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Posted by ブクログ
自分が言いたいことを言えるように読書を始めたけど、本作は、世の中に自分の知らない世界(同性愛者同士がまぐわう場所)があることを教えてくれたし、きっとストレートの人には表現できない感覚の描写がもう新鮮で、あっという間に読めた。描写に関しては、色や音の描写がリアルでそこが好きだ。
それにしても、ほかの作家と違うところは他に何だろうと考えてみたら、以下のことに突き当たった。
・いぶき以外の登場人物に名前がない(匿名性が高く、誰かにあてはまるかもしれない可能性を孕む)
・「男」と出てきたからといって次に出てきた「彼」と同一人物ではない。別人。これは男女の物語しか読んだことがなかったから起きてしまった混乱だ。
本書の他のレビューを読んでみたのだが、概して「読みにくい」という感想が多かった。もしかしたら上記二点が理由なのではないだろうか。
だから二番目に挙げた「男と彼の関係」によって、最後の、いぶきを殺した人物を殺すシーンは誰が何をしているのか理解するのに何回か読み直したけれど、それでも初めて読むクィア文学がこの作品で良かったと思っている。
ジャクソンひとりは、性描写が無理で途中で止めていたので、2作目のこちらももしその描写が酷いようだったら、私はこのまま安堂ホセという人物の書く小説を敬遠して過ごしていくのかなと思っていたが、そうならなくて良かった。むしろ何年かおきに再読して、自分の成長深化を測る作品としたいので、星5つにした。
その他に…
地下と地上に世界を分けているのが興味深い。蛇にピアスのDesire(シバさんが働いてるところ) を思い出した。地下=人目に触れちゃいけないところ。
Posted by ブクログ
ジャクソン一人、に続いてミックスのゲイの男性が主人公。こんな店が本当にあるの?と想像や知識の範疇を超えるストーリーラインではあるが、カミングアウトしていない職場で、事件をきっかけに一気に(その店に行っていたことまで含めて)知られてしまうかもという恐怖の日々が切実で、こういう気持ちで過ごしている人がきっと少なからずいるんだろうなあと悲しい気持ちになった。
レストランの場面も然り。海外ではよく見るが、日本では公の場でゲイカップルとして振る舞うとこういう視線を浴びているのかも。カミングアウトして生きることがヘイトクライムの対象になるという代償を伴うという恐れ。海外だって同じように陰で言う人は言うし、ヘイトスピーチとかクライムという点では変わらないのだろうなあ。
それにしても、まだ2冊しか読んでいないが、どぎつい事件性を抜きにして書いてもらえるともう少し読みやすいんだが…実際に、出会いの場を求めると、そんな危険と背中合わせ、みたいな世界とセットにならざるを得ないのか。そういう世界を紹介してくれたことが受賞のきっかけでもあるのかなあ。先日ラジオのインタビューで聞いた作者の声がとても穏やかで、インタビュアーを立てるような謙虚さだったのだが、そこが職場のジャクソンやこの作品の主人公と重なるところもあり、安堂さん自身の抱える別世界みたいなものまで含めて面白いのかもしれない。
Posted by ブクログ
怒りは屈折する。
人に降りかかった苦痛は、やがて怒りへと変わる。怒りは憎悪の対象を見つけ出し、暴力を加えることを許可する。私たちが生きる社会では怒りと暴力がはびこっている。憎悪の対象に暴力を振るう「青い」多数派を批判的に見ていた「赤い」自分自身でさえも、他の誰かの憎悪の対象にされる。やがて受け付けきれず、あふれた苦痛は怒りへと変わり自身も「青い」存在へと変わる。
〈イエロー〉から見た〈ブラック〉の人間。
〈単一の男〉から見たホモの男。
ヘテロからホモへ、ホモからホモへのアウティングという暗黙の暴力。
普段は目に見えない憎悪は、まるで〈やりたい〉から〈邪魔〉へと簡単にコマンドが切り替わるかのように、小さなきっかけで露呈される。
ヘイトクライムや差別問題に切り込み、読者に「赤い」自身を追体験させる批判的かつリベラル派な小説だと感じました。短く簡潔な文ながら、その一つ一つの言葉に複数の意味を持たせ、切れ目なく続く物語構成も印象的でした。
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