★5 彗星衝突のため地球を脱出した少女。睡眠から目覚めると画一的で理想的な社会で… #最後の語り部
■あらすじ
地球にハレー彗星が衝突してしまう西暦2061年の近未来。限られた一部の人間だけが宇宙船で地球を脱出をすることができた。
宇宙船に乗り込んだ主人公の少女ペトラとその家族は、新しい住処である
...続きを読む星へ移動するため、380年間の長時間睡眠をしていた。
そして長時間の移動を経てペトラが目覚める。目の前には家族の笑顔があるはずだったのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
おもしろいっ
本作、設定自体は地球脱出もので、よくありそうではあります。しかし次々と主人公ペトラに襲い掛かる難題が、読み手を惹きつけてやまないんすよ!エンタメ性が抜群で熱中して、あっという間に読んでしまいました。
何と言ってもペトラが愛おしすぎる。
まだ13歳の少女が、誰も経験したことないような環境に晒され、不安の中で生き抜いていく。完全に親目線で感情移入しまくってしまいました。
誰も助けてくれない宇宙の彼方で、ひとり脳みそをしぼって立ち向かう姿が泣ける。少女の生き抜く術が、おばあちゃんから引き継いだ『物語』というところが、あまりにも慈愛に満ちてる。しかも彼女が物語を語らうシーンは、まるで魔法をかけているかのように幻想的で美しい。
また本書は現代の差別社会の問題が強烈に描かれています。
本書引用、父の言葉「平等は素晴らしい。しかし平等と画一は違う。」
見た目、ルール、価値観を画一的に統一にすれば、過ちは発生しない…どこかの地域にありそうな主義主張。難題にひとり彼女が立ち向かっていく愛と勇気は、新しい大地のように広く、満天の星空のごとく綺麗でした。
■ぜっさん推しポイント
生き残るために知恵を絞るペトラが、おばあちゃんの物語から「強さ」の本当の意味を知る。女の子だった少女から、一人前の人間に成長する姿があまりにも痺れる…
そして物語の後半、ペトラとある人物と対峙するシーン。
心が通じ合う瞬間なんて、なにも語れなくなるんですよね。こんな胸が詰まるシーンは久しぶりです。
これだから読書はやめられない。素晴らしい一冊でした。