村松秀の一覧
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ユーザーレビュー
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「ノーベル賞受賞確実」と言われた物理学界の若きスターが起こした「史上空前」の論文捏造事件がなぜ起きたのか?どうやって周りは気づいていったのか?が丹念に描かれ、一本のサスペンス小説のような面白さです。
研究内容や物理分野の研究の世界の特徴などはわかりやすくサラッと書かれているので、学術研究の分野のこと
...続きを読むをよく知らない人にも面白く読めます。
時折ニュースで騒がれる論文捏造事件が起きる背景を知るのに絶好の1冊。
なお、この捏造論文のアイディアが実は実現できるようだ、ということが最近になってわかってきたそうです。論文自体は捏造でも、アイディアとしては正しかったのかもしれません
Posted by ブクログ
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NHKで放送されたドキュメンタリー番組「史上空前の論文捏造」の
書籍化である。
科学の世界に彗星のごとく現れた若き研究者ヤン・ヘンドリック・
シェーン。世界中の優秀な科学者が終結するアメリカ・ベル研究所
を舞台に、彼は超伝導の世界で次々と斬新な研究結果を発表した。
物理学上の大発見だっ
...続きを読むた。いくつかの科学賞を受賞し、ノーベル賞
受賞も確実視され、様々な研究機関からの好待遇でのヘッドハン
ティングも行われた。
しかし、有名科学誌に掲載された彼の論文を元に、多くの科学者が
再現実験を試みるが誰一人として成功しない歳月が続いた。
そんななか、とある研究者の元に匿名のメッセージが届く。「これは
あなたへの宿題です。シェーンのふたつの論文をよく見て下さい」。
決定的な瑕疵だった。ふたつの論文に掲載されていたデータは、
そのノイズまでもが完全に一致していた。
まるでミステリーを読むようなノンフィクションである。疑惑を持たれ
ながらも、何故、3年もシェーンの不正が発覚しなかったのか。
共同研究者に名を連ねた著名な研究者の権威、企業が運営する
研究所と特許や利益との関係、再現実験が不成功に終わった際
の研究者たちが論文の整合性を疑うよりも「自分の技術が悪い
のではないか」と思う性善説。
この論文はおかしいのではないか。そう思ってもそのおかしさを
明確に立証できなければただの誹謗中傷になってしまうんだよね。
そうして、一番難しい問題は「誰が責任を負うのか」という点。この
シェーン事件は責任を負い、研究の世界から身を引かざるを得な
かったのはシェーン本人のみだ。
論文を掲載した科学誌「ネイチャー」「サイエンス」の両誌には
論文を精査する能力がなく、組織には自浄作用が働かない。
研究室で長時間を過ごしていたシェーン。しかし、誰も彼が実験を
している姿を見たことがなかった。異なる論文への同じデータの
掲載が明るみに出ると「間違って掲載した」とあさっりと言う。
何かに似ていないか?そう、記憶に新しいSTAP細胞問題だ。
尚、シェーンはベル研究所を去った後、故郷のドイツの田舎町で
暮らしていると言う。
Posted by ブクログ
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NHK教育のの人気番組すイエんサー、その製作に携わった著者が番組の人気企画である「知力の格闘技!」ですイエんサーガールズが東大や京大など名門大学の学生に勝つ姿を通じて、番組で挑んできた難題の紹介、そして解決するために駆使する「グルグル思考」についてまとめた一冊。
本書で中心的に書かれている番組で取
...続きを読むり上げた20の難題を「グルグル思考」を使って解決していくプロセスが秀逸ですイエんサーガールズが実際に悩んできたシチュエーションを実感できる作りになっていると感じただけでなく、そのことから日本の教育に対する課題を著者が提言されている点も共感できるものがあり、素晴らしく感嘆しました。
また結果や番組の写真も多く掲載されておりイメージが膨らみました。
