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Posted by ブクログ
前年、岩波文庫から出ているのを読んだ。
その解説において、「サラゴサ手稿」には複数の異なるヴァージョンが存在している、とされていた。
この工藤幸雄による邦訳は、その「異なるヴァージョン」のひとつ、ということになる。
岩波文庫版の方の記憶はそれほど鮮明ではなく、また細かく比較して読むような手間を(今のところ)かけられていないが、違っているな、という点はいくつかあった。たとえば、この創元ライブラリ版で少し登場した「さまよえるユダヤ人」やそれにまつわる部分はまるっきり覚えがなく、同じ箇所を見比べてみるとたしかに、岩波文庫版からは、その部分がまるっと抜け落ちていた。
あるいは、数学者ってこんな早くから登場してたっけ? と思い岩波文庫版を見てみると、そちらでは下巻あたりでようやく、といったところで、物語の順序にも違いがある。
とまあそんな具合に、内容として異なる部分がちょいちょいある。
内容の違いだけでなく、訳文の違いもまた、岩波文庫版を読んだ人にとっては楽しめる部分だと思う。こちらは、もともと世界幻想文学全集(だったっけ?)に出た抄訳から始まっているからか、全体的に、外連味がある文体となっている。冒頭の部分なんか、まるっきり別物で、いい雰囲気を出している。
とはいえ、より広い読者を対象とした読みやすさでいえば、岩波文庫版に分がある。
「異本である」という点を抜きにしてもちゃんと棲み分けはできそうな感じだし、両方とも読んで飽き飽きするものでもないだろう。
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