Posted by ブクログ
2012年02月05日
爆笑問題の「日本史原論」シリーズの最新刊。
「忠臣蔵」と言えば、誰もが一度は聞いた事があると思う。
その「忠臣蔵」の登場人物をネタに爆笑問題の二人が漫才をくりひろげる。
全部で17章となっており、概ね1章あたり1人。
さすがに全員、取り上げる訳にはいかず、後半は複数の登場人物を一つの章で取り上げ...続きを読むている。
各章で取り上げる人物についても章の先頭で簡単な紹介文がついているし、爆笑問題の田中が「忠臣蔵」の中では、どのように描かれているかの解説をやっているので、忠臣蔵の登場人物についての知識がなくても楽しめる。
ところで、(自分のオリジナルな考えではないが)長く愛される物語、というのは大抵、以下の要素を持っている。
1.登場人物が多い
2.その登場人物ごとに「物語」がある
そのため、読み手は、その中から自分好みの「物語」を選び、楽しむ事ができる。
しかも時間の経過などで、自分の好みが変わったとしても、多くの登場人物の「物語」があるから、その時の自分の好みに合う別の「物語」も見つけられるようになっている。
しかも、洋の東西を問わず「古典」は同様の要素を持っている。
いや、今もアイドルグループの売り出し方も根っこは、同じなので、「古今東西」に共通する方法なのだろう。
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閑話休題
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本書の中で特に面白い、と感じたのは次の2点。
一つは爆笑問題の太田の言葉。
”「忠臣蔵」は、よく考えたら、完全に集団テロ事件”
そして、あとがきの中では、ここからさらに発展して、
”日本人には理屈抜きに権威に対する嫌悪があり、弱い立場の者に対する共感あるように思える”
という言葉。
言われてみれば、その通りなのだが、これまでの「忠臣蔵」のイメージを根底からひっくり返すような言葉に驚いた。
ただ、テレビでの太田の物言いを考えると、どこまで本気で言っているのか分からないが・・・。
もう一つは、1章を使って、「脱落者」について語っている点。
四十七市が「英雄」に祀り上げられた関係で、「脱落者」は「臆病者」「裏切り者」という烙印を押されてしまっているが、本書では特に偏見を持つ事なく、というより、
むしろ「弁護」するような形で取り上げている点。
個人的には「脱落者」の中でも、あまり目立たない(そのため「物語」にしにくい)人たちの「討ち入り事件後」の人生について興味が湧いてきた。
様々な事情で「討ち入り」に加われなかった人々。それも「無名」の人達は、四十七士をどのように見ていたのだろう。