藤井誠一郎の作品一覧
「藤井誠一郎」の「ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治」「ごみ収集の知られざる世界」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「藤井誠一郎」の「ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治」「ごみ収集の知られざる世界」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
私たちは毎週のように家庭ごみを出している。しかし、そのごみがどのように回収され、どのような工夫のもとで処理されているのかを知る機会はほとんどない。
藤井誠一郎氏の『ごみ収集の知られざる世界』は、そんな「当たり前」の裏側を、現場への同行取材を通して描いた一冊である。
環境問題やリサイクルをテーマにした本だと思って読み始めたが、実際にはそれだけではなかった。本書が描いているのは、ごみ収集という行政サービスを支える「現場の知恵」と「働く人への配慮」である。
消防職員として日々現場活動に携わる私にとって、本書は非常に多くの学びを与えてくれた。
リサイクルは「分別」だけでは終わらない
本書で特に印象に残ったのが、ペットボトルの水平リサイクルに関する記述だった。
ペットボトルの中に飲み残しがあると、中間処理の段階でリサイクルの対象から外されてしまう。中身が本当に飲料なのか、それとも別の液体なのかを判別できないため、安全性を優先せざるを得ないからだ。
私はこれまで、「ラベルを剥がす」「キャップを外す」といった分別には気を配っていたが、「飲み切ること」がリサイクルの成否を左右するという認識はほとんどなかった。
このエピソードは、行政サービスは住民一人ひとりの行動によって成り立っていることを改めて教えてくれる。
わずか数センチの飲み残しが、資源循環を止めてしまう。
そう考えると、ごみの分別は単なるルールではなく、市民が参加する公共サービスの一部なのだと感じた。
現場は「働きやすさ」まで設計されている
もう一つ印象に残ったのは、ごみ収集車の細かな設計である。
収集車の排気口は、作業員が積み込み作業中に排気ガスを吸わないよう車道側に配置されている。また、小型プレス車のスライドドアは、狭い住宅街でも安全に乗り降りできるよう工夫されている。
本書では、こうした設備について派手に語られるわけではない。しかし、この「当たり前の工夫」こそが行政現場を支えている。
消防車両にも同じ思想がある。
ホース収納の位置、器具配置、手すりの高さ、夜間でも操作しやすいスイッチなど、現場で働く人の安全と効率を考え抜いた設計が随所に施されている。
普段は気付かないが、一つひとつの改善が事故を防ぎ、作業時間を短縮し、市民サービスの質を高めている。
本書を読みながら、「現場を知る人が設計した車両には理由がある」ということを強く感じた。
行政サービスは「見えない努力」で成り立っている
消防もごみ収集も、共通しているのは「何も起きないこと」が評価されにくい仕事である。
火災が起きなければ消防の重要性は忘れられ、ごみが毎週回収されれば収集作業の苦労も見えない。
しかし、その裏側では安全対策や業務改善が積み重ねられている。
本書を読んで感じたのは、行政サービスとは制度ではなく、「現場で働く人の知恵の積み重ね」なのだということだ。
消防職員だからこそ共感したこと
消防の現場では、「住民のちょっとした協力」が活動の安全性を大きく左右する。
違法駐車がなければ消防車は入りやすい。
避難経路に物が置かれていなければ救助活動は迅速になる。
住宅用火災警報器が設置されていれば命が助かる可能性は高まる。
ごみ行政も同じだった。
飲み残しをなくすこと。
正しく分別すること。
危険物を混ぜないこと。
住民の小さな行動が、収集作業員の安全やリサイクル率の向上につながる。
この「市民と行政が一緒に公共サービスをつくる」という視点は、本書の大きな魅力であり、消防行政にも通じる考え方だと感じた。
こんな人におすすめ
本書は環境問題に興味がある人だけでなく、自治体職員、消防職員、防災担当者、そして公共サービスに携わるすべての人に読んでほしい一冊である。
ごみ収集の仕事を知ることは、行政の現場を知ることであり、「当たり前の日常」がどれほど多くの工夫と努力によって支えられているかを知ることでもある。
私自身、この本を読み終えたあと、ごみを出すときの行動が少し変わった。
ペットボトルは最後まで飲み切る。
分別を以前より丁寧に行う。
そして、ごみ収集車を見かけたときには、「暑い中ありがとうございます」と自然に思えるようになった。
良い本とは、知識だけでなく行動を変える本だ。
