yasunaの作品一覧
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Posted by ブクログ
幼い頃から親の顔色を読み取りながら生きてきた人間が身につけてしまう対人スキルの危うさを、これでもかというほど精緻に描いた作品であった。
相手の欲しい言葉を察知し、距離を詰めすぎず、縋らず、求められた分だけ応じる。その振る舞いが意識的であると分かっていても、心が絡め取られてしまう。
その構造を、女性の心理と共に冷静に、そして残酷なほどリアルに提示してくる。
「私なら彼を変えられるかもしれない」という善意にも似た慢心が、いつの間にか相手の成功体験を積み重ねてしまう怖さを、読むほどに突きつけられる。
読み進めるたびに落胆と苛立ちが積み重なり、「身近にいたら確実に距離を取るであろう人物像」が、細部の癖や言葉遣い、趣味の描写に至るまで、あまりに解像度高く立ち上がってくる。その観察眼と表現力には、ただただ舌を巻くばかりだった。
物語自体は静かに進行するが、登場人物一人ひとりの感情密度は濃く、場面ごとに深く感情移入させられる。印象的な言葉や名言も多く、キャラクターの輪郭が自然と記憶に残る。
「誰かを思いやること」と「自分をすり減らすこと」を混同しない大人でありたい、という静かな決意が残る。相手を想ってこそ、潔く距離を取る選択ができる人になりたいものだ。
登場人物と場面転換が多いため、一気読みすることで物語の流れと感情がより立体的に掴める一冊。
何度も読み返しては「こういう人に出会いませんように」と自戒し、それでもなお誠実に恋愛ができる人間でありたいと願わせてくれる、忘れがたい作品だった。
Posted by ブクログ
六人の男女が一つのバーを中心に恋愛を繰り広げる物語。上手く言葉に出来ないことが悔しい。それぞれがもがき苦しんで、恋愛のみならず自分の気持ちとも対峙し、恋とはなにか、愛とはなにか、苦しみ続けている。
後半はずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。やるせない気持ちになりながら、暖かい気持ちになりながら、色々な恋愛模様に目を通していた。感情がぐちゃぐちゃになりそうだった。
和泉臨と佳奈の間に漂う元恋人にしかない温度感がとてもリアルだった。二人だけで共有してきた過去が、思い出があるんだと、痛感する思い。付き合ってたから当たり前なんだけど。その温度感が、距離を図る会話が嫌にリアルだった。
好きになっちゃダメだと理解しながら逃れられない紫葵ちゃんには同情する。好きになっちゃダメだと思ってる時点でもう恋に落ちてるんだと、ありきたりな感想が浮かんだ。
この作品において、私にとって1番"食えない女"だなと感じたのは圧倒的に藍ちゃん。小さい頃から築き上げた人を魅了させる振る舞いによって男を恋に落としてきたのだろうな。だから牧瀬が恋に落ちる予感を察知して自然に距離をとる。でも相手は何も悪くないし、自分が始めたことなのだから罪悪感がぬぐえない。そう読者に伝わる表現だった。いい女。
登場人物全員が魅力的。何かしら抱えながら、傷つきながら全身全霊で悩んで恋をしている姿が本当に好き。終わり方もとても好きだった。生きた証が、バーに残っている感じ。ハクは、誰なんだろう。勝手に成瀬の子供だろって思っちゃったけど、成瀬と藍ちゃんはくっつくのかなあ。二人とも読めない人すぎて、鳥肌と衝撃の7割はこの二人だった。二人の子供じゃないといいな。修羅場第二弾がバーで始まってしまう。
最後に、表紙を見て気づいたのだが、臨が紫葵を見つめているように見えて頭を抱えた。細かい。抜かりないなと。また千里が椿の前とそれ以外とで一人称を変えているところに気づいた時も同様に感服した。絶対に手元にキープして、何度も読み返すと決めた。絶対。
Posted by ブクログ
過去の背伸びした自分が、残して置いてきた物をひとつずつ回収されていく様な感覚で、心がじゅくじゅく疼きました。
これが実のなる果物だったら良かったと、秋の果物が美味しい季節に思ったりもしましたが刻が経つと案外、その時痛かった傷も美味しい話のタネになっていたりもするのでどっちでもいいかと考えを放棄する事とします。
いつか私も紫葵さんの様に
『この人の前なら、おならできる」と思える人に巡り会えるといいな。今年の秋、一番読んで切なく噛んで味わい深い一冊だった。
MIYAMUさんの紡ぐ美しい言葉に酔いしれてしまったので、酔いが抜けない内に感化された読書感想文をこの本棚に仕舞い込んでおきます。