福島原発事故から、15年経った。そして、福島第1原発の廃炉は具体的にどう進んでいるのだろうか?ある意味では、日本では経験をしたことがない事故を起こした原発の廃炉だ。作業する人が被曝による健康被害を起こらないことが優先順位だ。また、廃炉処理によって、周辺に放射線被害を起こさないことも必要だ。『廃炉』とは、どんなゴールをいうのだろうか?
福島原発では、1号機、2号機、3号機がメルトダウンを起こして、それぞれが複雑になっている。本書を読みながら、『事故を起こした廃炉』は、やさしい課題ではないと痛感した。廃炉に従事している人たちの精神的及び肉体的なストレスについてかなりの負担があると思う。
当初、国は事故収束費用(廃炉、賠償、除染)に、5兆円とし、2013年には、11兆円になり、2016年には、22兆円となった。これに、880トンの放射性廃棄物の処理・埋設費用が含まれていない。それ以降は修正がされていない。日本経済研究センターなどの民間機関は、事故処理の長期化や廃棄物処分費を含めると、最終的に35兆円〜80兆円規模に達するという。
大規模なメルトダウン(炉心損傷を含む)を起こした原発は主に3件(計5基)。
スリーマイル島原発(アメリカ・1979年):2号機。
チェルノブイリ原発(ウクライナ・1986年): 4号機。
福島第一原発(日本・2011年): 1、2、3号機の計3基。
スリーマイル島原発2号機は、デブリの大部分(約99%)の取り出しに成功している。
燃料が原子炉の「圧力容器」の中に留まっており、福島原発のように格納容器まで漏れ出していなかった。また、常に水に浸して作業できたため、放射線を遮蔽しながら上から「つり上げる」ことが可能だった。それでも100%は取り切れず、現在は40年以上経った今も「監視保管」の状態が続いている。
廃炉にかかった経費は、約10億ドルだった。
原発1号機は事故後も2019年まで安全に稼働していたが、経済的な理由(天然ガスとの競争など)で一旦停止した。 AIブームによるデータセンターの電力不足を背景に、マイクロソフト社が1号機の電力を20年間独占購入する契約を結び、1号機は「クレーン・クリーン・エナジー・センター」と名前を変え、2027年から2028年頃の原発運転再開を目指して大規模な改修が進んでいる。
チェルノブイリ原発4号機はデブリの回収を断念した。あまりにも放射線が強く、現場の状況も複雑すぎたため、取り出す代わりに巨大な構造物で覆う「封じ込め」を選択している。
日本政府は、廃炉の「ロードマップ」では、事故から30〜40年後(2041〜2051年頃)に、溶け落ちた核燃料(デブリ)をすべて取り出し、更地に戻すことを「廃炉」のゴールとしている。
本書では、30〜40年後の廃炉というゴールが、幻想であるとしている。科学的根拠がないというが、初めての事業であり、科学的根拠は出しにくいのが現実である。できないことを「できる」と言い続けることで、国民や地元住民に根拠のない期待を持たせている状態であることを本書では批判している。日本には高レベル放射性廃棄物の最終処分場(地層処分)すら決まっていない現状があり、デブリという「最も危険なゴミ」をどこに、どのように埋めるのかということが明らかにされていない。
いずれにしても、ほぼ除染はされたというけれど、帰還困難区域の除染は済んでいないし、森林区域は除染がなされていない。
福島原発で880トンのデブリを取り出すには、技術革新(イノベーション)がいる。
耐放射線AI・ロボットの開発。放射線で壊れない電子回路やカメラの開発、ガレキを自分で判断してうごける自律型ロボット。
大規模切削・回収技術の開発。 デブリはコンクリートや金属と混ざり、岩のように固まっている。これを水中で、あるいは粉塵を散らさずに遠隔で「削り取る」巨大な重機技術が必要。
レーザー加工技術の開発。物理的な接触を避け、レーザーでデブリを細かく切断する技術の開発。
デブリの全量取り出しは、土地を更地に戻せる。将来の不安を根本から取り除く。ただし期間が100年以上かかる可能性がある。作業員の被曝リスク大。莫大な費用がかかる。問題は取り出した廃棄物をどこに埋設するかも決まっていない。
1号機に 約280トン。 格納容器の底に広く分布。土台が損傷しており慎重な作業が必要。
2号機に約190トン。デブリの一部が露出しており、今回試験採取に成功。
3号機に約360トン 。水位が高く、水中ロボットによる調査が必要。最も量が多い。
合計で約880トンのデブリ。ここでの問題は、デブリだけで、その時に発生する大量の処理水の処理も重要な課題でもある。取り出したデブリを処理場に運ぶ前の保管をどうするかも大きな問題。
さらに、1号機、2号機、3号機のところで、津波対策は進んだが、大きな地震が起こったらどうするか。想定外で済ますことができるかと本書は問う。
2024年11月に2号機から「直径約5mm、重さ0.7グラム程度」のデブリを伸縮パイプ式のロボットを使って試験的に採取したのが、事故後13年目にして初めての成果。デブリの実物を取り込んだことは、とても重要だ。そのことで、デブリの性質がよく理解できる。
原子炉内部は、事故によって剥がれ落ちた断熱材や、溶けて固まった金属、配管が入り乱れる「ガレキの山」となっている。ロボットを送り込むための貫通部(穴)は直径わずか20cm程度。その先にある堆積物をどかしながら、数メートル先のデブリを「釣り竿」のような装置で探る作業は、暗闇の中で長い箸を使って豆をつかむような難易度である。
全量取り出しにこだわらず、チェルノブイリのような石棺法もあるのではないかと提言している。
原発事故から、15年。廃炉に関して、もっと正確な情報を開示すべきであり、廃炉計画を現実に基づいて、練り直す必要がある。福島に、安全・安心を取り戻して、初めて福島の復興と言える。