『ごみ収集の知られざる世界』は、まさにその一冊だった。
Posted by ブクログ
著者のフィールドワークを通して、清掃事業の実態と課題を紹介する本。
普段さも当然のようにゴミを回収してもらっていた身だが、非常に勉強になった。
まずひとつ目は、清掃業務は「簡単に出来る仕事ではない」ということ。
傍から見ると、ただゴミ袋を積み込むだけの、誰にでも出来る単純労働に見える。
しかし実態は多くの改善や経験に支えられており、素人がすぐに真似できるようなものではないということだ。
これは他のエッセンシャルワーカーにも共通で言えることだろう。
我々はともすると、自分の知らない分野や、肉体労働・賃金の低い仕事をつい見下す傾向がある。
しかしどの職業にも、その職業なりの研鑽や積み重ねがあるはずだ。
そういった他職種への敬意は、絶対に忘れるべきではない。
また「住みよい街を作るには住民の当事者意識も必要」という点も重要だと思った。
住民も清掃事業に関心を持ち、正しく分別やゴミ出しをして、なるべく回収しやすいように協力するべきだということである。
「カネを支払っているのに、なんで客が協力しないといけないんだ」という人もいるだろう。
しかしその理屈では、これからの時代は通じない。
なんせそもそも人が足りないのだ。
金を払えば何でもしてもらえる、という時代は終わりを迎えつつあると言える。
これはスーパーの無人レジなどにも言えることだと思う。
何より、自分たちの暮らしのことだ。
横柄にならずに、少しくらい協力し合って何が悪いんだろうか。
他にも清掃従事者への差別や、女性職員の活躍など、様々なことが書かれている。
特に新宿二丁目の大規模な美化への取り組みは、この仕事がただの単純作業ではなく、夢と価値がある仕事であることを示している。
自分たちの暮らしが何によって支えられているのかよく分かる、とても良い本だった。
多くの人に、特に子どもたちに読んでほしい。
Posted by ブクログ
地方自治や行政学の専門家として、現場を体験しながら課題に取り組む姿勢は好感が持てる。
リサイクルや資源削減が叫ばれるなかで、ビニール袋有料化での実態的・啓蒙的な側面に比して、ペットボトル再利用についての我々市民の常識はかなり欠落しているのではないかと感じられ、現場やそれを支える行政の取り組みは、その周知徹底も含めて応援したいと思わされる。
我々の日常を守る人々は、震災などの非常時にはスクランブルに生活の崩壊を救うセーフティネットとしての役割すら担わされている中で、生業としての威厳を確保することもそうであるし、できる限り協力を行えればと思う。
Posted by ブクログ
私たちの出すごみがどのように収集され、処理されるかを考え、清掃事業への理解を深めようと書かれた本。
著者は地方自治や行政学などが専門の大学准教授だが、自ら現場に飛び込み清掃車に乗務し、その体験を通して清掃行政の研究を進めている。
自ら作業を体験し現場労働の苦悩を知り抜いていることから、この本の内容は、清掃事業従事者への慈愛とリスペクトに満ちている。
杜撰なごみ出しが現場労働者をどれだけ苦しめ落胆させるかについて認識を促し臭いや不要品を扱うことから従事者を見下げる社会的風潮があることに警鐘を鳴らす。
誠に説得力のある内容であり、ひいては資源循環型社会やエッセンシャルワーカーへの関心を高める役割も果たす良本であると感じた。
この本を読んで勉強になったことを以下に列挙しておく。
・①収集・運搬②中間処理③最終処分が分業で行われると、清掃事業の一貫性や統一性が意識されにくくなり、ごみの行方への関心が喚起されにくい。
・産業廃棄物収集業界は深刻な人手不足。業者同士が連携し、AIを活用して配車ルートを決め担当地区を分担させれば最短距離・最小台数の高効率な収集運搬が可能になる。これにより、燃料の消費やCO2排出も抑えられる。
・自治体がコスト削減のため「官から民へ」への改革を考える一方で清掃事業の実態の把握に努め、住民の満足度を向上させるには清掃リソースを自治体が保有しておくべき。
・最終処分場は環境影響への配慮や周辺住民の同意から確保するのが難しい。それゆえ、現在の処分場の延命化が考えられるが、そのためには、残渣の減量が必要。その方策として①残渣のセメント原料化②徐冷スラグ化により地盤改良材等への活用③焼成砂化による路盤材、ブロック資材への活用が考えられるがコストが嵩む。
・事業系廃棄物の収集運搬の効率化を図るためのDX推進は清掃事業に携わる人の社会的なステータス向上や自身が抱く職業意識の変化につなげられる可能性がある
・災害時、仮置き場には災害と関係のない「便乗ごみ」が搬出されることがある。清掃職員は被災者を慮り可能な限り被災者に寄り添う対応を心掛けるが、それにつけこんだエゴを通す行為は避けるべき。