また、製作者だからこそ語れる番組のウラ側を書いたコラムも興味深いものでした。
「疑う力」「ずらす力」「つなげる力」「寄り道する力」「あさっての方を向く力」「広げる力」「笑う力」の7つの力から現状を疑うことが大切であること、課題を常に意識すること、発送膨らませ応用できないかと考えること、楽しむ姿勢を大事にすることを強く感じました。
暗記を中心とする詰め込み型の教育を変えるべく受験制度を刷新しようとしている今日において、本書で取り上げられている番組の取り組みや結果は、制度を変えるにあたってどのように教育と向き合っていくかのヒントとなり、本書は日本の教育に一石を投じる一冊だと感じました。
Posted by ブクログ
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最近起こった論文捏造問題に酷似している、
ヤン・ヘンドリック・シェーンの不正を取り上げていると、
インターネットでみかけて。
NHKの番組を画像を書物に落とし込んだものながら、
素人でもわかるぐらい論文内容の超伝導を易しく説明してあり、
インタビューした人物やその場の雰囲気が伝わってきて
非常に面
...続きを読む白かった。
ベル研究所と共同研究者バートラム・バトログの高名さに目がくらみ、
画期的な発見と信じ込んで興奮し、
追試できない自分たちの技術の無さに落ち込み、
実験のノウハウが企業秘密になっているのではないかと疑心暗鬼になり、
誰かが追試に成功したらしいという噂話をメールで飛ばし合い、
画期的な実験マシンがあると思い込んで「マジックマシン」と名付けたり、
論文内容に疑問を抱くようになってからその「マジックマシン」が壊れたという噂に踊らされたり、
世界の研究者さんたち、あなたたちオレオレ詐欺にだまされている被害者とどこが違うの?
という人間ドラマとして。
また、ミステリーとしても非常に面白かった。
サンプルを見せてもらえないベル研の同僚が感じる疑念。
研究者にとって子供とも言えるサンプルを全て捨ててしまっているらしいという噂の中、
新しい方法で超伝導の新記録を樹立したという論文が発表され、
その方法が納得できないと多くの人に広がる疑惑。
マジックマシンと思われていた実験装置を他の人が使うことになり、
シェーンが実演してみせたが実験は失敗し、しかも彼の技術が拙いことが露見。
その直後、二人きりで車で移動するシェーンと高名な共同研究者。
矢継ぎ早過ぎる論文発表、またその中身の理論と美しすぎるデータに対する疑問をもとに、
研究所内で行われたシェーンを招いてのセミナー。
セミナーで納得できる説明がなかったことによるの内部告発、
そして本人に直接確認するという研究所上層部の失態。
不正ではなく間違えてしまったというシェーンの申し開き。
ベル研究所の研究者からの他の大学への告発、
そしてデータの使い回しに気付いた他大学からベル研究所を含む関係各位への告発、
調査委員会の設立、ついに捏造と結論付けられた論文。
正直、そんじゃそこらのミステリーよりも面白かった。
最近、日本での論文捏造が問題となった研究についても、
税金が使われていたことに怒りを感じたが、
このシェーンの論文捏造には世界各国で10億円以上の費やされたことともに、
若い研究者たちの時間とキャリアが無駄になったことにも、
問題の大きさを感じた。
Posted by ブクログ
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シェーン カムバック、と呼んだところで彼はもう帰ってこない…。やっぱりクラスでも性格よくて成績いい人ってのは悪事を働いても疑われないわけで(ドラえもんのガリ勉くんみたいな)、まるで魔術にかかったかのような科学界総催眠化は他人ごとの事態ではない。そして捏造を誘発する各専門分野の分業、企業競争…つまりカ
...続きを読むネが絡むところが非常に現代チックでもあります。そして多くを語らぬシェーンへの興味というのも尽きぬまま…少しだけくどい文章ですが様々な因子が正確に絡み合う、読み応え十分な傑作と思います。
Posted by ブクログ
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