一代でダイエーを成功させそして失敗させたといわれる中内功につかえた秘書の回想録。
自分にとっては堤清二に並ぶヒーロの一人。
痛快な話が満載な一方で、カリスマ経営の善し悪しを考えさせられた。
僕は社員に『額の向う傷』は認めるが、『背中をバッサリ斬られる』ことは許さない
これほど強烈かつ明快な創業の動
...続きを読む機はほかに例があるだろうか?(創業の動機はフィリピン戦線ですきやきの夢をみたこと)
わたしは「消費の現場を見よ」と言いたい。つまりメーカーの経営者が消費の現場を定点観測することの重要性を強調したいの
「ネアカ、のびのび、へこたれず」
ダイエーの多角化は収支で判断するなら成功していたということができ、将来の成長性を考えるとダイエー本体をはるかに凌駕していたのである。では何が原因だったのか。 わたしは「オーナーシップへの執着」が失敗をうんだ。
「創業者というのは大体において、一〇のことを言うと七は外れていて、三ぐらいしか当たらないものだ。しかし、その三が光り輝いているので、七の外れなんか全く気にならない。しかし、三がジャストミートしなくなると七の外れが際立ってきて、どうしようもなくなる。創業者の引き際は、そのあたりのタイミングだ」
中内さんは田園調布のご自宅で早朝五時四九分のNHKの臨時ニュースを見て、瞬時に動いた。七時には浜松町オフィスセンター(実態としてはここに本社機能があった)に災害対策本部を設置。これはすごい初動の早さ。
「経済合理性」という英語を日本語に翻訳すると「損得勘定」。いみのわからない新語よりも損得勘定はしっくりくる。
中内さんほど経済合理性が当てはまらない人は世の中にいないのではないかと思う。それは裏を返せば「おもろい!」ということなのだが、金儲けが下手だったということにもつながる。とにかく損得勘定はそこそこにして夢とロマンを追い求める。そして何よりも「天邪鬼」なの
経営者は、あるときには自分の立場・名誉・財産すべてを捨ててもよいという覚悟を持っていなければ、こんな重大なリスクを回避することはできなかったのだ。
神戸の大震災の翌日に「アラモアナの契約をしてこい。国際的な契約は守り抜く」と言い切った中内さんの決断力は大したものだ。
ダイエーをやめて(旗艦店舗だけ残して半分は徐々に閉店)、ローソン・OMC(カード会社)・リクルート・オレンジページ・ホテル・外食・アラモアナショッピングセンター・球団ほかのグループ経営が二一世紀への生き残り策」
M&Aは理念や動機が重要であり、そろばん勘定とのバランスも必要だ
昭和初期の大恐慌のとき、失業者が街に溢れかえってたわなあ。その状況を一変させるために国は軍需産業に力を入れ、戦争に至るわけや。財閥は大儲けしたけど、国民は浮かばれんわ。こんなことを繰り返さんためにも、製造業中心の経済から生活者中心に変えんといかんわけや。小売業は一番儲からん事業やけど、こんな経験してるからしょうがないわなあ」としみじみ語っておられたものだ。