作品一覧

  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた
    4.1
    1巻3,740円 (税込)
    “なぜ人類だけが、どこまでも数を数えられるのか。それは、ヒトが生得的に数の感覚を持っているからだ”――数は、私たちの思考に深く根付いている。だからこの説明は、一見するともっともらしい。しかし、アマゾンには数を持たない人々が暮らしている。幼少期、宣教師の父とともにこのピダハン族と暮らし、人類学者となった著者によれば、数は車輪や電球と同じ「発明品」であるという。「数の感覚」がまったく存在しないというわけではない。ピダハン族や乳児の調査によれば、彼らは数についてごく限られた感覚を持つ。人類は長い間、この曖昧な感覚だけで生きてきたのだ。そして私たちも、幼い頃は数のない世界を見ていた。今、数がわかるのは、かつて発明された数体系を受け継いだからこそである。各地の言語には、身体やさまざまな物を足がかりに発明が起きた跡が残されている。そしてピダハン族のように、発明が起こらなかった例も存在する。「わかったのは、ピダハンについてではなく、人類すべてに関することだ」。考古学、言語学、認知科学、生物学、神経科学に散らばる手がかりを横断し、数の発明の経緯を探り、その影響を展望する書。
  • 無数の言語、無数の世界――言葉に織り込まれた世界像を読み解く
    -
    私たちは「雪」と「氷」を区別する。それはもちろん、両者が別のものだからだ――しかしもしかしたら、自分が雪と氷を区別する言語を話しているから「別のもの」に思えるのではないだろうか? 言語学者たちはこのような問いに答えるべく、世界中の言語を調べはじめた。するとさまざまな言語に、人々が住む環境の影響を受けて言葉が形作られてきた痕跡が見つかるという。たとえば高低差2000メートルもの斜面で暮らすある人々は、「左右」にあたる言葉を持たず、ものの位置を常に「上り側」「下り側」で示す。赤道付近に暮らすある人々は、時刻を語る際に空の特定の方角を指差す。ある狩猟民族は、存在しないとされてきた「匂いの抽象語」を持っている。そして温暖な地域の一部の言語は、「雪」と「氷」を区別しない。「言語は、人間の経験の他の側面と切り離してしまっては理解できない」のだ。かつては、あらゆる言語に共通する普遍的な特徴がいくつもあると考えられていた。しかし、西欧言語とは類縁関係にない言語のフィールド調査が進んだ結果、その仮定は覆されつつある。著者は、むしろ今問うべきは「なぜ言語はここまで多様なのか」だと語る。少数話者言語の消滅が進行する中で届けられた、言語と認知の可能性についての書。

ユーザーレビュー

  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた

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    数を持たない文化もある、そもそも人間は数をどう認識しているのか、なぜそれが必要だったか、どう生まれたのかを言語人類学、認知心理学、考古学、大脳生理学、動物行動学といった分野の知見を横断して書かれた、知的好奇心に溢れた本。

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    2023年11月18日
  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた

    Posted by ブクログ

    人類はいつごろから「数」を数え、「数字」を使い始めたのか。数を数え、操ることは私たちにとって当たり前のことで、それなしに日時用生活は送れない。いったい、なぜ?いつから?この本は「数と人類」の驚くべき出会いと、付き合いの長さ、奥深さを教えてくれる。
    読み易くとてもくだけた日本語訳で、この未知の領域の問題についてぐいぐいと頭の中に入ってくるのもありがたい。
    一つ言えるとしたら、この本を読む前にジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」を読んでおくことをお勧めする。
    今生きている私たち人類すべてが、かつては過酷な自然の中を寄り添い、協力し合いながら生き延びた者たちの祖先なのだ、ということを思い知れば、

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    2022年05月04日
  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    タイトル通り、数を表現する言葉の成り立ちと、その人間の思考への影響を大いに語ってくれる一冊。動物が生得的に把握できる「きっちり数」は2(と、1+2=3)までで、「ざっくり数」となる4以上の数は言葉なしに判別できないとか、だから「双」「両」など2までを表す語はあっても3以上はほぼないとか4を「2+2」の形で表現する言語が多いとか、5は指の数で10や20までその延長で表現されるとか、5進数も10進数も12進数も身体感覚に基づくものだとか、とにかくもう納得と気づきの連発。左に小さい数、右に大きい数を配する横書き文化では脳までも左側が小さい数、右側が大きい数に反応するのが早くなるくだりなどはたまらない

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    2021年12月22日
  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた

    Posted by ブクログ

    ボクたちが生得的にもっていると信じている「数」の体系が実は文化、引いてはボクたちの”身”近なモノをヒントに「創られた」ものだという
    広範な学問分野を取り入れボクたちにとっての「数」とはどういうものなのかを提起する名著

    終章では、数が発生した起源とされる場所から現代における数の扱われ方について、農耕革命、一神教など時代を追って描かれていて面白かった
    個人的には、赤ちゃん(最短生後49時間)の数認知の実験をするための方法論や実験の過程、それに対する著者の意見などがユーモアも含まれてて好き

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    2025年01月02日
  • 数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた

    Posted by ブクログ

    名著「ピダハン」の著者の子息が書いた本ということで手に取った.

    普段我々は数の概念をなんなく使いこなしており,この能力は人間のような知的に高度な進化を遂げた生物には生来備わっているものではないかと思っていたが,実はそれは違うということ.
    つまり,数とは車輪や白熱電球のように人間によって発明された数を表す言葉や記号という文化的産物があるからこそ使いこなせたんだと主張する.

    ただし,人間が生物的に全く数量識別能力がない訳ではない,現代を生きる人間は当然ながら,数を持たない文化の政治や生まれて間もない赤ちゃん,人間ではない動物には生まれもったといっても良いざっくりとした数量識別の能力がある.この

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    2022年03月14日

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