作品一覧

  • 演技と宣伝のなかで 上海の大衆運動と消えゆく都市中間層
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    1巻880円 (税込)
    文革に至る政治運動の激流に棹さし、迎合し、消えていった「早すぎた中間層」。サラリーマンの「演技」と歴史の相克。 本書が大衆運動とそれに伴う社会変容=階層再編を分析する際に最も重視するのは、「演技」という観点である。……そうした日常生活のなかの演技が、一九五〇年代以降の中国では、党・政府やそれらに忠実な機関の宣伝によって強く方向づけられ、さらに大衆運動によって厳しく統御され、高いリスクや緊張を伴うものになったといえよう。そして、党・政府が望むように演技をした人びとの言動が、メディアや集会において宣伝されて、さらにそれに倣ってより多くの人びとが演技をする、という繰り返しのなかで、人びとが大衆運動に動員されていったのである。 本書は、上海の民間企業(後には公私合営企業)の職員、すなわちサラリーマンの地位や意識が、職場における大衆運動の進展に伴って変化していく様相を、具体的に描き出していく。……以下では、「三反」「五反」運動・公私合営化・反右派闘争と連鎖する大衆運動のなかを生き抜いた民間のサラリーマンたち、なかでもエリート・サラリーマン(「高級職員」・「資本家代理人」)たちの足跡をたどりながら、一九五〇年代の上海の人びとが体験した共産党支配の確立と社会階層の変動を明らかにしていこう。(本文より抜粋) 【目次】 はじめに 一 職員と労働者の関係 二 「三反」運動のなかの技術人員 三 「五反」運動の発動 四 上海市工商業聯合会と上海総工会の宣伝活動 五 「高級職員」と「資本家代理人」にとっての「五反」運動 六 公私合営化に対する「資本家代理人」の期待と不安 七 公私合営化の展開と「資本家代理人」に対する政策 八 公私合営企業における権力関係 九 「資本家代理人」の「思想改造」 一〇 公私合営後における「資本家代理人」の希望 一一 反右派闘争以後の「資本家代理人」 おわりに 現代中国への視点 【著者】 岩間一弘 東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。 現在、千葉商科大学商経学部准教授。 主な著書に『戦時上海──1937~45年』(研文出版、共著)、『『婦女雑誌』からみる近代中国女性』(研文出版、共著)、『上海──重層するネットワーク』(汲古書院、共著)などがある。(2014年現在)
  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史
    3.9
    1巻1,166円 (税込)
    肉まん、ジンギスカン、餃子、焼売、ラーメン、麻婆豆腐、ウーロン茶。あの味はなぜ懐かしいのか。 帝国主義の時代に広まり、戦後の日本人の心と体を癒してきた中華料理。 地域や家庭で愛されてきた品々は、誰が、いつ、どうやって日本にもたらし、なぜこれほど普及したのか――。 文化人、実業家、軍人、料理人たちの情熱と葛藤に光をあて、日本の中華料理100年の軌跡を世界史的な視点から描く、食文化の物語。 【目次】 まえがき――中華料理への情熱、そのルーツを探る旅へ 序 章 中華料理に込められた対中・対日感情  1 食の文化帝国主義の始まり   2 日本人と中国人のまなざしの交錯  3 二〇世紀東アジアへの誘い  第1章 肉まん――近代的な食文化としての中華料理  1 肉まんの歴史 32  2 日本食の近代化のなかの肉まん 37  3 アジア主義と帝国主義の文化的な影響 48 第2章 ジンギスカン料理――満洲名物から北海道遺産へ  1 北京から満洲・モンゴル、そして東京へ――帝国の時代  2 中華料理から北海道の郷土料理へ――帝国後の時代 第3章 餃子――満洲の記憶とポスト帝国主義  1 餃子の伝来――近世から日中戦争期まで  2 「引揚者料理」としての餃子――戦後  第4章 ウーロン茶――忘れられた台湾文化  1 ウーロン茶の世界史  2 日本帝国におけるウーロン茶の消費文化  3 日本の国民的飲料になるウーロン茶 第5章 シュウマイ・ラーメン・四川料理――郷土料理の創造とノスタルジア  1 横浜名物になるシュウマイ   2 なぜ札幌でラーメンなのか   3 麻婆豆腐のノスタルジアと担々麵の郷土料理化   4 中華料理の現在までの変化  終 章 世界史のなかの日本中華料理  1 帝国主義は料理をどう変えたのか――二〇世紀前半   2 ノスタルジアはなぜ生まれたのか――二〇世紀後半   3 文化遺産化は何が問題なのか――二一世紀  あとがき 注記一覧 / 参考文献

ユーザーレビュー

  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史

    Posted by ブクログ

    ジンギスカン、餃子、シウマイなど今や日本の郷土料理化した料理。その他肉まん、ラーメン、麻婆豆腐など一般的な料理。
    中国起源から日本で普及する過程に帝国主義の時代が大きく関わっているという。
    普段口にする機会の多いメニューから歴史を考える実に良い機会。

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    2025年08月28日
  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史

    Posted by ブクログ

    ジンギスカンが元々中華料理だったとはまったく知らなかった。そもそもどの中華料理もそのでき方について知らなかった気がする。しかも、戦前の歴史が隠されているものもあって驚いた。
    そういった歴史があるとは言えど、読み出した頃から、そして読んだ後も中華料理が食べたくなった。

    0
    2025年08月24日
  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本の軍国主義にも深く関わる中華料理のルーツを膨大な文献から簡潔にまとめられており、加害国側としての複雑さを感じつつ興味深く読んだ
    (加害側の意見と単純に一括りにするのも難しい)引き揚げ者が抱える満州への思いも共有されていて当時の肌感がより想像しやすかった

    個人的にサントリーの烏龍茶の広告が昔から好きだったんだけど、現実問題を直視せず理想の中国を描く点でオリエンタリズムの再演にすぎないという指摘は本当にその通りって感じ...(理想の中国を通じて自分たちの青春時代を思い出しているのもグロテスク)
    当時既にあったオリエンタリズム批判を引き受けず、傍観者として理想の中国を描くのは糸井重里的な物語消

    0
    2025年08月09日
  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史

    Posted by ブクログ

    とても興味深いテーマだけど、とにかく帝国主義で説明し尽くそうというところに辟易しつつ、もっと違うストーリーも描けるんだろうなぁと思った。自責の念も異国文化を取り込む食欲も日常生活にあるのだから。

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    2025年10月05日
  • 中華料理と日本人 帝国主義から懐かしの味への100年史

    Posted by ブクログ

    日本での中華料理の広がりは、それこそ日中・日露戦争以降の日本の大陸への帝国主義に始まり、敗戦後の引揚げの方による、日本での新たな仕事としてやり易かったのではないかな、くらいに茫洋と思っていました。

    そういった茫洋とした点や、都市伝説的に広まっていた説を、膨大な文献を整理して、その由来、日本での広まり、日本に最初に紹介した人などを整理したことで、なるほどなと読み進められる良書。

    既に日本のものとして独自の進化を遂げた、ジンギスカン、ラーメン、焼き餃子などをそのルーツを帝国主義に結び付け、満州などの時代のノスタルジアと贖罪の気持ちとを喚起させる食べ物であるとするのは暴論という意見もあるかもです

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    2025年10月01日

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