「とはいえ日本の若者の英会話力は昔より改善しているのではないだろうか。私の親世代の日本人数学者にはまるっきりたどたどしいカタカナ発音の人がけっこういた。私自身は、大学を出てアメリカの大学院に留学するまで一度もネイティブスピーカーの授業は受けたことがなかったし、留学のために T O E F Lの試験を受けるまで一度もリスニングの試験は受けたことがなかった。今では早くからさまざまな英語の世界にふれることにより、昔の私より英会話力のある学生はそれなりにいるように思う。最初にも書いたように、できる人はちゃんとできるが、そうでない人は全然できないということで差が開いているのであろう。 「アメリカ大学院留学」でも書いた通り、英語で授業ができれば研究者としてのキャリアの選択肢は大きく広がる。これを読んでいる若い人は、ぜひ今のうちに世界に通用する英語力を身につけてほしいと思う。」
「現在、数学研究で世界一の国は明らかにアメリカだが、二番目はフランスだと思う。しかもアメリカは外国出身の数学者を大量に抱えているのに対し、フランスの主力は自国出身者であることを思えば、研究者養成の実績ではフランスが世界一なのかもしれない。フィールズ賞受賞者の出身校を(大学院ではなく)大学で見れば、世界一はパリの高等師範学校( E N S)である。」
「この夏にルーマニア西部のティミショアラで開かれたコンファレンスに参加してきた。私がルーマニアに行ったのは 8年ぶり 14回目である。ルーマニアについてはあまり科学技術先進国というイメージはないと思うし、国民 1人当たり G D Pも日本の半分以下である。しかし数学ではかなりの有名研究者が出ており、私の専門である作用素環論では、フィールズ賞受賞者こそいないものの、フィールズ賞のすぐ次のレベルの人が 2人いて、さらにその次のレベルの有名数学者も何人も出しており、世界トップ級の重要国である。私もルーマニア人数学者に大きな影響を受けている。(ただしこれらの有名数学者はみなアメリカをはじめとする先進国に脱出しており、現在のルーマニアにはいない。)なぜルーマニアが経済状況のよくない中、このような高い研究水準に達することができたのかは興味深い問題だと思うので、私の考えを書いてみたい。」