします。
呼人であることに意味や原因なんかない、ただそう生まれついただけ。
結局、根っこのところが違うのだから分かり合えなくて当たり前。分かり合えて当然と思うからぶつかるのだ、とこの本は訴えてきます。
ぜひぜひ10代の人たちに読んでもらいたい作品。もちろん大人の私たちにも。
Posted by ブクログ
思いがけず読み応えのある作品に出会うことがある。
この『呼人は旅をする』はまさにそれだった。
“何か”を引き寄せる「呼人」になってしまった人達が主人公となる短編集。
その“何か”はその呼人それぞれだが、呼人が同じ場所に居続けることで、ある一定の物を大量に呼び寄せてしまい、多くの人が生活に支障をきたすことになる。
だから呼人という特殊能力が己の身に出現してしまった人は、一箇所に留まらずに旅を続けなければならない…子どもであっても。
ちょっと有り得ない設定だが、ファンタジックなわけでもなく、何かすとんと腑に落ちる語り口なのだ。
きっとそれは呼人が感じることや呼人に対する周囲の反応が、私たちの日常にも見え隠れしていることだからだろう。
分かっていても目を瞑ったり、見えないことにしたり…呼人という存在を通してそれに気づかせてくれる。
小学校高学年〜中学生に是非読んでもらいたい。
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