Posted by ブクログ
2010年10月14日
東京都監察医務院監察医であった著者が、世間を騒がせた惨殺事件を犯罪心理学や法医学の側面から犯人像を浮き彫りする本。
著者のこれまでの検死解剖の実績は本書の中のコメントにリアリティを与えている。 ちょっとした刑事ドラマや推理小説はあくまで作者が考えた人物背景や舞台をベースに犯罪が行われるため、プロ...続きを読むの目から見て整合性があるものなのだろうか?という疑問を常に持っていた。 人を殺すという極限の状態というものは、一般人には馴染みが無いので、作者の虚構をさもありなんと受け入れてしまうが、実際その場に立つと本当は違った心理が働くということを本書は教えてくれる。
特にバラバラ事件は残忍な人間の仕業との先入観があるが、実際は普通の人間が保身をするという心理状態を引き金にしてしまうことが多いという。 人を殺めてしまった後の処理は、小説などでは詳しく描写されないことがあるが、保身→証拠隠滅というロジックが、死体の切断に人を駆り立ててしまうらしい。
本書が取り扱う話題の性質上、殺人の状況がかなり詳しく描写されている。 犯人の心理状態をたどりつつ殺人現場をイメージしてしまうと、殺人者側に吸い込まれそうで怖い。 TVやメディアを通して事件を見るだけであれば客観的な視点で犯人を見るのだが、「保身」の衝動は誰にでもあるので、本当に自分が冷静になれるのかは分からない。