■ファンづくりの3つのプロセス
①個性の定義と体現
②体験価値の最大化
③体験人数の増加
「それを知って、どんなアクションにつながるのか?」これは私がゲーム事業をやっていた時にデータアナリストから常に問われたものです。明確な答えが出せず、データを見れば取るべきアクションが分かるだろうと強引に実施した際は、大抵の場合データを収集した後に何のアクションにもつながらず後悔することになりました。そのため、ゲーム事業を離れた今も「それを知って、何になるのか?どうするのか?」と常に自問するようにしています。
時間やコストの浪費を避けるためにも、データ収集の前に目的を明確化するべきなのです。さらに、目的を完全に明確にしないままデータを収集してしまうと、必要なデータが取れておらず後悔することになります。
■イベント単位・施策単位では ターゲットを明確に
ターゲットを絞り込みすぎないと先述しましたが、施策単位では内容とPRのターゲットを一貫させて実施することが重要だと考えています。施策ごとにターゲットを明確に定めて、その方々に楽しんでいただける企画を用意し、その方々に届くPR手段を実行しています。
川崎ブレイブサンダースでは、興行のベースとなる部分で幅広い方に楽しんでいただけるという前提があるからこそ、試合単位で実施するイベントでは明確にターゲッめて深く刺さる施策に仕上げています。
■コラボレーション成功の秘訣はストーリー
できる限りの工夫をして、従来からのファンの方々にも様々なコラボを楽しんでいただきたいです。また、コラボ相手のファンの方々にとっても、アリーナ全体で歓迎ムードをつくって迎えられるほうが観戦満足度が上がり、結果的に川崎ファンになってくださる可能性が上がります。
そのようにコラボを成功させるためには「ストーリー」が必要です。川崎ブレイブサンダースを例にとると、「川崎」や「神奈川」の出身であること、「バスケ」が好きであること、何か川崎ブレイブサンダースと関わりがあることなど、コラボする理由やストーリーがあることが重要です。
■明らかになった YouTubeの集客効果
スポーツ業界では、YouTubeによる集客効果が出たという実績がないなかで、それでもポジティブな結果につながるはずだと懸命に取り組んできました。確証のないなかを駆け抜けてきましたが、ついにYouTubeは集客面で効果が出ているというデータが出てきました。
※初購入者がチケット購入前に見た媒体
・クラブ公式YouTube 53.0%
・案内板 23.8%
・A駅 装飾 23.8%
・B駅舎 16.7%
・C駅 装飾 15.5%
・チラシボスティング 15.5%
・ニック選手等身大パネル 12.5%
・D駅 ビジョン 12.5%
・E広報コーナー 10.1%
・F ビジョン 7.7%
・G駅 改札 6.0%
・ショーウィンドウ 1.3%
※20-21シーズン途中でのデータ、複数回答可
そこで、リアルイベントを潜在ファンの確保の場と役割づけて、参加していただいた 方にLINE登録をお勧めすることにしました。もちろん、リアルイベントで少し接点を 持ったからといって、いきなりチケットを購入していただくことは多くありません。 し かし、LINE登録をしていただくことで、見込みファンを何人獲得できたのかという効 果が可視化されますし、後日LINE上でコミュニケーションを取れる基盤をつくること ができます。LINEによってリアルとデジタルとをつないだと言えます。
イベント会場に偶然居合わせて「バスケ、面白そうかも」と思った方がいたとします。しかし一瞬そう思ったとしても、1時間後には忘れてしまうでしょう。あらゆるコンテンツがそうやって、興味を持っても忘れ去られていきます。来場のきっかけになる何かのイベントを365日用意できているわけではないので、提供できる情報が揃ったタイミングで直接コミュニケーションを取れる状態にしておくことが重要です。
慎重に判断しています。 参入しなかった領域で他のプレーヤーが大成功するなど、も ちろん後悔することもあるとは思います。 その後悔を最小限にするためにも、諦めず に取り組み続ける覚悟を決めるためにも、事前に考え抜くことが重要です。
例えば投げ銭など、選択肢には挙がりつつもスポーツには合わないと私は判断し 現時点では避けた領域もあります。
近年のライブ配信サービスにおける投げ銭では「①コンテンツへの満足」に加えて、「②配信者からの感謝/認知」、「③配信者への貢献/共闘」の3要素が重要だと感じています。スポーツにおいて①と②はサービス側で満たす余地がありますが、③が難しいのです。