新書の体裁だが、ボリューム的にも内容的にも専門書並み。情報量は多くて学ぶことは多いのはありがたいが、正直に言って構成や文章は理解しやすいとは言えず、羅列的な印象も強かった。目次が章のタイトルだけなのも非常に残念。
2章では、20世紀初頭のヘッチヘッチ論争における保全主義と保存主義の対立が、経済的合
...続きを読む理性(経済成長)を維持しながら技術的な対応によって保全型の社会を実現しようとする環境主義思想と、環境的合理性(生態系の持続性)を基盤とした社会をめざすエコロジズム思想の対立という形で継承されていると解説している。
3章では、環境思想の歴史を年代を追って説明する。そして、地球環境危機に対応するには、市場原理主義ではなく、生活原理主義に基づく新しい社会構想抜きにはあり得ない段階に達していると主張している(P.112)。
4章では、1970年代以降の環境思想を5つに分類して説明している。ひとつの大きな流れとして、人間中心主義から非人間中心主義(動物の解放)、生態系中心主義が見られる。一方で、1970年代にかけての環境規制の強化などの対症療法的な政策的対応の失敗への反省から、環境保全と産業発展との調和をめざしたエコロジー的近代化論が登場した(現状維持的な環境主義派)。しかし、エコロジー的近代化論は環境的に持続可能な発展の考え方からは乖離していると主張する。また、地球環境問題の原因は資本主義による経済的な生産体制や制度、世界観にあるとの考え方に基づくエコソーシャリズム思想についても紹介している。
6章では、産業社会システムと環境社会システムが有機的に連関した、新しい社会システムを作ることが課題であると提唱し、環境持続可能性指標(ESI)や環境パフォーマンス指標(EPI)、エッカースレイの緑の国家論を紹介している。