「東ドイツ」に関しては、社会主義統一党による独裁的な体制が続き、“シュタージ”と呼ばれた秘密警察が暗躍する監視社会であったと、「何時か解消されなければならなかった筈」な“ネガティヴ”な調子で語られることが多いのかもしれない。が、本書はそういう調子になっているのでもない。社会主義統一党による当地の体制
...続きを読むが固まって行くまでの経過等を客観的に説こうとしていて、「東ドイツ」というモノ、その社会や経済の変遷を判り易く示している。
そういうことで、本書は「現時点で、日本語で誰でも読める本として、最も判り易い“東ドイツ”なるものの通史」と言っても差し支えないかもしれないと思う。
幾つかの“選択肢”が在った時期、“転機”となった幾つかの出来事、そうした色々な事を経て「あの体制」になって行った訳だ。そして、これは自身でも「国外からのニュース…」として触れていた記憶が在るが、「西が東を吸収合併」とでもいうような形で現在の「ドイツ」ということになって行った中でも「東ドイツ」では色々なことが在った訳だ。それらが判り易く纏まっている本書はなかなかに好いと思う。
自身でも「西が東を吸収合併」というニュースを覚えている訳だが、「東ドイツ」については「往時を知る、または知り得る人々」が未だ多いかもしれない。何か「歴史」と「少し生々しい人々の記憶」との中間領域のような場所に在る事象かもしれない。他方、「西が東を吸収合併」は「30年も前…」なので「“東ドイツ”を知り得ない人達」も非常に多い。だからこそ、本書のような「客観的に説くことを意識しながら綴られた通史」は貴重で、大きな意義が在ると思う。
現在、ドイツ現地でも「“東”とは??」ということで色々な論点が在るらしい。そういうことが本書の末尾の方で触れられている。未だ「歴史」と「少し生々しい人々の記憶」との中間領域のようでも在る「東ドイツ」かもしれないが、色々と考える題材たり得る存在ではある。「東ドイツ」は「遠い異国の過去の一時期の体制」で、どちらかと言えば「どうでもいい…」のかもしれない。しかし「本当にそう断言して構わないか?!」と何処かで感じながら本書に触れるという側面も在った…
何となく「好著に出会えた!!」と少し嬉しい体験をさせて頂いたと思っている。