今や日本人のとっても好きな画家のトップクラスに入るフェルメール作品について、「静かさ」という切り口で問いかけていく、中々に面白い企画である。
使用された素材(アズライトよりも鮮やかなラピスラズリ(ウルトラマリンブルー)、構図、削除・抑制のよる描き方、光そのものの捉え方、その光が当時のオランダ特有
...続きを読むといえるような光であるなどなど非常に興味深い。
それにしても筆者は勿論調べているのであろうが、フェルメール作品の静謐さのピークというのを『青衣の女』と捉えているように思える。
フェルメール作品を全て見たことはないが、成程その静謐さが凋落していく作品にあって、フェルメールの置かれた環境や体調など大いに影響があるに違いないものと納得してしまう。
そういうことならば、画家という者は常に描いていないといけないということを、いや画家に限らず芸術に関わる者は、そのものに対して真摯に向き合わなければならないということを想像させられる。
この著書でフェルメール作品自身が、まるで一つのあるべき芸術へと昇華されるに至る、静謐な光明を辿っているみたいであり、それは儚く脆いものであること、しかしその先にある現代作品の革新的で普遍的な表現であることを思わせられる。