ポンドは、金本位制と世界大戦と大恐慌で殺された。
基軸通貨とは、本来はプレトンウッズ制のもと、ドルの交換性があったからこそ。今はドルはキーカレンシーと呼ぶべき。
変動相場制に移行後、ドルは輸出競争力を高めるため、ドル安政策を取った。しかしルービン長官は、海外投資の呼び込みのために、貿易赤字が増えているにも関わらずドル高政策を取った=製造業の復権ではなく海外投資の呼び込みによる再建を目指した。
アメリカの独立は、戦費をアムステルダム市場で起債で調達できたから。日本が日露戦争のときにロンドンで国債を発行できたから勝てたのと同じ。
1900年ごろ、アメリカは貿易黒字が2%、金貨が流入した。世界大戦後、2万トンになった。
金本位制は、ポンドを基軸通貨にしたが、それに固執したため衰亡した。
金本位制のもとでは、経常赤字国は金利を上げて通貨を防衛する。その結果不況になって輸入が減る。経常赤字が解消する。
平時は、通貨量の全額の金を保有しているわけではない。40~60%程度。イギリスは経常黒字が続いていた=ポンドが切り下げられる心配は少なく、調達金利は低い=基軸通貨になった理由。
第2次世界大戦後は、スターリングブロック内でポンドが溜まっていた。イギリスの生産力が落ちていたため使い道がない。1930年代の不況は、イギリスはシステムを安定させる能力がなく、アメリカにはその意思がないために起こった。
プレトンウッズ体制は、IMFと世界銀行を柱とした通貨システムの安定化機構。通貨制度、不均衡の調整、自由貿易体制、の3つが目的。
金ドル本位制。ドルを通じて金本位制をとる。
ケインズは、パンコールによる貿易決済を考えた=パンコールによるツケ払いを認めて、外貨がなくても割り当てられたパンコールの範囲で輸入を継続できる。パンコールが溜まった黒字国にも、不均衡是正の責任を追わせる。パンコールは、アメリカが赤字国が実力以上の消費をすることになることで、インフレ要因になると考えた。
戦後、イギリスはアメリカからの借款で、ポンドの交換可能性が回復したが、ドルへの交換が殺到し、30%切り下げに踏み切った。
プレトンウッズ体制は、ドルの流出が原則。各国の外貨準備が成り立たない。しかし流出するとドルへの信認がなくなる。=トリフィンパラドクス。
1971年には、ドルの切り下げ予測によりドルが売られて変動相場制に移行せざるを得ない状況になった。同時にニクソンショックで金との交換を停止した。
ロバート・マンデルの国際金融のトリレンマ=固定相場制、独立した金融政策、資本移動の自由は同時には成り立たない。
ドルは、金との交換性を捨てることで、キーカレンシーとして生き残った。ネットワーク外部性、アメリカの経済力と信頼、などによる。特に石油など一次産品は、ずっとドル建てで取引された。他に選択肢がなく、他国もキーカレンシーとしてのドルにタダ乗りしていた。
アメリカは、ドルを受け取る国に困らなかったため、経常赤字でも引き締め政策を取る必要がなかった。むしろ、経常黒字国の内需拡大を求めた。各国は、世界経済の縮小を避けるためにはやむを得ないと考えた。=プラザ合意。
マンデルの最適通貨圏の理論では、ショックに対するサイクルが相関していて、資本、労働力の移動が容易、在支援の仕組みがある、地域は通貨統合が可能。
ユーロは、その域には達していないが、ドイツを抑え込むため、ドイツは東西ドイツの統一を認めさせるため、成立した。しかし、ユーロを運用する市場が限られているため、第三国にとっては使いにくい通貨となっている。そもそも、覇権通貨にする意図はなかった。
円建て取引はアジア内でも徐々に低下している。一次産品はドル建て、社内取引でも為替リスクを本社に集中させるため、ドル建てにしている例が多い。
中国は人民元を使った国債決済システムCIPSを創設。スイフトに対抗したもの。スイフトの規模には遥かに及ばず、スイフトの使い勝手のよさが目立つ。
デジタルカレンシー
裏付けのないビットコインなどは、基軸通貨のコストを引き受ける主体がなく、その意思もない。価値の保存機能はあるが、交換機能はなく、尺度機能も変動が激しいためにない。
裏付けのあるステーブルコインは、わざわざ基軸通貨にする必要はない。
中央政府のデジタルカレンシー(CBDC)は、金融包摂を広げる可能性がある、既存の決済システムが使える、地下経済を潰せる可能性もある、一方でプライバシー保護が疎かになる。
覇権通貨のコストは、金利が低くなること=通貨を各国が受け入れるため。金融政策が世界にスピルオーバーし、自国にスピルバックする。海外からのドル建て投資で為替レートは高めになること。
アメリカがこれを受け入れているのは、各国にとっては心地よいこと。