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Posted by ブクログ
“「……………」
そこにあるのは、やはりただの階段だった。
あ、れ?
スタート。
レースは一方的だった。四階まで上がり切る前に井筒にリードを許し、そのまま彼の背中を追いかけて走る展開になってしまった。今度も階段を飛ばして降りることができない。ゴールするまでに息切れしてしまい、最後は少し歩いてしまった。
「おーいっ。何だよ、それ。本当にテンション下がってんぞ!せっかく俺が……」
怒る井筒に平謝りで応じながら、幸宏自身も苛立っていた。おかしい。こんなはずじゃないのに。自分は、どうなってしまったんだろう。”
神庭幸宏が階段を駆けることに理由はあるのか。
御神楽が普通に怖い。計算づくだ。
遊佐の計画も、怖いけど。こっちのほうがいい。それにしても完璧すぎる。
“「やあ、いらっしゃい。ご用件は?」
女子生徒と対照的に、椅子に深々と腰掛けて悠然と微笑みかけてくるのは、天栗浜高校現生徒会長、遊佐由宇一その人だ。
幸宏は息を整えながら歩み寄り、遊佐の前に立った。机の上に置かれた碁盤を見下ろす。碁盤の上には幾つもの碁石が並べられていた。
「遊佐さん……」
息はまだ整っていなかったが、幸宏は切り出した。腕を振り上げる。遊佐の目が、一瞬揺らいだ。
バアンッ。盤上の碁石を乱暴に払いのける。幸宏は思い切り叫んだ。
「一年三組、神庭幸宏っ。生徒会長に立候補します!」
女子生徒が目を見張って両手を口元に当てている。遊佐は碁石が飛んだ瞬間、それらを少し目で追ったようだが、椅子から身を起こすことはなかった。その微笑みが、ゆるゆると深くなっていく。
「いいね」
そして、幸宏を見上げて満足そうに頷いた。
「良い一手だ。ありがとう」
幸宏は姿勢を正し、遊佐に一礼した。”
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