物理学、化学、IT、心理学、社会学等あらゆるジャンルの知者が無慈悲にも次々と登場し、一つのエッセイを読むたびに深く息をついてひと休みしなくてはいけないから、とても読むのに時間がかかる本だった。
科学者には3タイプあるように思う。この本にはその3タイプすべての人が登場する。一つめは、科学絶対信仰の信
...続きを読む者みたいな人。ビジネスマンや宗教者が嫌いで(エッセイなんだから気軽に書けばいいのに)、見えない敵に喧嘩を売るような文章を書く人。科学は万能、証明や再現できないことはすべて愚かと考えるような人だ。こういう人は自分の正しさを証明するために科学を道具にしているんだろうなと思う。子供の視野だ。二つ目は科学がただただ大好きで、読者おかまいなしに専門用語や「私の造語」でひたすら自分の研究分野を熱く語る。キラキラした青年みたいな視野だと思う。三つ目は、科学は万能ではない、ただ今私たちが手にしているモノサシがこれなだけだ、私たちにはまだ知らないことがたくさんある、という哲学を持った視点から自分の研究を語る人。豊かな成熟した大人の視野だと思う。こういう人が実は一番科学を愛していて、科学の未来に希望を持っているのだと思う。人類は小さく盲目で、自分たちがどこから来て、どこへ行くかすら知らない。それどころか明日がどんな日かも分からない。そんな存在なのだ。