現代日本では寿司は高級化しているが、江戸時代は屋台で食べるファーストフードであった。寿司は庶民的な食べ物であり、江戸の町人文化には欠かせないものであった。江戸前寿司は江戸の町の人々に愛された。
高級料理と思われている寿司も本来は値段と味は比例しない料理である。フードロスをなくすというSDGs; S
...続きを読むustainable Development Goalsにも通じる取り組みであった。
大石賢一作、はしもとみつお画『築地魚河岸三代目 3』「江戸前の心」には「安い魚、鮮度が落ちやすい魚でもなんとか旨く食べてもらおうと、先人たちは工夫に工夫を重ねてヅケや酢締め、煮貝といった江戸前と呼ばれる技術にしていった」との台詞がある。
漫画『江戸前鮨職人きららの仕事』で海棠きららは、私の握りたい鮨は一部の金持ちだけが食べられる鮨じゃないと主張する(早川光原作、橋本孤蔵漫画『江戸前鮨職人きららの仕事 1』集英社、2003年)。
鹿賀ミツル原作、加藤広史作画『おすもじっ!◆司の一貫◆』「第壱貫 平目」は捨ててしまう部位も美味しく調理できることを示した。「第弐貫 鯵」は鯵を「安もんやし、青臭いし、黒っぽうて陰気な魚や」と見下す客をギャフンと言わせる鯵の寿司を出す。
米国の小説では寿司がジャンクフードとして紹介される。「LAじゅうのありとあらゆる店で大量のジャンク・フードをつまんできた―ドーナツ、ブリトー、ピザ、スシ、なんでもだ」(ニール・スティーヴンスン著、日暮雅道訳『スノウ・クラッシュ 新版 下』早川書房、2022年、373頁以下)。
江戸時代の寿司は屋台で食べるファーストフードであり、寿司をジャンクフードの仲間に考える方が寿司の歴史からは正しい。ハンバーガーはパンという炭水化物と肉を同時に食べるものである。寿司も米という炭水化物と魚肉を同時に食べるものである。
日本人の和菓子離れが指摘されている。「和菓子は手土産や旅行の土産など、ハレの日需要が中心だ」(阿古真理「「ういろう」「落雁」「ねりきり」知らない10代も、紀の国屋廃業で注目、日本人の「和菓子離れ」加速する5つの理由」東洋経済Online 2022年5月20日)。洋菓子と異なり、日常の消費が乏しいことが原因である。寿司もカジュアルな消費が大切である。それでこそ、これから先もずっと愛され続けるだろう。