ウイルス専門の医師として、その知見に基づき、巷で行われているコロナ対策と呼ばれる行動を冷静に分析した本。
もちろん、新型コロナについてはいくら専門家とは言っても、未知な部分も多く、すべてを正確に把握しているわけではないと思うので、この本の中にも後々検証すれば正誤はあるものと思われるが、この本を書いた
...続きを読む時点で著者の今までの知識、経験を踏まえて整理されたものであり、読んでいて腑に落ちる部分がたくさんある。特に、新型コロナはエアロゾル感染(空気感染)が主な原因であるというのは、この本が書かれた時点では厚生労働省も正式には認めておらず(最近になって認めたようだが)、飛沫感染や接触感染を主な原因としていたそれまでの見解を、専門家の見地から冷静に否定したものであり、書かれている内容から素人でも納得のいくものであった。その点から、現在でもあちこちで行われているパーテーションによる隔離等は、逆に空気の流れを悪くするものとして本書では「良くない対策の例」として挙げられており、感染拡大から2年以上経った現時点においても、専門家による理論的な対策ではなく、イメージや印象に基づいた対策が改善されずに続けられていることがよくわかる。
ウイルス感染症の性質を正しく理解し、正しく対策するためにも、マスコミが伝えるイメージが先行した対策ではなく、各自がいろいろな知識を得て、行動していくことが重要だと思い知らされた。