愛野史香の作品一覧
「愛野史香」の「あの日の風を描く」「海が天に届くとき」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
休学中との事で、立ち直り系か?と思ったがその通りだった。面白かった。
1時間かけてスケッチしたのに、ふと空虚に気づいてしまった。真は京楽造形芸術大学を休学中だ。先月映画館のバイトを辞めた。従兄弟の凛太郎がやってきた。
休学も2年目に入る。凛太郎は仕事の手伝いを頼みに来たらしい。奥村美術研究所は国宝や文化財の保存復元、絵画や建造物の彩色などを業務内容としている。人見教授に紹介される。久隅守景の孫娘の平野雪香の模写を手伝い始める。チームは日下部、蔡、土師、凛太郎、人見教授、真。真は西洋画しかやっていないので、日本画について学ばなければならない。
襖には欠落がある。何が描かれていたのか、想像しなければならない。四季花鳥図のようだ。絵の中に風が吹いている。満足稲荷神社からの風のようだ。
土師の絵は盗作されたらしい。二回目だそうだ。昔は模写も構図を盗むのも犯罪ではなかった。なかなか見られない動物や鳥を覚えるチャンスでもあった。もとの襖は綺麗にクリーニングされた。
夏の季節の鳥が欠落している。何にするのか。
Posted by ブクログ
あの日の風を描く
最後まで読んで納得のタイトルでした。
日本画の世界に復元する仕事があることは知っていたけど、復元模写という言葉を、この本を読んで初めて理解しました。
しかも、経年劣化等で欠けて失った部分を、作者の人物像や時代背景から推測して補う、想定復元模写というものがあることを知り、その達人技に驚愕しました。
今回の模写制作は学生がやっていますが、主人公は自分に引け目を感じるほど劣等感を抱いていて、復元模写に参加することを最初は不安に感じていました。
それでも美大生であるので一定の実力はあり、努力を重ねて最終的に相当のレベルに達していると思います。
出来上がった時の感動は、出来上がった作品を想像上でしか感じられないにも関わらず、涙が滲みました。
この完成した襖絵、「花鳥図」を、わたしもこの目で見てみたかったなと思いました。
単なるサクセスストーリーだけじゃなく、いろんな人の複雑な感情たちも浄化されるような爽やかな作品でした。
Posted by ブクログ
清かな物語でした。
清か‥‥本書に何度も出てくるこの言葉、まさしく本書を一言で表すならば、清か。
あることをきっかけに絵を描く気力が失われ、2年間休学している美大生の真。
従兄弟の凛太郎に誘われて、襖絵の修復作業に取り掛かることになり、自分自身を見つめ直していく。
油画科に進んだ真は復元模写の仕事をしていた父のことを認められずにいたが、自分が修復作業に関わるうちに絵画に対しても父に対しても認識を変えていく様子に胸が熱くなります。
そして、自分の存在そのものに自信を取り戻していく姿がもう‥‥(T-T)
さらに、修復する絵には欠けた部分が多く、そこには何が描かれていたのか、作者の気持ちになって、仲間達と推理していく謎解きの部分も読み応えたっぷり。
芸術、お仕事、謎解き、青春‥‥色々な角度から楽しめる良書でした。
Posted by ブクログ
とても良かった……。
アート小説であり、お仕事小説でもある。
苦悩の先にたどり着いたラストは清々しく、温かな充足感に満たされました。今、心地よい疲労感に包まれています。
「古典模写」「古典修復」の世界を描いた作品。
読みはじめてすぐ、新たな「知」の扉を開いた感覚。良作に出会えたときの確信にも似た予感を早くもひしひしと感じていました。
休学して引きこもっていた主人公の生活は、従兄に頼み事をされた日を境に一変!
大学の保存修復日本画研究室に通い、模写制作メンバー二人と一緒に模写に取り組むことになります。
その過程は想像以上に大変で、描き始めるまでも描き始めてからも、彼らのひたむきで真摯な姿勢は胸に迫るものがありました。
初めて知る世界の奥深さに圧倒され、夢中で読み耽りました!
復元模写に携わる人の“技術”や“描く”以外の部分。考察にかける時間やエネルギー、現代とは異なる当時の「模写」の持つさまざまな意味について知って目から鱗でした。
『昨日までの成果が今日で覆る。それが、復元の世界です。』
なんて厳しい世界……。彼らの復元模写に対するどこまでも真摯な姿勢に胸を打たれました。
模写を通して襖絵の作者にも、自分にも、とことん向き合い続けた真の変化がすごすぎる。
時を経て重なる想い。
清々しいラストは涙ぐんでしまいました。
先日、日本橋の三井記念美術館で円山応挙の作品展が開催されていることを知り、行かねばと思っていたところ。良き出会いでした。
『誰かに大切にされて、価値が与えられた作品には、人を感動させる力が備わっとる。その感動を模写に写し取るんが、相当に難しい。でも、反映できた時の喜びは、ひとしおやねん。』
『人の心は時代と共に黒ずんで、風化し、消えるものではない。心は、人が生きているから変質するのであり、絵に宿った深意は、作者の手を離れても変わることはない。』