食べ物と文学の相性に関してはその良さは折り紙付きである。
食卓を囲むシーンに家族愛を投影し、男女間の愛情を示すにも、
食事が重要なファクターになることは誰にとってもナットクの落としどころである。
この本には食堂かたつむりから始まって先生の鞄、川端作品、かもめ食堂など、
とにかく読むだけでお腹が減
...続きを読むるような作品がてんこもり。
何が一番素晴らしいかというと、筆者の正直さ。
驚くほどに筆者の腰が低く、自分が江國作品を好きでなかったこと、どのタイミングでそれが修正されたのかなど丁寧に語られ、意外とこれが邪魔をせずに筆者と読者の壁を崩す。
まるで誰かのおしゃべりを聞いているように楽に読み込めた。
どう食べ物が使われているか、以上に、ひとつひとつの作品についての筆者の意見が書かれているので、文学作品の指南書のスターターとしてもいいかもしれない。
ただちょっと不満だったのは、ピックアップされている作品が非常に狭く、種類も少ないのでもう少しテーマを絞って踏み込むなり、広く数を紹介してもらうなりの方が役には立った気がする。
ちなみに英語、たぶんアメリカ?の言い回しで、
相性の良さをチョコレートとピーナッツバターのケッコン、という表現もある。
日本人にはウエっ、という人もいるとは思うけど。