野々井透のレビュー一覧
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決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。
「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが、
「目にしたものをそのまま言える相手がいる」と言うコメントがあり、自分以外の人と心の中で共有しているような気持ちになります。
家族愛と言ったらそれまでなんですが、
「あまさず暮らす」とはどんな暮らしなのか。
段々とした一見なんの変哲もない家族3人のように始まり、それぞれの想いが、「しろい手」によって、少しずつ姉妹 -
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「棕櫚を燃やす」
「これからの一年をあまさず暮らそう」と、春野が澄香に言ったように、日常の情景や言葉が丁寧に描かれていた。父親の状況を、きっとそうなんだろうなと思わせる描写で著し、あまさず暮らしていこうとする日々がつづられていく。
自分の父と重ねられる場面が多く、むるむるの感じも何となくわかるような気がした。父の言葉が、ごめんねよりもありがとうが増えてくることとか、悲しみは自分達だけのもので他の誰かにわかってもらいたいとか共有したいとは思わないとか、嬉しいときも悲しいとか、おやすみまた明日と言うことが難しいことのように感じるとか。自分のなかにしまっていたものをなぞるようだった。
静かにあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ114枚
父が死を宣告され弱っていくのを看取り妹と三人で鮎釣りなど季節に沿って暮らす。自然描写は美しかった。「しろい手」が死んだ母の象徴となっているところも。恋人と別れたのが子供を産みたくない→最後に出てくる悲しみも体もそれぞれその人のものなのだ、ということの連想ならそのテーマはあまりにありきたりだと思う。評論家の荒井さん以外はすごく推しているようには選評ではみえなかった。
最初、すべってるように思われた表現や比喩(→これは選評にもやはり同じことが書かれていた!)も、読み進めれば慣れていった。中編で連作短編のように4つの章立てで季節を進めていくのはアリなのだ、と思った。
一緒に暮らす妹は主人公 -
Posted by ブクログ
読書備忘録859号。
★★★。
これは読者に作品が言わんとすることを読み取らせようとする種類の小説です。
嫌いではないですが、好物でもない。
読み取ろうとする努力をしなければ、何だこりゃ?で終わってしまう系。
第38回太宰治賞を受賞した表題作「棕櫚を燃やす」と書下ろしの「らくだの掌」の2編。単行本にするために、書き下した作品も頑張って読み取った結果、言わんとすることは命でした。
命以外はすべてどうでも良いことなんだよね、という作者のメッセージが伝わってきました。なので作品の舞台を構成するディテールがテキトーすぎる作品。
【棕櫚を燃やす】
姉妹と父が一緒に暮らしている。細かいディテールは不