野々井透のレビュー一覧

  • 棕櫚を燃やす

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    きれいで、柔らかくて、けれど心の芯をぐっと掴んでぐらぐら揺らされるような、そういう文章が連綿と続いていて、最初から最後まで泣きながら読んでしまった。表現が終始詩的で美しかった。

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    2025年11月05日
  • 棕櫚を燃やす

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    久しぶりの感覚
    スーッと落ちていくような感覚
    虚無ではなく悲哀でもなく

    喪失を受け入れる
    青い事実がゆっくり仄かに
    心に溶けていくような
    そんな感覚

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    2024年10月26日
  • 棕櫚を燃やす

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    日々の暮らしの中で、ふと「ん?」とか「そうそう」とか思いながらも、特に心に留め置くでもなく通り過ぎている感情や感覚を丁寧にことばに紡いでいて、作品の内容と私の体験はリンクしないのだけど、その感じ、私、知ってる、と思えるという意味で、私の物語でもあった。透明感のある文体は消え入りそうに淡くてやさしくて、詩を読んでいるみたいだった。併録の『らくだの掌』の終わりは不覚にも泣きそうになった。

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    2024年09月20日
  • 棕櫚を燃やす

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    知らない単語、とくに形容詞、副詞、がたくさん出てきて、調べながら読んだ。

    こんなふうに日常を言葉で表現できたら、同じ日常でも違って感じられるだろうと思う。
    この著者の方と一緒に生活してみたい。

    ここ最近のベストワン。

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    2023年05月19日
  • 棕櫚を燃やす

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    イライラむずむずする焦燥や異空間にいるような孤独感、自分は存在しないような浮遊感とか、よくあの感情を表現したなぁ、という感動。マインドフルネスをしているような、その時の呼吸だけに集中するような、研ぎ澄まされた感覚で音や温度や質感や空気感をとらえてる感じ。過ぎていく時間と、逆行する切望の静かな摩擦が丁寧だった。
    2作目は、普通。

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    2024年06月23日
  • 棕櫚を燃やす

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    ほとんど筋というものがない。淡々と過ぎゆく父と娘二人の日々と会話が繰り返されるだけ。そんななかで時折3人それぞれの世界観をじわっと感じさせる。穏やかに。
    まるで詩のような春野のひとりごとが続いていく。柔らかに。
    フランスの作曲家の室内楽を連想した。ドビュッシーかな。
    ただ耳を任せていて心地よい。

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    2024年03月20日
  • 棕櫚を燃やす

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    表題作は、闇に息吹く、鮎の匂い、地平線の場所、雪の音 の四部構成になっていたが、春野と澄香が父と暮らす何気ない日常の話が淡々と続く.あまさず暮らそう という目標のようなフレーズが気になった.むるむるという字句も頻出する.亡くなった母を しろい手 で表現しているのも深い意味を見たような感じだ.後半の「らくだの掌」では、たなごころが読めなかった.なかちゃんこと中林と並木さんが栗原さんを支援する話だが、茫洋とした感じで淡々と話が進むが、捉えどころのないままに話が終わった感じだ.はるまきが何度も出てくるのが気になった.

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    2023年12月13日
  • 棕櫚を燃やす

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    決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。

    「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが、
    「目にしたものをそのまま言える相手がいる」と言うコメントがあり、自分以外の人と心の中で共有しているような気持ちになります。

    家族愛と言ったらそれまでなんですが、
    「あまさず暮らす」とはどんな暮らしなのか。

    段々とした一見なんの変哲もない家族3人のように始まり、それぞれの想いが、「しろい手」によって、少しずつ姉妹

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    2023年10月13日
  • 棕櫚を燃やす

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    ひとつひとつの言葉を飲み込みながら、読みました、ヒリヒリしながら。
    「棕櫚を燃やす」も「らくだの掌」もです。

