ウィリアム・H・マクニールの作品一覧
「ウィリアム・H・マクニール」の「疫病と世界史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ウィリアム・H・マクニール」の「疫病と世界史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
人類の歴史は、人間が他の人間に寄生する「マクロ規制」と、目に見えぬウイルスや微生物が人間に寄生する「ミクロ寄生」により規定されてきたといえる。科学技術が大いに進歩した現代においても、人類はこの規定の枠外から出ることがない。
本書は2つの寄生のうち特に「ミクロ寄生」に焦点を当てている。例えばスペイン人の南米征服に疫病が決定的な影響を持っていたことは広く知られているが、ではスペイン人はいつこの疫病を克服したのであろうか?このような考察を繰り広げていくと人類と感染症の壮大な歴史が浮かび上がり、歴史が転回する重大な局面を創出していたことが理解できる。
刊行されたのが1985年であるから、今から40年前の著作である。その頃に比べると疾病に対する人類の理解や対処も長足の進歩を遂げている。しかし、この2つの寄生の枠組みは、今後の人類の歴史を規定し続けるのだろうと思わせる説得性がある。改めて味読したい。
Posted by ブクログ
下巻の半ばから、ようやく(期待していた)本題。
何故、かくも少数のスペイン人に、アステカとインカという二つの大帝国が征服されたのか。
確かに、スペイン人がやってきて疫病が大流行して膨大な死者が出、且つスペイン人は疫病の被害を受けない。それなら、人口が激減して軍のみならず国家も社会も崩壊するし、「神の恩寵を受けているとしか思えない」スペイン人への抵抗は物理的にも精神的にもできなくなるな。そりゃあ、キリスト教に改宗するわけだ。ようやく理解できた。
そして、「悪疫によって引き起こされた一般大衆の憎悪と恐怖の感情は、激越な形をとってほしいままに表現された。特に貧者の富者に対する長い間抑えられてきた怨恨が、しばしば表面化して爆発した。こうして各地に起こった暴動と私邸の略奪は、社会組織を重大な試練に直面させる事となった」
この一説は、新型コロナウイルスからの黒人暴動を予言した形となってしまった。残念である。合衆国がこの試練を乗り越えんことを祈りつつ。
それにしても、「マクロ寄生」という概念(一般に言うところの分業化と権力)は必要だったのか未だに酔うわからんが。
Posted by ブクログ
人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。
現代の文明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すものの、次第に弱毒化していくように進化する。また、人類の側でも共同体内に一定の免疫を維持した状態が保たれるようになっていく。確かに、生物学を学んだものとしては、そういったとこだろうなと理解できる。その理解の単品と、人類の歴史という壮大なプロセスを組み合わせて新たな発見を発見・提唱できるというところがマクニールのすごいところだと思う。
上述の理解と世界史を組み合わせた場合、それまで交流のなかった人間集団同士が交流するようになった時には一種の無自覚の細菌戦争が行われることが分かる。その時点までにより多くの集団と交流してより多くの病原体と出会っていた方の集団の成員が、他方のインタクトな集団に対して病原体をばらまくことになるからだ。スペイン人がアメリカ大陸に進出した際にインディオを壊滅させた仕組みだ。
マクニールのすごいところは、上記の仕組みに気がつくことに加えてさらに、膨大な量の史料をあたり、各分野の専門家と議論して、着想への裏付けを取る努力をすること。また、その内容を大著として書き上げる能力。着想・裏どり・記述という一連をこなし、何冊も本を書いている。本当に偉大な学者だ。