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  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか
    3.9
    1巻2,420円 (税込)
    女性は数学が苦手、男性はケア職に向いていない、白人は差別に鈍感、年寄は記憶力が悪い…… 「できない」と言われると、人は本当にできなくなってしまう。 本人も無自覚のうちに社会の刷り込みを内面化し、パフォーマンスが下がってしまう現象「ステレオタイプ脅威」。 社会心理学者が、そのメカニズムと対処法を解明する。 【ステレオタイプ脅威とは】 周囲からステレオタイプに基づく目で見られることを怖れ、その怖れに気をとられるうちに、実際にパフォーマンスが低下し、怖れていた通りのステレオタイプをむしろ確証してしまうという現象。 ●直接差別的な扱いを受けたり、偏見の目を向けられたりしていなくても、社会にステレオタイプが存在するだけで、人は影響を受けてしまう。 ●努力をすればするほど、その影響は大きくなる。 ●自力で抜け出すのは難しいが、ちょっとした声がけや環境設定で無効化することができる。 (日本語版序文より一部抜粋) 「ステレオタイプ脅威」自体は、対人関係の問題を研究する学問である社会心理学の世界では有名なモデルである。しかし、実社会ではまだよく認識されていないように感じる。 その理由の一つは、ステレオタイプが、「差別」と「偏見」と混同されやすいことにあるだろう。ステレオタイプは、あるカテゴリーの人にどういった「イメージ」があるかという認識面(認知という)に焦点をあてた概念で、社会心理学のなかでも「社会的認知」と呼ばれる研究領域で扱われる。これに対して偏見は、ネガティブな他者へのイメージに対する拒否的、嫌悪的、敵意的感情であり、この感情に基づいた行動が差別である。簡単に言えば、ステレオタイプは認知、偏見は感情、差別は行動ということになる。 たとえば、社会全体にある「女性はリーダーシップ力が欠ける」というイメージはステレオタイプ。このイメージをもとに女性のリーダーや上司に不満を感じやすくなるのが偏見。差別は「だから登用しない」といったように、個々人の能力の査定に基づくのでなく、女性だからというステレオタイプで実質的な被害を他者に与えてしまうことである。 さて、多くの研究や社会での施策では、実際に人々がいかに偏見を持つか、差別的な行動をとるかということを扱う。近年は、自分が自覚していなくても偏見を表明してしまう、無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)という概念も注目されている。現実にまだまだこうした無意識のゆがみがあることで、その対象とされる人々は窮屈に感じる。たとえば、男性社員には決して言わないのに、女性社員にだけには「早く帰らないと子どもが大丈夫?」と言うのも、「子どもは女性が育てるもの」という無意識のバイアスのあらわれと言えるだろう。逆に、女性の方が多い保育や看護の職場では、男性が無意識のバイアスにさらされていることもある。 しかし、この書籍のテーマは「どんな偏見の目を向けられるのか」「実際にどう差別されているか」ではない。周りからの偏見や差別がなかったとしても、「本人が周りからどう思われるかを怖れる」だけで、ステレオタイプ脅威の影響は出てしまうのである。

ユーザーレビュー

  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

    Posted by ブクログ

    他者からどのように見られているか?を意識させられることで、それが事実かどうかは関係なく、パフォーマンスに影響してしまうという現象があるのだという。困ったことに、実力があるはずの人ほど悪影響が出やすいとも。
    そんなに人が皆、一律にプレッシャーに負けるものなのかとも思うのだが、これは心理実験の結果なので、プレッシャーに負ける人の方が多い傾向にあるということなのだろう。
    プレッシャーからの脱し方として示されているのが、ひとつにはクリティカルマスを越えること。クリティカルマスは、当事者が感じる多寡なので、何割を超えたら良いと一概に言えないのがミソだ。
    もうひとつはナラティブ。ステレオタイプを超えるスト

    0
    2022年10月13日
  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

    Posted by ブクログ

    「ステレオタイプ脅威」という概念を知れたのが収穫。

    いままでの人生の中でこれが原因でパフォーマンスが悪くなったように思えるような出来事がたくさんあることに気づけたし、逆に人に対してステレオタイプ脅威を引き起こすような言動や行動を無意識にしていた出来事にも気づけた。

    ステレオタイプ脅威を自覚できるだけでパフォーマンスは全然違ってくると思うし、脅威を引き起こすサインを自分が出していないかを意識することができるようになると思う。

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    2022年06月04日
  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

    Posted by ブクログ

    データが豊富で示唆に富んでおり、ちょうどよいくらいに、分かりにくい。
    これが自分自身の体験を考え直す機会を与えている。

    以下、要点抜粋。

    ・ステレオタイプが効くのは、上位者にも顕著。ステレオタイプを覆さなくては、という無用のプレッシャーでパフォーマンスが下がる
    ・ステレオタイプを覆そうという努力は、成績下位者にはプラスに働くこともあるが、限定的。
    ・直前にステレオタイプを否定的するだけで、効果は無くなる(数学のテスト)。反対に、ステレオタイプを起こすアイデンティティを喚起するだけでも悪影響が出る。CM・クイズなど
    ・脅威にさらされる、自分に悪影響を与えるアイデンティティが現れると、それでア

    0
    2021年11月10日
  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

    Posted by ブクログ

    ステレオタイプ脅威=ステレオタイプを追認することを恐れ本来の実力を出せなくなること、が本書のテーマ。
    数学のテストを受ける女子学生、
    知能テストを受ける黒人、
    スポーツテストを受ける白人など
    「元々そういうのが苦手な人たち」というわけではなく
    心理的なプレッシャーが実際の生理学的な影響を与え、パフォーマンスを下げることにつながっている。難しい証明だがいろいろな角度から研究を進め、対応策も見出し始めている。これまでステレオタイプ脅威のせいで埋もれてきた才能を考えると慚愧に堪えない。
    日本発売は2020年だが、米国で発売したのは2010年というのも驚き。

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    2022年09月25日
  • ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

    Posted by ブクログ

    この手の本を2冊購入した。
    アンコンシャスバイアス、無意識の認識。
    思い込みが強い人とどう付き合うか?
    2冊の著者は、社会心理学の研究者で、2人とも黒人。
    彼らは生まれた時から不躾な視線を向けられ、自分の中でどう折り合いをつけているのか。

    0
    2021年11月09日

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