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Posted by ブクログ
どん底におちた40代、50代の女性たちが這い上がる四つの話。誠意を尽くせば立ち上がれるという展開で励みになった。
特に三章の「四十六歳で教え子の選手に逃げられる」が心に残った。良かれと思っていた指導であったが、教え子には伝わらず他のコーチの元に逃げられてしまった邦子。そこからコーチングを学び、自分なりにいろいろ努力していく。
拓也との出会いと信頼関係を築く姿がとても良かった。拓也の美しいクロールの泳ぎに驚いた邦子だが、何と邦子のフォームを小さな頃から繰り返しみて身につけたフォームであった。その後、二人三脚でついに金メダルを獲得。涙がジワッと込み上げた。
裏切った元教え子がまたコーチをやってほしいと都合よく擦り寄ってきた際の、邦子の「選手とコーチの間で一番大事なのは信頼関係。一度壊れてしまったらもう元には戻らない」という言葉が重い。人間関係全般にも言えること。家族もしかり。感情に走った言葉は言わずに、相手のこと、自分のこともよく考えて人との付き合いをしていきたいと思った。相手のことを知ろうとする努力が大事と改めてわかった。
Posted by ブクログ
思いも寄らない転落から人生がガラッと変わってしまった四人のアラフィフ女性の物語です。
物語は同一テーマの女性のそれぞれを描く短編集。一篇ずつはそれぞれ独立して、相互の関連はない。
一人目は結婚相手から突如一方的に離婚を言い渡された専業主婦。二人目は長年育て上げてきた事業を全否定で取り上げられた会社員。三人目はオリンピックを目指して育ててきた選手にもうついていけないと逃げられたコーチ。四人目は長年担当していた番組から突然降ろされて収入の途絶えてしまったフリーランスの女性。それぞれの女性は唐突に目の前に開いた穴に落とされ、すわ絶体絶命かと思われるような状況に追い込まれる。けれど、それで人生が終わるわけではない。そこから彼女たちがどのように自分の人生を切り開いていくのか、さらに最後の最後にチクリと刺すスパイスを味わえる短編集となっている。
タイトルと違い、大変前向きで明るい逆転の物語たちでした。タイトルからはもっと酷い地獄のような落差を味わって苦しみから這い上がっていく物語なのかと思っていたのですが、主人公になる女性たちがそれぞれなかなかに強かな女性たちで、地獄と思えるほどの描写はほとんどなかったように思います。受け止め方によっては人生詰んだ、と思うような状況になった主人公もいましたが、なんとかしようとしたらなんとかなっていく辺りが人の強さかなと感じました。人生五十年を生きて、結婚や出産、子育てを経験してきた彼女たちは、弱いまま守られるだけではなく、肝が据わった女性たちだったのかもしれません。
感じたのは、いくつになっても前を向いて新しいことを学び、挑戦する気持ちを忘れずにいることの大切さです。もちろん、彼女たちは最終的には何とかなって上手くいったパターンの物語ですが、その『最終的に』が人生のどのタイミングで来るかなんて誰にも分らないことです。途中でどれだけ負け越していても、最終的に勝ちを得られたのなら、それは勝ちなのだと改めて感じます。
いつどこでどんな落とし穴があるか分からない、トラップだらけの世界を歩いている人生ですが、前を向いて、時には人を頼りながらでも、しっかりと自分で歩いていけたらいいと思います。
読みやすく、最後にスカッとしたい時におすすめできそうな一冊でした。
Posted by ブクログ
まずまず平穏な人生を送っていたはずなのに突如として崩れた足許。自分が落ちてしまった陥穽はあまりに深く絶望的な気持ちになったが……。
人生の岐路に立たされたアラフィフ女性たちの選択と再起を描く痛快リベンジ短編集。
◇
伊藤由美はいつものように夕飯の支度を始めた。まだ午後6時。夫の帰宅まであと1時間ほどある。十分間に合うだろう。
雅規と結婚して28年が経つ。結婚当時25歳だった由美も53歳になった。
食器棚のガラス扉に映る自分の顔。確かに老けたと思う。
今日の昼、5年ぶりに江都子と会った。
大学教授をしているその友人が由美を見るなり「老けたわね」としみじみ言う。
ムッとした由美だったが、江都子の溌剌とした様子を見て思わずことばを飲み込んだ。自分と同い年の江都子は、実年齢よりも10歳は若く見えたからだ。
人前に立つ仕事をしているのが大きいのだろうかと、密かにため息を吐いた。
帰宅して食卓についた雅規は、テレビに目を向けたまま黙々と料理を口に運んでいる。せっかく夫の好きな献立なのに、無言で食べられては張り合いがない。「美味しい?」と尋ねても、雅規は由美の顔も見ずに「ああ」と短く答えるだけだ。
まあ元々無口な人なので仕方ない。静かで穏やかな生活ができているのだから幸せなのだと由美は思うことにした。
けれど、夫がいきなり離婚を切り出してきたのは、その数日後のことだった。 ( 第1章「五十三歳で専業主婦をクビになる」) ※全4章。
* * * * *
小さな幸せだけれど、それがいつまでも続くと思っていた各話の主人公たち。
ところがある日、その平穏な生活が突如として崩れ去ってしまいます。途方に暮れて、人生を悲観する彼女たちですが……。
絶望の淵にあっても、彼女たちは沈みっぱなしにはならず、再起を図る決心をします。再起に必要なもの。それは、「リベンジ」です。
ここでポイントとなるのは、そのリベンジの方法です。
彼女たちは、自分を奈落の底に突き落とした相手に対して何かを直接仕掛けるのではなく、それまでの自分を見つめ直して自身の在り方を変えていこうとします。
つまり、「それまでの自分」へのリベンジを、結果的に相手を見返すことに繋げるのです。
第1章の主人公は53歳の由美。
地味な専業主婦として生きてきた由美ですが、離婚によって唯一の居場所だった家庭を失います。
けれど生活のため、社会に能動的に関わることを選択した由美は、やがて真の自立を手に入れていき……。
第2章の主人公は51歳の英子。
旅行代理店の中間管理職です。堅実な仕事ぶりで役員目前まできていましたが、社内政治に長けた同僚の男に企画を潰され役員の座もその男に奪われます。
けれど、退職して起業することを選択した英子は、自身の企画をさらにブラッシュアップして、積極的な営業を展開することで……。
第3章の主人公は46歳の邦子。
スイミングスクール所属のベテランコーチです。専属コーチとして担当していた有望な若手男性スイマーから、ある日突如契約解除されてしまいます。
けれど自身のコーチングスタイルと向き合う選択をした邦子は、大学院で学ぶなどしてスキルアップに努め……。
第4章の主人公は52歳の綾子。
フリーアナウンサーとして22年間も担当してきたラジオのトーク番組を、ディレクターの私情により降板させられます。
けれど生活のため選択した「話し方の個人指導」という地道な仕事を続けるうち、自身のアナウンスメントにもさらに磨きがかかっていき……。
彼女たちは自身を高める生き方を選択することでみごとに再起を果たします。そして身勝手な理由で自分を奈落の底に突き落とした男を見返す姿が、ラストで描かれます。
テーマ的に柚木麻子さんの『あいにくあんたのためじゃない』と重なりますが、痛快さでは本作のほうが格段うわまわります。
スッキリした気分で新年をスタートさせたいという方にはオススメです。
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