ものすっっごく面白かった!
以前、講談社児童文学新人賞受賞者のオンライン座談会を聞いたことがあって、そのときにスピーカーとしてお話しされていたのが東先生でした。
『カトリと眠れる石の街』は王道のゴシックファンタジーと編集者さんに言われていて、「いつか読んでみたい!」とずっと気になっていた作品。
...続きを読む今作はシリーズものの2作目ですが、今作から読んでも十分に楽しめる作品になっています。
先の見えない不安な状態を「霧」として表現されていたのは、一見安直かな?と思うものの、カトリの世界観にマッチしているように感じました。
わからないラテン語、博物館での面白くない事務作業、金物屋の仕事も取られてしまい、限界状態のカトリ。そんなカトリが、ネブラの街で未来が定められた生活を送る。でも、いざ全てが決められていると、平穏であるが窮屈で、反発したくなってしまう……。
特に良いなと思った文章は、「数え切れない選択の中に自分自身が宿る」。カトリが夢の中で無数の扉から気に入った一つの扉を開ける。それが「自分だけの道」になっていくと気づく。
私もアラサーになってから、自分がどうしたいのかわからなくて、不安で、誰かに決めてほしいとさえ思っていました。そんな自分の悩みとカトリの悩みが一致していて、共感しながらも、最後にはとても励まされる気持ちで読み終えることができました。大人にもぜひ読んでほしい一冊です。