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    2023年09月16日
  • 棕櫚を燃やす

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    「棕櫚を燃やす」

    「これからの一年をあまさず暮らそう」と、春野が澄香に言ったように、日常の情景や言葉が丁寧に描かれていた。父親の状況を、きっとそうなんだろうなと思わせる描写で著し、あまさず暮らしていこうとする日々がつづられていく。

    自分の父と重ねられる場面が多く、むるむるの感じも何となくわかるような気がした。父の言葉が、ごめんねよりもありがとうが増えてくることとか、悲しみは自分達だけのもので他の誰かにわかってもらいたいとか共有したいとは思わないとか、嬉しいときも悲しいとか、おやすみまた明日と言うことが難しいことのように感じるとか。自分のなかにしまっていたものをなぞるようだった。

    静かにあ

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    2023年08月05日
  • 棕櫚を燃やす

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    ん〜なんだろう??このいつもと違う読後感。静謐な言葉の礫が心にたくさんひっかかり、静かに染み込んでいくような初めての経験。忘れられない1冊

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    2023年07月17日
  • 棕櫚を燃やす

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    ネタバレ

    賞を取った表題作の父と娘2人に通い合う情愛はしみじみと温かく1年と時間をくぎられた中で壊れゆくものをぞっと守っているような緊張感に満ちていた。
    もう1篇の「らくだの掌」のひょうひょうとした並木さんのありように心が締めつけられた。とても好きな作品です。

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    2023年06月29日
  • 棕櫚を燃やす

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    ネタバレ

    人を失うということを柔らかに描く。なんかこういう風に受け止める人もいるんだと思ったらそれだけでずいぶん楽になる。

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    2023年06月23日
  • 棕櫚を燃やす

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    ネタバレ

    114枚
    父が死を宣告され弱っていくのを看取り妹と三人で鮎釣りなど季節に沿って暮らす。自然描写は美しかった。「しろい手」が死んだ母の象徴となっているところも。恋人と別れたのが子供を産みたくない→最後に出てくる悲しみも体もそれぞれその人のものなのだ、ということの連想ならそのテーマはあまりにありきたりだと思う。評論家の荒井さん以外はすごく推しているようには選評ではみえなかった。
    最初、すべってるように思われた表現や比喩(→これは選評にもやはり同じことが書かれていた!)も、読み進めれば慣れていった。中編で連作短編のように4つの章立てで季節を進めていくのはアリなのだ、と思った。
    一緒に暮らす妹は主人公

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    2025年11月08日
  • 棕櫚を燃やす

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    3.7/5.0

    詩的で美しい文章だと感じた。
    登場人物たちの奥行きみたいなものは、個人的にはあまり掴めなかった。

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    2025年10月03日
  • 棕櫚を燃やす

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    健全なメンタルの状態なら好きなタイプの本。

    ただ、今著しく不調のため辛い本となった。
    死の匂いが揺蕩う内容でした。調子の悪い人はお避けになった方がよろしいかと。

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    2024年10月14日
  • 棕櫚を燃やす

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    読書備忘録859号。
    ★★★。

    これは読者に作品が言わんとすることを読み取らせようとする種類の小説です。
    嫌いではないですが、好物でもない。
    読み取ろうとする努力をしなければ、何だこりゃ?で終わってしまう系。

    第38回太宰治賞を受賞した表題作「棕櫚を燃やす」と書下ろしの「らくだの掌」の2編。単行本にするために、書き下した作品も頑張って読み取った結果、言わんとすることは命でした。
    命以外はすべてどうでも良いことなんだよね、という作者のメッセージが伝わってきました。なので作品の舞台を構成するディテールがテキトーすぎる作品。

    【棕櫚を燃やす】
    姉妹と父が一緒に暮らしている。細かいディテールは不

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    2024年09月25日
  • 棕櫚を燃やす

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    「あまさず暮らす」この言葉に出会っただけでもこの本をよむ価値があるかも。
    よいこともわるいこともあまさず暮らしの中にはある。その家族の中で起こる現象の全てが愛おしく感じさせてくれる。

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    2023年08月02日