三浦みどりの作品一覧
「三浦みどり」の「戦争は女の顔をしていない」「ボタン穴から見た戦争 白ロシアの子供たちの証言」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「三浦みどり」の「戦争は女の顔をしていない」「ボタン穴から見た戦争 白ロシアの子供たちの証言」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した、女性兵たちの証言をまとめた本。
凄まじい。
本当に、凄まじいの一言に尽きる。
何百人もの、戦争に参加した人たちの生の声。
口述記録が主なので、たどたどしい部分や、支離滅裂な部分もある。
理解しづらい部分もあるし、教訓的な内容でもなく、綺麗なオチがつくわけでもない。
だがそれが、圧倒的なリアリティを生む。
正義とも悪とも、善人とも悪人とも、被害者とも加害者とも言い切れない。
ただただ色んな人の人生が、戦争がそこにある。
だからこそ、胸を打たれる。心を震わされる。
現代社会では、特に日本の(西洋の)視点では、「ロシア=侵略者」というのが概ね共通のイメージだろう。
しかしそこに住んでいる人たちは、悪人でも戦争をしたがっているわけでもなく、やっぱりただの人間なのだ。
そのことは知っておくべきだろう。
本書が教えてくれることは、「戦争を分かったつもりになってはいけない」ということだ。
言っては何だが、本書で扱うのは、人類史における「たった4年」の戦争だ。
それも、その中のたった一国の、かつ女性側の視点だけ。
それだけで、これだけの奥深さ、複雑さ、矛盾、飲み込めなさがある。
本当にたくさんの人がいる。
何千万人もの人が、命懸けで、一生にも匹敵するほどの濃い時間の中を生き抜く。
それに対して現代の視点から、「戦争ってこういうものだよね」と、安易に語ってはいけない。
要約しようとしてはいけない。
強くそう思う。
戦争は許されないことだ?
それとも、平和のためには軍拡が必要?
一体我々は何を知ってて、そう言うのだろうか。
正義と悪、善人と悪人、男と女、加害者と被害者、恨みと赦し。
暴行、凌辱、拷問、恋、凄まじい重労働、使い捨てにされる命、差別、社会復帰の難しさ。
戦争に志願するということ、人を殺すということ、殺されるということ。
そして、ほんの少しの美しさ……。
知ろうとすればするほど、分からなくなる。
だからこそ、知ろうとする姿勢が大切だ。
安易に答えを見つけずに、分からないもの分からないまま抱えていく。
そういう勇気が必要だと思っている。
最後に、特に心を打たれた一文を紹介したいと思う。
人間が持つ恨みと葛藤の、凄まじい深さを表している。
たった一人の人間でこれなのだ。
戦争とは、何と恐ろしいものだろうか。
『許すことが簡単だとでも思う?
私自身だって、奴らが痛い目に遭えばいいと思っていたわ……。もちろん……奴らの涙が見たかった……。
いい人になることなんて、すぐにはできないわ。今のあなたのような、いい人になんか。奴らに同情するなんて!
