高校生活最後の一年間に詰め込まれた慶子さんと「和菓子さま」の和菓子と青春、そして恋の物語。
地の文でのキャラクター名が全て「さん」「君」付けに作者さまの優しさが滲み出ている気がした。
(かといって、ですます体でもないので、くどさはなくて読みやすい)
家庭の都合で、高校三年間のうちの二年間、青春らし
...続きを読むい青春を経験できなかった慶子さん。
「和菓子さま」との出会いから、諸々丸め込まれて、高校三年になってから剣道部に所属することに。
幸いエスカレーター式の学校なので、外部受験をしなければ、今からでも受験勉強をせず部活動に専念できる環境。
青春の遅れを取り戻すべく、慶子さんは部活動にのめり込んでいく。
タイトルや帯からは和菓子と恋の物語と想像していたら、結構部活動のシーンにも重きが置かれていたことに驚いた。
原題に「剣士さま」とありますしね。
なるほど。
勿論、和菓子のエピソードも豊富。
話がひと月毎にエピソードが区切られていて、その月に出会える和菓子が多数登場。
和菓子は名前を付けられて初めて完成するという話が特に印象的だった。
見た目の美しさもさることながら、素敵なお名前ついた和菓子は確かに多い。
また、異色の経歴を持つ和菓子さまのお祖父さまも素敵だった。
二人の両片想いのもどかしさも見どころ。
慶子さんはどうも可愛らしい外見や人の良さもあってもてるようだが、全く自覚がない。
そもそも恋どころではない家庭状況だったから、自覚がもてなかったのは致し方ないとして。
和菓子さまは和菓子さまで、結構ややこしい境遇、かつ後程慶子さんと(一方的な)繋がりがあったことも分かり、それ以上容易に踏み出せないという。
その割に、外堀埋めるのは早かったし、豪速球の牽制球投げてたけども。
最終兵器、親同士が仲がいい関係……和菓子さま、恐ろしい子。
もだもだした割に、最後の最後でひよる和菓子さま。
卒業式に彼が望んだただ一つのこととは。
何故あんな控えめな望みでよかったのか、補完はWEB版にて。
一年引きずった恋の行方、その答えは一足飛びのエピローグに。
高校生活の最後は控えめでも、最後の最後で幸せいっぱいなところを見せてくれる二人。
いい未来を見せてくれたことに感謝を。
ありがとう、これからもいいお店にしていってくれ。