前著「問いのデザイン」も学術論文のようだったが、本書も同様に論文形式だ。
私は正直読みづらく感じたが、著者が伝えたい内容は分かった。
文章が特徴的で、現象を出来るだけ分解して細分化し、それらに対してそれぞれ検証を行うというアプローチ。
働いていると「理屈はいいから結果を」となりがちなのを、敢えてそこ
...続きを読むで立ち止まらせて、検証を重ねている。
著者が両者とも博士号取得者だからこそ、「探求」が目的になっている。
探求している内容は、まさに「良い話し合いの中から素晴らしいアイディアが出るのはどういう状況か」だ。
普通に会話しているだけでは決してたどり着けない「高次元の答え」が確かにある。
適切な手順を踏むと、思いもしなかった素晴らしい答えが導き出せたりする時がある。
これは確かに働いていれば誰しも経験することではないだろうか。
「普段の会議では停滞してしまうのに、なぜかあの時の会議だけは神がかっていた」
まさに、なぜこういうことが起こるのか?
そのことを探求しているのが、まさに著者なのだ。
ワークショップの研究とは100年以上の歴史があるらしい。
日本ではほんの数年のイメージであり、馴染みは薄い。
しかしワークショップの重要性は、当社も含めて各所でも語られている。
日本人は人前で自分の意見を言う事が本当に苦手だと思う。
これは、子供の頃からこういう訓練を受けてないから。
和を重んじる精神が、逆に他者よりも前に出ることに蓋をしてしまうのだろう。
しかしそれでは高次元の答えは導き出せない。
意見を言えばそれで解決する訳ではないが、適切な対話をし、「内→外」「外→内」の考え方を行ったり来たりすることで、レベルを高めていくイメージ。
参考にするデータの見方についても、注意を促している。
データがあればすべて完璧ということは当然に無い。
データ信望者も存在するが、そこは注意が必要だ。
データはあくまでもデータ。見る人の解釈によっても最終的出力は大きく異なる。
ここもやはり対話が重要になる。
これを見てどう読み解いたのか。どう感じ取ったのか。
議論を重ねることで、新しい角度の問いを立て、さらに議論を重ねる。
理屈では分かるが、本書に書いてあることを実践するのは相当な訓練が必要だろう。
そもそものマインドセットも重要だったりする。
参加者が「こんなことやって意味あるの?」みたいなモードになっていたら、高次元の答えなんて望める訳がないからだ。
星野リゾートの星野社長は「学校で勉強した理論を取り敢えずその通りやってみる」のだそうだ。
理論として成立している以上、頭ごなしに「無駄だ」と切り捨てることこそ意味がない。
あなたの「無駄」という意見以上に、学者が何年もかけ他社事例も含めて研究したのが理論になっているのだ。
そのまま実践してみても確かにいいはずだ。
そこで違和感があれば、都度自分たちなりに修正していけばいいだろう。
そういう意味でスポーツと似ているのかもしれない。
闇雲に練習したって上手にはならないのだから、まずは理論通りに実践してみればいい。
本書で書かれていることは難しいが、試行錯誤しながらでも実践してみたいと思っている。
(2021/5/9)