そのためには、何十年も必要だった……。』
Posted by ブクログ
真実を語ることを強く制限されている中で、
聴くこと、届けることをやめなかった著者にどれだけの大変さがあっただろう、と思う。
本当の声を知れたこと、心から有り難く思う。
苦しい、悲しい、怖い、
その言葉では全く収まりきらない。想像も止まってしまう。
女性が戦場に行き、国を信じ、命をかけていた。
想像を絶する世界を生き抜き、
身体にも深く傷を負っている女性に、
戦後、周りの人に言われた言葉や裏切りに、
とてつもない悲しさを覚えた。
恐怖からくる身体の症状は、読みながら何度も呆然とした。
死と距離が近くなったときの現実は、
生命の本能、そして残酷さ、愛と密接なように思う。
戦争に関わった人の言葉を知るということは、
自分の人生にとても大切なことだと感じた。
その中でもこの女性の声というのは、
自分の中に確実に深く残るものがあった。
Posted by ブクログ
読むのに1年かかってしまった。アレクシエーヴィチがノーベル文学賞を受賞した時、諸事情により群像社から出ていたこの本は絶版だった。その後岩波書店が刊行してくれた時、NHKの「100分de名著」が取り上げた時、ロシアがウクライナに侵攻した時。読みたいという思いが次第に募り、やっと手にすることができた。一つ一つの証言は短いが体験そのものが重く、心に残る言葉がいくつもある。
「男たちは自分たちが独占してきた世界、そのテリトリーにしぶしぶ女を入れる。」(著者・アレクシエーヴィチ)
「これは女の仕事じゃない、憎んで、殺すなんて。」(マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワ〈イワーヌシュキナ〉、兵長〈狙撃兵〉)
「女でなかったら戦争を生き抜けない。私は一度も男がうらやましいと思ったことないわ。」(エレーナ・ボリーソヴナ・ズヴャギンツェワ、二等兵)
「ねえ、あんた、一つは憎しみのための心、もう一つは愛情のための心ってことはありえないんだよ。人間には心が一つしかない、自分の心をどうやって救うかって、いつもそのことを考えてきたよ。」(タマーラ・ステパノヴナ・ウムニャギナ、赤軍伍長〈衛星指導員〉)
戦後、血を見すぎて赤いものを受けつけなくなってしまった人、過酷な戦場で生理が止まってしまった人、夫婦で出征した人。特にパルチザン、地下活動家だった人は拷問を受けたり虐殺の現場を見たりしていて、読むのにとても勇気が要った。一方で前線でも「女らしさ」を大事にして軍隊生活に潤いを与えようとするエピソードには人の温もりを感じた。
第二次世界大戦中、女性が最前線で戦うなど他の国では聞いたことがない。千差万別の貴重な証言が、多くの人に読まれることを願う。
Posted by ブクログ
オーディブルで少しずつ聴き進めていたのを、雪の積もった投開票日に聴き切った 印象に残ったところを引用したいところだけど引用に足らない箇所なんてなかった ほとんどが自ら志願して戦争に参加した10代の少女たち、その当時の記憶を生き生きと語る高齢の女性たち、その語りに耳を傾ける若き(30代ごろの)著者という三世代の女性の身体をめぐる物語でもある インタビューのみならず差し挟まる著者の語りもいい
「戦争体験というのはあまりに個人的で内的な体験であり、人間が生きていることの果てしなさと同じく限りがない。
わたしが書こうとしている本の文章がいたるところにころがっている。農家や街の家々、街や汽車の中で。いたるところでわたしは聴いている。ひとつの大きな耳になって人々の声を読み取っている。」p.9
「どこかの麦畑で隠れていた時のこと。お天気でした。ドイツ軍の自動小銃がタタタタタッと鳴って、そしてシーンと静まりかえります。あとは小麦がさわさわといっているだけ。またドイツの自動小銃がタタタタッと。それで思ったんです。いつか麦のさわさわいう音を聴く日がくるだろうか?この音を・・・・・・」p.97
