源河亨の作品一覧
「源河亨」の「「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門」「クリティカル・ワード ポピュラー音楽」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「源河亨」の「「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門」「クリティカル・ワード ポピュラー音楽」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
キーワード集という体裁をとっているところが軽やかで良い。各論の内容は専門家には物足りないかもしれないが、あまり充実させすぎると百科事典みたいな本になってしまう。ソフトカバーで厚さ一・五センチ程度というこの親しみやすさが良い。
というのも、“はじめに”の中に「体系化したテキストをつくるには障壁になってしまうポピュラー音楽研究ならではの学際性・多様性をむしろポジティブに引き受け」とあるように、この幅広さがこの分野の楽しくも難しくもあるところなのだと思う。どんなテーマで研究する人も、この本に挙げられているどのキーワードに対しても「全く無関係」という態度ではいられないだろう。勉強することが多くて大変だ、とも言えるが、思いがけない人(の研究テーマ)と思いがけないところでつながっていることを発見しながら、クリティカル・ワードの網の目の中で自分(の研究テーマ)を位置付けていく作業は、ちょっと楽しそうだなとも思う。…同じ「楽」でも楽そうだとは決して思わないが。
ひとつだけ、ポピュラー音楽研究について「日本語で読める包括的なテキストが二〇一〇年代以降はなかなか見当たらない」とあるが、二〇〇〇年代までのおすすめ包括的テキストはこれ、というのがあるのなら書誌情報が欲しかった。二十年の間にどれくらい変わったのか気になる。
Posted by ブクログ
源河亨、
「美味しい」とは何か(2022)
食や料理が美学による考察の対象となり得ること、そして芸術と見なされうることを主張した本。身近な事象を対象に、いかに美学的アプローチをとるかという過程がわかりやすく示されている。
食の好みは人それぞれだし、やれここの料理はカクカクシカジカの理由で素晴らしいなどと知識をひけらかす人はうざったく感じる。しかし、料理に対する評価については、文化的相対性が成り立つことなども踏まえると狭い範囲の中では客観的な側面もあると言える。また、ある程度の知識を持って料理に対面したり、食べた料理について自身の言葉で語ることは、食に関する自らの経験に対する解像度を高めるために有意なものである。こうした主張からは、日常の哲学の議論のうれしさというものがよく分かる。筆者の議論は、ありがちな主張を一つ一つ否定することで自身の考えを正当化するというスタイルなので、読んでいて斬新なアイデアが得られるとかというわけではあまりないが、その分ちゃんと説得力のある議論になっていると思う。
特に興味深く感じたのは最後の章で、タイプ/トークンの区別を導入して料理が複数芸術であることを示すくだりであった(筆者は「反復可能な芸術」と表現していた)。ある料理を一つの作品として捉えた場合、その料理には無数の作品の事例があり得る。つまり、ある料理とその個々の事例のあいだにはタイプとトークンの例化関係が成り立っていると言える。タイプ/トークンの区別を録音音楽の再生の事例などに応用した文献はしばしば目にするが、食という身近な実践にもこうも自然な形で応用できるものかと驚いた。
総じて、日常世界の様々な対象が美学の射程になり得ること、そしてそうした哲学的な議論によって日常世界の解像度が上がることのうれしさ、という点が明確に示された本であると言える。美学について何も知らない人にとっては、入門書として非常に参考になる本である。