作品一覧

  • 生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか:紛争地ルワンダに暮らす人びとの民族誌
    4.0
    暴力と和解と赦し、そしていのちの円環 ルワンダは、ナチスによるユダヤ人虐殺と比較されうるジェノサイドを経験したことで知られる。本書は、ジェノサイド後も政治的抑圧を受け続ける住民たちが、国際社会や政府から見捨てられながらも、いかに自分たちの力で回復してきたのかを、医療人類学の視点から詳細に分析したエスノグラフィ(民族誌)である。 草の根の住民たちにとって紛争による苦しみとは何であり、回復とは何を意味するのかを、世代を越境する「いのち」のあり方と「生きる」ことを分析的視点としながら掘り下げた。 また、本書は、非西洋社会における人間の心と精神、共同体のあり方をポストコロニアリズムの立場から見直す。紛争・災害時に用いられる「トラウマ」「PTSD」概念は、西洋における精神医学を基礎として発展してきた。 これらを非西洋社会、とくにアフリカの紛争地に持ち込んだとき、植民地化の歴史と文化の違いにより現地コミュニティとの摩擦が生じやすいことが知られている。 この問題を解決するため、紛争地における心の傷と回復についての理論を草の根の住民たちの語りと観察記録の分析にもとづき呈示する試み。 【目次】 プロローグーー支援からこぼれ落ちた人びと 第1章 生きることを支える支援のあり方を求めて 一 紛争地、心の支援の失敗 二 失敗はなぜ起こったのか   三 失敗を超える手立て 四 人間としての苦しみ、そして癒し 第2章 沈黙が生まれたいきさつ 一 内戦とジェノサイド    二 侵入者たち    三 焼け野が原    四 ヴィルンガの山々に抱かれて 第3章 大切な人たちを殺された苦しみ 一 イビコメレ    二 あの穴の中に    三 語りえぬもの    四 そして精神の病いに至る    第4章 回復の道のりは未来へと向かう   一 未来志向の回復   二 蘇生する共同体    三 きずなの再生    四 生きてゆく意味 五 和解と赦し    第5章 いのちの円環   一 愛と助け合いについて    二 病いに伏す老女 三 未来を信じることはできるか    四 いのちの終わり、そして始まり    第6章 回復の限界   一 重い精神の病い    二 助け合いのルール違反    三 分かち合えない体験   四 分かち合われる日々の営み    第7章 生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか   一 語りえぬものを癒す    二 共に生きる    三 未来へ    四 いのちは続いてゆく    五 生きることを支える支援のあり方を求めて    エピローグーーより善い未来を創り出そうとし続けるその試み 注記    謝辞    参考文献    付表    年表
  • 性暴力被害の実際 被害はどのように起き,どう回復するのか
    4.5
    1巻2,772円 (税込)
    相手の意思や感情をないがしろにする性交(不同意性交)は性暴力である。 今の社会で最も一般的な性暴力のイメージは,「突然」「見知らぬ人に」「脅されて」被害に遭うという極めて狭いイメージである。しかし,性暴力の多くは「日常生活の中で」「身近な人から」「暴行も脅しもなく」起こる。また,夫婦や恋人,親子間でも性暴力は起こり,しばしば繰り返されて継続する。 本書は,「望まない性交」を経験した当事者にその経験を語っていただき,その「語り」を,同意のない性交が起こるプロセス,同意のない性交が被害当事者の人生に及ぼす影響,回復への道のりといった観点から分析した,一連の調査の結果をまとめたものである。 「語り」から分かった性暴力の加害プロセスには,大きく「奇襲型」「飲酒・薬物使用を伴う型」「性虐待型」「エントラップ(罠にはめる)型」の4つの型がある。それら四つのプロセスを詳述し,「被害当事者にとって,なぜ被害を認識したり相談したりすることが難しいのか」を解説する。 さらに,性暴力被害を受けた当事者が被害を受けた時およびその後にさまざまな体験を経て,どのように回復の過程を辿り,いまどのように生きているのか,当事者たちの語りを紹介すると共に,彼女たちを回復に導くもの,逆に回復を阻むものについて浮きぼりにし,支援のあり方についても提言する。

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ユーザーレビュー

  • 性暴力被害の実際 被害はどのように起き,どう回復するのか

    Posted by ブクログ

    被害に遭った方の語りを聞いて怒りや悲しみが湧き上がってきた。彼女らを傷付けたことを許せない気持ちになる。男性たちを懲らしめたくなった。
    「あなたは悪くない」と寄り添ってくれる人の存在は大事だと思う。

    0
    2022年07月03日
  • 生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか:紛争地ルワンダに暮らす人びとの民族誌

    Posted by ブクログ

    よかった
    タイトルはなかなか仰々しいが…。


    まず、ルワンダの内戦について、あまりにも過酷な状況が書かれており、恥ずかしながら全く知らなかった。
    この本の前に「地球星人」という、なんとも非倫理的なエグい本を架空の物語として読んだのだけれど、現実の地球でまさに(多かれ少なかれ)同じようなことが起きていた、という事実にまず萎える。

    話は戻り、そういった過酷な状況、過酷な世界をその土地の人たちは、どう生き延びてきたのか、生き延びているのか、というルポタージュ。

    二つ興味深かった。

    一つは、過去を物語り、自分のライフストーリーに組み込むことでトラウマ・ケアをするという考え方は、西洋の精神分析学

    0
    2025年11月23日
  • 生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか:紛争地ルワンダに暮らす人びとの民族誌

    Posted by ブクログ

    ルワンダのツチ族を標的としたジェノサイド、国際的にもよく知られているが、その後に起こったアバチェンゲジ紛争などは私は全く知らなかった。それはルワンダの一般市民(フツ族、ツチ族)にとってとても酷い状況だったようで、多くの家族や友人を失ったにもかかわらず、現政府の統治下ではその話をすることも命の危険が及ぶような状況とのこと。そのようなかで、人々がどうやって前向きに今を生きれるようになってきたかが詳細に記されている。心の傷を癒す方法はその土地の文化や風習によって異なり、欧米のPTSDに対する手法が全ての地域に当てはならないことがわかってきた。それは日本においてもそうだと思う。ルワンダの市民らは最終的

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    2025年11月12日
  • 性暴力被害の実際 被害はどのように起き,どう回復するのか

    Posted by ブクログ

    被害者からのインタビューやアンケートから浮かび上がる性暴力の実際を記した本。
    様々な思いもあるなか協力された方々に敬意を表したいです。
    エントラップ型はかなり巧妙で今も知らないうちに被害者が増えている可能性があると思われる。

    0
    2020年10月11日

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