「ある訓練の時。なぜかこれを思い出すとつい涙が出てしまうんです。春のことで射撃訓練が終わって、戻る時。スミレの花をたくさん摘んで小さな花束にして、銃剣につけて帰った。そうして歩いてたんです。キャンプに戻ると、指揮官は全員を軽列させて、私に列から出るように言います。列から出るのに、花束をライフルに結びつけたのを忘かたままでした。指種官は小言を言い始めました。「兵隊は兵隊らしく。花摘み娘ではないんだ!」こんな状況の中で花のことなんて考えられることが指揮官には理解できなかったんです。でもスミレは捨てませんでした。そっとそれをはずしてポケットに入れました。スミレのせいで三日間の罰当番を課せられました。
見張りに立っていた時。夜中の二時に交替が来たのに、交替しないでいいと言って断ったんです。『昼間やってね。今は私が』夜明けの小鳥の歌を聴いていられるなら、明け方まで立ち続けてもいいと思いました。夜中だけが以前の生活を思い起こさせてくれたんです。平和な頃の。私たちが前線に出て行くとき、女の人、老人、子供たちが沿道に人垣を作っていました。『女の子が戦争に行く』とみんな泣いていました。一個大隊分の女の子たち。」p.105
「ある者にとってそれは手術台と結びついている。『切断された手や足をどれだけ見たかしれないわ。どこかに手足がそろっている男の人がいるなんて言じられないくらい。誰もかれもが負傷しているか、死んでしまったんだって気がしたわ』(A・デムチエンコ、上級軍曹、看護婦)。野戦食堂の大釜を忘れない人もいる。『戦闘のあと誰も生き残っていないことがあったの。大釜一杯スープを作ったのに、誰も食べてくれる者がいないってことが』(デーニチ、兵卒、料理係)。」p.131
「男たちは何事であれ私たちより苦労しないで順応できた。ああいう禁欲的な不便な生活に……ああいう関係に……でも、私たちは寂しかった。とても家が恋しかった。おかあさんが恋しかったし、暖かい家庭が恋しかった。モスクワから来ていたナターシャ・ジーリナという子がいて、勇敢な行為に対して「剛毅記章」をもらい、数日、家に帰らせてもらったの。その子が戻って来たとき私たちはその匂いをくんくん嗅ぎました。文字通り、行列を作って順番に匂いを嗅がせてもらった。おうちの匂いがすると言って。そんなに家が恋しかったの……手紙の封筒を見ただけでもうとってもうれしかった……。おとうさんの筆跡......ちょっとでも休憩がもらえると、何か刺繍をしたり、ゲートルを肩掛けに作り変えたり、何かしら女らしい手仕事がしたかった。女らしいことに飢えていました。何か言い訳をつけて針を手にして、何でもいいから縫い物をしたり、ちょっとの間でいいから、本来の姿に戻りたかったのね。もちろん笑ったり、喜んだりはしたけれど、戦前のように心から喜んだり笑ったりではなかった。何か特別な状態だった。……」p.159
「ファシストの飛行機はとてもとても低く飛んで、一人一人を狙ってきたわ。いつも自分が狙われている気がする。私は逃げる・・・・・・そして私を狙ってくるのが見える、そういう音がするの・・・・・・操縦士が見える、その顔が。女の子だ、と気がつく・•••・衛生輜重で女の子ばかりだって・・・・・輪重を狙って銃弾を連射して、にやにや微笑みを浮かべているの。愉しんでいるのよ・・・・・恥知らずな恐ろしい笑い・・・・・・美男子だったわ・・・・・・私はもう我慢できないで・・・・・・悲鳴をあげる・・・・・・トウモロコシ畑に逃げ込むと、そこに追ってくる、森に逃げれば地面に押しつぶさんばかりに迫ってくる。もう灌木の茂みしかない・•・・・・森に飛び込んだ、何か枯れ葉の塊に。恐ろしさで鼻血が吹き出てくる。自分が生きているのかどうかも分からない。大丈夫、生きてる・・・・・それ以来飛行機を見るのが怖くなったの。どこかに飛行機が見えたらもう怖い。他のことは何も考えられなくなってしまう。飛行機が飛んでいると、どこに隠れたらいいだろうって、そればっかり。音を聞かないために、見ないためにどこに隠れようかしらって。今でも飛行機の音は耐えられない。飛行機に乗ることもできない・・・・」p.202
