ちょうど、LHCの実験でHiggs粒子が見つかったとのニュースがあったので、思わず衝動買いしてしまった。著者はちょうど脂がのった所の素粒子論研究者、これ一冊で素粒子論の大部分を一望出来るというと言い過ぎだろうか。
本書は素粒子が質量を獲得する過程をテーマとしているが、著者も述べている通り、自発的対称
...続きを読む性の破れやQCD、それらのもとになっている相対論や量子力学の知識が必要となり、結局内容は多岐にわたってしまうようで、本書も様々な内容から構成されている。
これだけの内容を専門家でない人々に分かりやすく解説するのは大変な苦労だと思うが、専門的な内容で多少「そういうものとする」的なことになるのは仕方ないにしても、話が発散することもなくまとまっていて概要はつかめた様に思う。特にHiggs粒子が関わる質量の話については、ニュースのせいもあってか自分も誤解していることが分かった。
時折盛り込まれる日常でのエピソードや、御大にサインをもらいそこねた、初めての海外で英語が出来なくて困ったなどの話は、研究者である著者に親しみを感じる文章で面白かった。
関連してあとがきに南部先生らがノーベル賞を受賞した時に出版されていたら...という話があったが、本書はHiggs粒子発見のニュースが出た今、タイムリーな内容ではないだろうか。専門家でない素粒子物理に興味がある人にとっては、メディアで報道される内容で誤解しないためにもおすすめである。