決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。
「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが、
「目にしたものを
...続きを読むそのまま言える相手がいる」と言うコメントがあり、自分以外の人と心の中で共有しているような気持ちになります。
家族愛と言ったらそれまでなんですが、
「あまさず暮らす」とはどんな暮らしなのか。
段々とした一見なんの変哲もない家族3人のように始まり、それぞれの想いが、「しろい手」によって、少しずつ姉妹と父は何かに向かっていく世界に、読者も吸い込まれていきます。
今いるこの世界から考えると、遠い宇宙の片隅にいる家族を観ている感じでした。
なんか寂しいとか切ないとか孤立感があるように見えたのに、どこか、他の何よりも暖かく、愛があり、本当の人間を味わっていたのかもしれませんね。
「らくだの掌」では、後半に差し掛かると、前半に戻ったり、中盤に戻ったりしながら読むこととなり、しまいには初めからもう一度読んでしまい、最後のオチを知ってから、もう一度読むとまったく違った印象にも感じました。
中身ですが、中林さんの視線に癖があり、並木さんの言葉や応え方も癖があるのに、どこかで会ったことのある不思議な親近感がありました。
社会の中で置いてけぼりの弱者やそのサポートする方たちのストーリーなのに、嫌味なくその人たちの心をのぞかせていただいた気がします。
メディアやSNSではなかなか知ることのできない内容だったので勉強にもなりました。