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秋の夕暮れ、いつものように階段掃除をしていた幸宏を抑えようのない強烈な虚無感が襲う──「僕は何をやってるんだ?」突如、階段レースへの情熱を失ってしまい戸惑う彼の前に現われた美しい少女、御神楽あやめは言った「飽きたんじゃないかな?」初対面の彼女の言葉が心に突き刺さる……。そして、悩んだすえ休部を決意した幸宏に、今度は遊佐がある計画を持ちかけてくるのだが、それは到底承諾できないことであり……。大反響学園グラフィティ第6弾!!
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Posted by ブクログ
“「……………」 そこにあるのは、やはりただの階段だった。 あ、れ? スタート。 レースは一方的だった。四階まで上がり切る前に井筒にリードを許し、そのまま彼の背中を追いかけて走る展開になってしまった。今度も階段を飛ばして降りることができない。ゴールするまでに息切れしてしまい、最後は少し歩いてしまった...続きを読む。 「おーいっ。何だよ、それ。本当にテンション下がってんぞ!せっかく俺が……」 怒る井筒に平謝りで応じながら、幸宏自身も苛立っていた。おかしい。こんなはずじゃないのに。自分は、どうなってしまったんだろう。” 神庭幸宏が階段を駆けることに理由はあるのか。 御神楽が普通に怖い。計算づくだ。 遊佐の計画も、怖いけど。こっちのほうがいい。それにしても完璧すぎる。 “「やあ、いらっしゃい。ご用件は?」 女子生徒と対照的に、椅子に深々と腰掛けて悠然と微笑みかけてくるのは、天栗浜高校現生徒会長、遊佐由宇一その人だ。 幸宏は息を整えながら歩み寄り、遊佐の前に立った。机の上に置かれた碁盤を見下ろす。碁盤の上には幾つもの碁石が並べられていた。 「遊佐さん……」 息はまだ整っていなかったが、幸宏は切り出した。腕を振り上げる。遊佐の目が、一瞬揺らいだ。 バアンッ。盤上の碁石を乱暴に払いのける。幸宏は思い切り叫んだ。 「一年三組、神庭幸宏っ。生徒会長に立候補します!」 女子生徒が目を見張って両手を口元に当てている。遊佐は碁石が飛んだ瞬間、それらを少し目で追ったようだが、椅子から身を起こすことはなかった。その微笑みが、ゆるゆると深くなっていく。 「いいね」 そして、幸宏を見上げて満足そうに頷いた。 「良い一手だ。ありがとう」 幸宏は姿勢を正し、遊佐に一礼した。”
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