「ドイツのある村でお城に一泊した時のこと。部屋がたくさんあって、すばらしいものばかり! 洋服ダンスの中は美しい服で一杯。一人一人がドレスを選びました。私は黄色のドレスと長い上衣。言葉では伝えられないほどきれい、長くてふわっとして。綿毛のよう。もうる時間で、みな疲れ果てていた。それぞれ気に入ったドレスを着たままたちまち腹入ったわ。私はドレスを着てその上に長い上衣も平織って横になった。
ある時は無人になった帽子屋で帽子を選んだこともあるわ。ちょっとでもかぶっていたかったので、座ったままで寝たの。朝起きてから・・・・・・鏡をもう一度覗いたわ。それから、みんなは帽子を脱いで、また自分の詰め襟の軍服を着てズボンをはいたの。何もとろうとしなかった。移動には針一本だって重たいのよ。いつものとおりスプーンをブーツの脛のところに突っ込んで出発....」p.292
「私たち女性は二百人ぐらい、その後ろを男たちが二百人ぐらい。夏の暑さ。毎日三十キロ進む。私たちが通った後には赤いしみが砂に残った。女性のあれです。隠しようもありません。兵士たちは後ろを歩きながら、気づかない振りをする......足下を見ないように・・・・・・・私たちがはいているズボンは乾ききって、ガラスのようになる。それで切れるんです。そこが擦れて傷になる、いつも血の匂いがしてました。何もくれなかったんですから。兵士たちが茂みにシャツを干すのを見張っていて、いくつか盗むんです。まもなく、兵士たちも合点がいって、笑ってました。『伝長、下着をください。女の子たちに盗まれてしまったんで』脱脂綿や包帯だって負傷者の分さえ足りなかったんです。私たちの分なんかとんでもない・・・・・女性用の下着なんか戦後二年でやっと出てきたんです。みんな男物のパンツでランニングを着てたのよ。それで進んだ・・・・・・渡河点に着いたとき爆撃が始まった。すさまじい爆撃で男たちは必死で物陰に隠れようとした。私たちにも逃げろと叫んでる。でも、私たちは爆撃の音なんかかまわず、一刻も早く河に着きたい、水に入って、すっかり洗い落とすまで水につかっていた・・・・・破片が飛び散る下で···・そうなの・・・・・・恥ずかしいって気持ちは死ぬことより強かった。数人の女の子はそのまま水の中で死んでしまった・・・・・・
もしかすると、その時初めて男でありたいって思った・・・・・初めて。」p.303
「赤い布で上着を縫ったら手に何か斑点が出来てきたんです。水疱が。赤い更紗でも、バラやカーネーションの赤でも私の身体は受け付けなかったんです。赤いものは何でも、血の色のものは・・・・・・今でも家には赤いものは何もありません。見つけられっこありません。人の血というのはすごく鮮やかな赤です。自然界だって、画家の絵にだってあんなに鮮やかな赤はありません。ザクロのジュースが少し似ているけど、全く同じではありません••·・」p.464
「あたしはいつも自分たちのお祝いの日を待っている。戦勝記念日を…・・・・・楽しみなんだけど怖くもある。その日の何日も前から洗濯物をためておいて、一日中洗濯をする。何か他のことをやって気をまぎらせていなければ耐えられない。戦友が集まるとハンカチが足りないのさ。戦友会ってそんなふうだよ。涙の海になってしまう。兵器のおもちゃは嫌だよ、飛行機とか戦車とか、誰がこんなものを思いついたんだろ?胸を引き裂かれる思いがする。兵器のおもちゃなんか買ったことないし、あげたこともないよ。自分の子供にも他人の子供にも。ある時、軍用機やプラスチックの自動小銃のおもちゃを誰かが家に持って来た。すぐにゴミ捨て場に捨てたよ。すぐに!だって、人間の命って、天の恵みなんだよ。偉大な恵みさ。人間がどうにかできるようなものじゃないんだから……」p.480
「スターリングラードでのこと…・・··一番恐ろしい戦いだった。ねえ、あんた、一つは僧しみのための心、もう一つは愛情のための心ってことはありえないんだよ。人間には心が一つしかない、自分の心をどうやって救うかって、いつもそのことを考えてきたよ。
戦後何年もたって空を見るのが怖かった。耕した土を見るのもだめ。でもその上をミヤマガラスたちは平気で歩いていたっけ。小鳥たちはさっさと戦争を忘れたんだね…」p.482