産業医、精神カウンセリングの専門家、組織戦略のコンサルタントである著者による、離職・離脱・ぶら下がりが多く発生する「ダメな組織」がどのようなものか、そこからどうすれば脱却できるかについて解説した本。
内容は非常に整理されており、論理的で妥当性が高い。
「ダメな組織」がどのように発生していくか、また
...続きを読むその対処法はどのようなものか、著者の専門性と経験に基づいて解説されているため納得できた。
これまで漠然と感じていた組織の問題点とその原因の解像度が上がったと感じる。
「ダメな組織」は従業員のマイナス感情の蓄積によって発生する。マイナス感情は「心身コンディション」(疲労、病気、不安)、「働きやすさ」(ワークライフバランス、業務負荷、人間関係)、「働きがい」(成長の機会、居場所感、評価)の3つに分類され、どの要素が欠けても組織の活性は低下する。
また社員の悪い状態にも、現状からの回避を望む「消極的離職」、次の成長を目指す「積極的離職」、心身コンディションの悪化による「離脱」、不満を持ちながらもやる気なく組織にとどまる「消極的定着」などの種類がある。
当然、どの状態が多いかで組織の症状は違うし、その対策も異なる。
個人的に特に関心を持ったのは、能力のない社員がやる気なく居座り、若手の優秀な社員が「積極的離職」していく「ぶら下がり組織」だ。
今自分が所属しているのが典型的な日系大企業であり、この「ぶら下がり組織」の傾向が強いからだ。
福利厚生が手厚く、人当たりの良い社員が多い「働きやすい」会社である一方、年功序列をベースとした古い人事制度から変わっていないため社員の能力の差が待遇に反映されにくい。若しくは反映されるまでのタイムラグが長い。
この結果、若手の優秀な社員はよりレベルが高く高待遇の職場を求めて転職していき、相対的に能力の低い中高年社員が居座り高給をとるようになっている。
著者はこのような会社を最悪の状態と言っている。
そして脱却までの道筋として、まずは「働きやすさ」を減らすことでぶら下がり社員を排除することが必要だとする。具体的には評価制度を見直して、自社に必要な人材を選別していくことが有効である。
ハードルは高いが、これをしないと会社に未来はないと思っている。
ただ、無能な社員にも一丁前に不満やプライドはあるので、会社として明確に「あなたは能力が低いので待遇を下げます」というメッセージを出せば、案外すんなり出ていく気もする。自覚がないのが一番厄介なので、教えてあげることが必要なのだ。
組織の「病」の種類は多く、解決は難しい。だからこそ、本書のような本を読んで理解を深めることが重要だと思う。