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道沢一番という名前は、「何事にも一番になれるように」という父の願いで付けられた。
重荷に感じたこともあったが、父には感謝している。「男らしく生きろ」という父の期待に応えることで一番の人生はうまくいってきたからだ。
しかし二年の交際を経て恋人の千凪にプロポーズしたところ、彼女の返事は「好きだけど、愛したことは一度もない」だった――。
千凪はアロマンティック・アセクシャル(他人に恋愛感情も性的欲求も抱くことがない性質)で、長年、恋愛ができないが故に「普通」の人生を送れないことに悩み、もがいていたのだった。
千凪への思いを捨てられない一番と、普通になりたい千凪。恋愛感情では結ばれない二人にとっての愛の形とは。
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Posted by ブクログ
面白くて一気見してしまった。
アロマンティックアセクシュアルの千凪と、男らしさを植え付けられてきた一番のラブストーリーだ。千凪は、一番と付き合ってから結婚の話が出るまでの2年間、「恋人らしいこと」に大きな嫌悪感を抱きながら我慢していた。しかしプロポーズされた時、自分がアロマンティックアセクシュアルだと気づき、プロポーズを断る。
千凪の「一番の愛には応えられないが、周りと違うことが苦しい。できるだけ普通でいたい」という思いと、一番の「千凪と一緒にいたい。結婚したい」というお互いの利害が一致し、偽装結婚を始めた。
しかしやはりうまくいかず、一番は千凪を衝動的に襲ってしまう。この時が本当に苦しかった。好きな人に欲のままレイプまがいなことをしてしまう一番の辛さ。そして、嫌なのをわかってされる千凪の苦痛。2人の偽装結婚はすぐに破綻した。
その間に千凪は同じ境遇の人と話したりして視野が広がり、誰も愛せないと思っていたが、一番のことを考えて行動していたことが「愛」だと気づく。最終的に、お互いに性的なことがなくても一緒にいることを選択する。
私は恋愛感情をちゃんと持つタイプだから、世の中にはこんな人もいるんだ、こんなに苦しいんだ、と思った。確かに好意のない人からのそのような行動は、とてもじゃないが苦痛に感じる。好きな人とイチャイチャすること自体が苦痛なんて、どうしたら良いのだろう。
でも、夫婦になったらいずれは性的感情がなくなることもあると聞く。それでも愛していると言える人たちは、日々のコミュニケーションや無償の愛で繋がっているのだろうか。千凪と一番はその領域に入っているように感じた。もし自分が付き合って結婚する人が、体が不自由だったり、様々な事情で触れ合えない人だとしたら、その人の内面をしっかりと見て好きだと思え、思いやることが最高の愛なのだろうと感じた。
君島彼方さんの本は、価値観を広げてくれる素晴らしい作品だった。
Posted by ブクログ
辛い。どちらも辛い。
それなのに、結婚することを選ぶ2人。
私は、恋人との間に【無条件の愛】が存在したことがない。
愛した分愛されたいし、許した分許されたい。
だから、愛されなくなったら、すぐに愛せなくなる。
そんな私だからこそ、この2人がこの先やっていけるのか、不安に思ってしまう。
だからこそ、幸せになっている未来を想像したい。
一番の父親の気持ちも、考えたら分かったような気がする。自分がそうなれなくて辛かったから、息子には同じ思いをして欲しくなかったんだよね。まあ、やりすぎだけどね。
「多様性を認めていこう」と言うのは、大抵マジョリティ側の人。自分自身がマイノリティでないから、そう言えるのだろう。
それも理解しているつもりだけれど、実際に当事者になった時、果たして心の底から当たり前に受容し、尊重できるのだろうか。そう考えると、少し怖くなった。
2人の幸せを信じて疑わない人になりたい。
#一番の恋人
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