作品一覧

  • 鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて
    3.0
    1巻2,640円 (税込)
    映画のように書き、小説のように撮る…… のちに世界有数の映像作家となった 映画監督イ・チャンドンによる傑作小説集 待望の日本語訳刊行! 映画監督として世界中にファンを持つ韓国の作家イ・チャンドンが、かつて小説家として発表し、「映像の世界への転換点となった」と自ら振り返る小説集、『鹿川は糞に塗れて』(原題『??? ??? ???? ?? ??』)(1992)の邦訳。 収録される5作品はそれぞれ、朝鮮半島の南北分断、そこに生まれた独裁政治下の暴力、その後の経済発展がもたらした産業化や都市化に伴う諸問題などを背景にしている。すべての登場人物は、分断や社会矛盾の犠牲になって生きる「ごく普通の人びと」。膨大な量のゴミで埋め立てられた地盤と労働者たちの排泄物の上に輝く経済発展、そしてそこに生まれた中間層の生活の構造を、作家イ・チャンドンは「糞に塗れている」と看破し、そこに生きる市民たちの悲喜交々の生を問う極上の物語を紡ぎ出す。
  • Lの運動靴
    3.5
    1巻1,799円 (税込)
    1987年6月、韓国の民主抗争の最中、警察の発砲した催涙弾によって命を失った20歳の青年、大学生の「L」。28年後、彼のものだとされるボロボロの片方だけの運動靴が、修復家の元へ持ち込まれる。 「L」とは誰なのか? 運動靴の「欠けら」を修復する行為にどのような意味があるのか? 個人の「消せない記憶」とは? 人が生き、死して残す「物体」に、そしてその「修復」に、果たしてどのような意味があるのか? 主人公の美術修復家の視点を通して、静謐な時間の中で語られる「物質」と「記憶」をめぐる物語。現代アート作品の修復に関するエピソードが挿入され、修復室を訪れる寡黙な人々の人生が断片的に語られ、読者は静謐な美術修復室で繊細な思考を主人公とともに体験する。【モチーフ】 モチーフとなっているのは、以下のような事実。「L」こと李韓烈の運動靴の復元を知った作者が緻密な取材をへて創作した物語である。《李韓烈(イ・ハンニョル)は、1987年6月9日、延世大学で開かれた「6.10大会のための決意大会」のデモの最中、警官が発射した催涙弾に頭を打たれ、1カ月間死境をさまよい、7月5日、20歳で亡くなった。 彼の犠牲は、大統領直接選挙制の実現を目指す6月民主抗争の導火線となり、民主化運動の犠牲の象徴として広く国民の関心を集め、国民葬で行われた葬式には150万人が集まった。当時、彼が履いていた27.0センチの白い「タイガー運動靴」は、右側の片方だけが残されており、2015年、彼の28周忌を前に、美術品復元専門家のキム・ギョム博士の元に復元作業の依頼が寄せられた。キム博士はさまざまな葛藤を抱えながら、最新の美術品復元の技術をもってその運動靴を3カ月かけて復元した。現在、運動靴はイ・ハンヨル記念館に展示されている。彼が登場する映画作品にカン・ドンウォン監督「1987、ある闘いの真実」(2017)がある》

ユーザーレビュー

  • Lの運動靴

    Posted by ブクログ

    民主化デモ中、催涙弾を頭部に受けて亡くなった“L”。民主化の旗印となった彼の遺品を集めた記念館から、劣化が進む運動靴の修復以来が美術修復士に舞い込む。

    繊細な修復士の仕事を通して伝えられるのは、記憶をいかに後世に残すかということ。
    大きな記憶で言えば、時折挟まれるアウシュビッツ、慰安婦等の言及。
    小さな記憶で言えば、物語に出てくる記念館の館長だったり、お子さんを施設に預ける女性修復士の過去。
    うつろい行く記憶への不安さとそれでも風化させてはいけない思い、後悔がかいまみえる中で、“L”の運動靴は何も語らず物語を終える。

    残された記憶に、意味を見いだすのは私たちだ。

    0
    2022年07月08日
  • 鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて

    Posted by ブクログ

    鹿川は糞に塗れて
    韓国映画界の巨匠イ・チャンドン監督が30年前に書かれた小説の翻訳版
    その時代も今も続く南北分断、独裁政権下の学生達、急激な経済成長の元に暮らす人々の淡々とした様子が、思っていた以上に読みやすく描かれている

    初めて見た韓国映画はイ・チャンドン監督の
    『초록 물고기』
    以来、
    『박하사탕 ペパーミントキャンディ』
    村上春樹『納屋を焼く』を原作とした『버닝 バーニング』
    監督の映像の原点を文字で追うことで、その絵が広がって見える

    0
    2024年03月20日
  • 鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて

    Posted by ブクログ

    表題を含め5編の中短編が収められている。
    ほぼ私の世代の筆者は、本業が映画監督。
    訳も含め、かなり読み易い文体、映像の感覚が随所に見られるの画、筆者の本業と分かり納得。

    南北分断と朝鮮層を経て、20世紀後半以降の韓国の世情に渦巻くイデオロギー、中産階層の空気感が核となっている。
    特に表題の作品が然り。
    川辺に佇む鹿の姿・・・あたかも山水画を思わせる・・が装丁のどす黒さ、退廃感は??
    筆者の狙いが現れている~20世紀泣かばよりくに破れて山河在りき様となった国情。
    国を興すべくシャカリキとなった韓国・・中産階級が住むマンション群が鹿川に立ち並び、それはあたかも「糞尿痰」の上に屹立した建物。そこを

    0
    2024年02月09日
  • Lの運動靴

    Posted by ブクログ

    マーク・クインのセルフの話から始まる
    いつも表情が違って見えるレンブラントの自画像の模写
    キロギアッパ
    色々な靴 カン先輩の父親の靴 彼女が息子に左右逆に履かせた運動靴(『アンチクライスト』のシーン)
    適切な線 作家の意図を把握した修復 暴力的な修復
    罪悪感 麻痺

    0
    2023年04月02日

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