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「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」。著名なこの一文で始まる本書は、近代日本最大の啓蒙家である著者が、生来平等な人間に差異をもたらすのは学問の有無によると説く。彼のすすめる学問とは、西洋実学の批判的摂取である。明治の人心を啓発したその言は、一世紀を経た今日も清新である。(解説 小泉信三)
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Posted by ブクログ
2025/04/04 p.52 そもそも人の勇力はただ読書のみによりて得べきものにあらず。読書は学問の術なり、学問は事をなすの術なり。実地に接して事に慣るるにあらざればけっして勇力を生ずべからず。わが社中すでにその術を得たる者は、貧苦を忍び艱難を冒して、その所得の知見を文明の事実に施さざるべからず。...続きを読むその科は枚挙に遑あらず。商売勤めざるべからず、法律議せざるべからず、工業起こさざるべからず、農業勧めざるべからず、著書・訳術・新聞の出版、およそ文明の事件はことごとく取りてわが私有となし、国民の先をなして政府と相助け、官の力と私の力と互いに平均して一国全体の力を増し、かの薄弱なる独立を移して動かすべからざるの基礎に置き、外国と鋒を争いて毫も譲ることなく、今より数十の新年を経て、顧みて今月今日の有様を回想し、今日の独立を悦ばずしてかえってこれを愍笑するの勢いに至るは、豈一大快事ならずや。 本を読むだけではなく、実際に頭と手を動かすことも伴わせる必要があるってことかな。 勇気や力は読書だけで得られるものではなく、実際の経験や行動を通じてこそ得られる。
目次 合本学問之勧序 初 編 端 書 二 編 端 書 人は同等なる事 三 編 国は同等なる事 一身独立して一国独立する事 四 編 学者の職分を論ず 附 録 五 編 明治七年一月一日の詞 六 編 国法の貴きを論ず 七 編 国民の職分を論ず 八 編 我心をもって他人...続きを読むの身を制すべからず 九 編 学問の旨を二様に記して中津の旧友に贈る文 十 編 前編の続、中津の旧友に贈る 十一編 名分をもって偽君子を生ずるの論 十二編 演説の法を勧むるの説 人の品行は高尚ならざるべからざるの論 十三編 怨望の人間に害あるを論ず 十四編 心事の棚卸 世話の字の義 十五編 事物を疑って取捨を断ずる事 十六編 手近く独立を守る事 心事と働きと相当すべきの論 十七編 人 望 論
この国の教育を変えられる機関、人は今のところ誰もいない…ならば俺が変える!!!!とさながらジャンプの主人公のように流れを変え実際に慶應設立など偉大な功績を残してしまった人の、教育が国力増強のためにいかに重要かを説いたお話し。意識高い系の啓蒙とかではなく、ただただ愛国精神から愚民に教育を施して欧米と戦...続きを読むえるマシな国家にしていこうというアツい想いを感じた。
ヤバい、このままでは今の日本もかなりやばいよ 明治?すごいよね令和に通じるなんて 全ての日本人に読んでもらいたい
『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず』は有名すぎる書き出しだけど、本当に福沢諭吉が言いたかったのはそのすぐ後にある、『人は生まれながらにして貴賤の別なし。ただ、学問を務めて物事をよく知るものは貴人となり、無学なるものは下人となるなり』っていうフレーズだと思う。日本の近代化を目指した明治維新の時...続きを読む期に、国の独立とは、軍事力が高まったり経済力が高まったりするということがその本質ではなく、個人の独立を通じた国の独立って事なんだと思う。なんか色々勉強してて、やる気がなくなったときに諭吉先生の教え聞くと身が引き締まって頑張らなきゃってなるので愛用しています
お偉いさんの勉強しなさい本かと思ったら全く違った。ちょっとコイツどうなのという人物を福沢節で斬っていく様が実に痛快だった。 現存してたら毒舌系YouTuberにでもなっていただろう。
