自称『人形いたずら作家』ペク・ヒナの2018年作は、大きな絵本のサイズ感も加わって、素朴で心温まるアナログの魅力が詰まった、細かいジオラマの美しさや撮影の演出の仕方にも、より拘りを感じられたのが印象的だった。
それにしても、ペク・ヒナはこういった来訪者もののお話が好きなのかなと思わせた、前回の天女に続いて、今回はてるてる坊主のように見える、個性的な子どもが姉弟の家を訪ねて、「おうちにかえりたい」と言うが、それは雲の上にあるようで、そんなのどうすればいいのかと思ったが、物語の主旨はそこではなかった(もちろん重要なんだけど)。
その時、最初に応対した弟は、涙と鼻水を流しながら切々と訴える「チョン・ダルノク」(てるてる坊主の名前)の様子を気の毒に感じ、持っているパンをあげたが、それを一気に平らげたダルノクの小さなお腹が破裂しそうなほどに脹らみだしたと思ったら、そこから、プ、ププ、ププププ、ブオーンと、まるで突風が吹いたようなおならを・・・フフフ、これ、完全に笑い取りに行ってるでしょという狙いがありありだけど、子どもは特にツボにハマるかもしれず、その見せ方も上手い(ダルノクの顔がまた・・・)。
しかし、ダルノク本人は「なんで ぼくに あんなもの たべさせるのさ!」と、逆ギレしてしまい、どうやらおならは本意では無かったようで、その彼の怒りのボルテージと共に台所の気温が上昇していき、今度は、その暑さに耐えかねた姉が(おならの音に何事かと思って出て来た)、アイスをダルノクにあげたら雪が降り出してしまい、その何とも極端な天気模様は、まるで子どもの純粋な感情をそのまま表しているとも思われた時、物語の主旨が見えてきたような気がした。
ダルノクは見た目こそ全く違う、人間とは異なる特別な存在だとは思うけれども、それでも子どもであることには何ら変わりはなくて、その彼自身の心の叫びがもたらす様々な変化に驚かされはしたものの、それくらい子どもの心の中には、激しいほどの純粋な思いが息づいていて、本書ではそれを目に見える形で具現化したことによって、子ども自身の内に潜む様々な思いを、面白くも切実に教えてくれたのだと感じると共に、そうした子どもの時だけのキラキラしたものを大事にしなければといった思いにも駆られた、それは、終盤の夢を見ている美しい光景にもよく表れており、姉弟にとっては、きっと可愛い弟と一緒に過ごしたような気持ちだったのだろうなと感じられた、爽やかな読後感が印象的だった。