篠谷巧の作品一覧
「篠谷巧」の「距離にして10℃以下」「君のいたずらが僕の世界を変える 食べもの探偵トモアキの事件簿」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ラノベ
小説・文芸
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Posted by ブクログ
これは本当に素晴らしい作品で、まさに私の好みにど真ん中でした。大げさではなく、今年読んだライトノベルの中で一番「読んでよかった」と思えた一冊です。
物語は、どちらも社会にうまく馴染めず、将来にも不安を抱えている二人が、一台の古い冷蔵庫を通して繋がっていくというお話です。設定だけ聞くと「えっ?」となるくらい不思議ですが、その奇抜さが逆にとても魅力的なんですよね。
前半のおよそ6割は、二人がお互いに少しずつ心を開いていく過程が描かれています。古い冷蔵庫を通して約200km離れた場所へ料理を送り合う そんなやり取りを重ねながら距離を縮めていく様子が本当に温かくて、実は私自身も主人公たちと少し似ている部分があるので、読んでいて何度も心が温まり、とても幸せな気持ちになりました。
後半は少しだけスリリングな展開になります。冷蔵庫に隠された謎を解き明かしながら危機を乗り越えていく一方で、ヒロイン自身も少しずつ自分の殻を破り、前へ踏み出していきます。
冷蔵庫の仕組みについては正直かなり難しく、「本当にそんなことが?」と思うような内容ではあるのですが(笑)、説明しているのが文系の大学生である主人公と、人見知りな専業主婦のヒロインなので、「まあ、この二人ならこんな説明になるよね」と思わず笑ってしまいました。細かい理屈は置いておいて、不思議と納得できてしまうんです(笑)。
私は以前にもこの作者の作品を読んだことがありますが、感情の描写がとても繊細で、直接言葉にしすぎず、読者の想像に委ねるような表現が本当に上手な作家だと思っています。そして、この作品でもその魅力は変わりませんでした。サブヒロインが主人公に好意を抱いているように見える場面もありますが、その感情の描き方がとても控えめで上品だったので、物語全体の雰囲気を壊すことはありませんでした。
主人公とヒロインの関係も、ゆっくりと自然に変化していき、その積み重ねがとても丁寧に描かれています。だからこそラストには心から満足できました。
この作品が本当に大好きなので、ぜひ二人のその後を描いた番外編も読んでみたいです。ヒロインが今よりもっと幸せになっている姿を、ぜひ見届けたいと思いました。
Posted by ブクログ
カルチャースクールの事務職員として働く坂本杏奈は六月のある日、見知らぬ番号からの着信を受ける。スマホ越しの相手は牧野千聖の父で、千聖が服毒自殺を図ったという。千聖は大学時代に杏奈が所属していた軽音楽部のカリスマ的存在で、憧れの先輩だった。一命は取り留めたものの反応がなく、重度の記憶喪失が疑われ、しばらくは入院生活が続くだろう、という見込みだ。病室に置かれた写真の中から杏奈は一枚の写真に胸騒ぎを覚える。かまぼこ型の郵便受け。写真の裏には、『Mountweazel Society(マウントウィーゼル ソサエティ)』と記されていた。
というのが本書の導入です。〈存在しない〉写真家リリアン・ヴァージニア・マウントウィーゼル。一九七五年版の『新コロンビア百科事典』に盗用対策として載った架空の人物について、かつて千聖から知っているかどうか聞かれた杏奈はそこに千聖の『自殺』未遂の真相があるのではないか、という謎を追っていく幻想冒険譚が本書です。不確かな現実に実感が灯って、新たな世界が表出していく様子が、かすかな不穏を伴いながらも、とても美しく、心にしみいる一冊でした。SF、ファンタジー、ミステリと様々な側面の魅力があるように思います。もっと広範のひとに読まれて欲しいなぁ、と感じる作品でした。