小泉信三の「読書論」で「学問のすゝめ」が出てきて、とても面白そうなので読んでみたら、予想以上だった。 タイトルは誰でも知っている本書だが、まさかこんなに面白いとは。 だからこそ、明治時代にあれだけ読まれたに違いない。(国民の10人に一人は読んだらしい。いまでいうと、一千万部以上の超ベストセラーと...続きを読むいうことになる) 平等と独立と学問(実学)の重要性を熱く語る。
いざこの本を読んでみると、学校で「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という有名すぎる一文を学ぶだけでは不十分であるということがわかる。福沢諭吉はこの文で平等論を表すが一方で学問をするかしないかによって貧富の差が生まれているというとこをリアリスティックに語っている。 民主主義における学問の重...続きを読む要性にも言及されており、民主主義、資本主義が自然発生しなかった日本という国においてこの本が生まれたということの重要性は果てしない。
私が近現代日本における経済政策思想史の研究を志したのは、かれこれ四半世紀以上前のことである。以来、折に触れ福沢の著作には親しんできた。しかし、修士論文のテーマとしたのが、まさに福沢諭吉と田口卯吉の経済政策思想の比較というものであったので、福沢のテキストを研究の対象として読んだことはあっても、幸か不...続きを読む幸か、好き嫌いという観点から、あるいは自らの人生の指針という観点から考えるという機会はあまりなかった。 もちろん、福沢や田口をテーマに取り上げることとなった契機は、今から思えば単純に好き嫌いの範疇に属するものであったかもしれない。研究者として福沢の厖大なテキストと格闘する前、学部学生の頃には『福翁自伝』や『学問のすゝめ』を読み、また大学院に進学した直後(1985年)には当時出たばかりの丸山真男の『「文明論之概略」を読む(上・中・下)』(岩波新書、1986年)を手引きとしながら、『文明論之概略』を読み、福沢の自由主義思想に大いに共感したことは否定できないからである。 しかし、実際の政策論議の場でも原理原則を全面に出し、これでもかこれでもかというように持説を展開してくる田口と比較すると、福沢が主張する政策論は、よく言えば変幻自在、悪くいえば一貫性に乏しく「無残な矛盾の体系」(杉山忠平)とも言えるものであり、人生経験に乏しく「大人の議論」に慣れていない駆け出しの研究者を大いに悩ませたのである。たとえば、『学問のすゝめ 十五編』の中に、次のような一節がある。 「英国の経済家に自由法を悦ぶ者多くして、これを信ずる輩はあたかももって世界普通の定法の如くに認むれども、アメリカの学者は保護法を唱えて自国一種の経済論を主張する者あり。一議随って出れば一説随ってこれを駁し、異説争論その極まる所を知るべからず。」(岩波文庫版、156ページ) 福沢自身、「一議随って出れば一説随ってこれを駁し、異説争論」することを自らの著作等で実践した学者であった。それがどんなに正しそうな説に見えても、福沢にとって、そのことに「惑溺」することは文明の進度の遅れを示すものであったからである。 研究対象としてはこのように厄介な福沢なのであるが、上述部分に続く以下の一節は、「自由の気風は唯多事争論の間に在て存するものと知る可し」という『文明論之概略』のもっとも有名な言葉とともに、研究者として我々後進が胸に刻んでおきたい一節であると私には思われる。 「異説争論の際に事物の真理を求むるは、なお逆風に向かって舟を行るが如し。その舟路を右にしまたこれを左にし、浪に激し風に逆らい、数十百里の海を経過するも、その直達の路を計れば進むこと僅に三、五里に過ぎず。航海にはしばしば順風の便ありと雖ども、人事においては決してこれなし。人事の進歩して真理に達するの路は、ただ異説争論の際にまぎるの一法あるのみ。而してその説論の生ずる源は、疑の一点に在りて存するものなり。疑の世界に真理多しとは、蓋しこれの謂なり」(同上) 初出:『三田評論』2012年4月号
誰もが知っているのにあまり読まれていない古典。民主主義に不可欠なのは学問なのだ。漢語の素養からかリズムが心地よいので現代語訳よりも古い文体のまま読むのがよい。オススメ!
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