作品一覧

  • モーセと一神教
    4.5
    1巻1,210円 (税込)
    フロイトはその最晩年、自身の民族文化の淵源たるユダヤ教に感じてきた居心地の悪さに対峙する。それは、〈エス論者〉として自らが構築してきた精神分析理論を揺るがしかねない試みであり、「生命と歴史」という巨大な謎と正面から格闘することでもあった。「もはや失うものがない者に固有の大胆さでもって、……これまで差し控えておいた結末部を付け加えることにする」――ファシズムの嵐が吹き荒れる第二次世界大戦直前のヨーロッパで、万感の思いを込めて書き上げられた、巨人の恐るべき遺書。
  • ある神経病者の回想録
    3.0
    1巻1,650円 (税込)
    「神」の言葉を聞き、崩壊した世界を再生させるために女性となって「神」の子を身ごもる……そんな妄想に襲われた一人の男は、みずからの闘いを生々しく書き綴った。それは、1903年に公刊されて以来、フロイト、ラカン、カネッティ、ドゥルーズ&ガタリなど、幾多の者たちに衝撃を与え、20世紀の思想に決定的な影響を及ぼした稀代の書物である。世界を震撼させた男が残した壮絶な記録を明快な日本語で伝える決定版。(講談社学術文庫)
  • フロイトとベルクソン
    -
    1巻1,760円 (税込)
    ジークムント・フロイト(1856-1939年)とアンリ・ベルクソン(1859-1941年)。ウィーンとパリで同じ時代を生きた二人は、同じ知のネットワークに属していたばかりか、同じ対象に関心を抱き、独自の思索を展開した末、対極から同じ領域に迫ろうとした。しかし、彼らには直接の交流はおろか、著作での言及も皆無に等しい。この謎めいた事実は何を意味するのか──本書は、この問いに挑み、二人の知の巨人を隔てる深淵に肉薄する。 著者は言う。「精神医学にせよ、哲学にせよ、およそ学問的な企てが総じて追求しているのは、人間の幸福だと言っていいだろう。つまり、幸福を否定してくる不幸事の調査研究も含めて、人生の幸不幸の研究こそが、いっさいの学問の根本の任務なのである」(第V章)。この「幸不幸」という問題に決着をつけるために、著者は「フロイトとベルクソン」という問いに到達した。だが、その問いは著者が生み出したものではなく、「この二人の「無意識の発見者」から発せられていると強く実感される」ものだった。 本書は人間と切り離せないこの問題に向き合うすべての人への贈り物である。 [本書の内容] プロローグ 小林秀雄の声を聴いたこと/直覚された二人の関係 第I章 生 同時代人/誕生の頃/修学時代/無意識・心の基体の発見/ユングという体験/ミンコフスキーの精神病理学/晩年/再び、直覚された二人の関係に焦点を合わせる 第II章 夢 記憶の円錐体について/ベルクソンの「夢」の講演/『夢解釈』の裏側の世界/冥界への歩み、果てしなく/快原理のもろさ/刺激保護膜の無機物的性質/快原理の/夢の「彼岸・前史」/涅槃原理のほうへ/無意識から、無意識へ/ベルクソンという覚醒 第III章 抑 圧 ベルクソンの思索と「抑圧」メカニズム/抑圧されたものとエスについて/生命のダブル・バインド/円錐体という意味過剰の渦動/「一ツの脳髄」から「感想」の破綻(終焉)へ/現実原理/快原理と円錐体、エロース/死の欲動とエス/シュレーバー語のダブル・バインド/円錐体の時間とエスの時間/無機物(フロイト)と物質(ベルクソン)と 第IV章 自 我 自我制作を企てるか否か/ベルクソンの精神病観/フロイトの自我(概念)制作の必然について/フロイトの企ての特質/中断された投射メカニズム研究/投射から企てへ/オイフェミスムス/アナクロニスムに発する投射のメカニズム/記憶の円錐体と投射メカニズム 第V章 進 化 ベルクソンと進化/死後の霊魂の不滅について/トルストイの『イワン・イリッチの死』を再読する/『イワン・イリッチの死』と正宗白鳥/弛緩の至福/フロイトと退化/反復 エピローグ――エスが企てる
  • 〈精神病〉の発明 クレペリンの光と闇
    -
    1巻1,925円 (税込)
    臓器と違って目には見えない精神の疾患を、はじめて分類・体系化し、〈精神病〉を発明したエミール・クレペリン(1856-1926年)。無意識を発見したフロイトと偶然にも同じ年に生まれ、フロイトと並んで現代精神医学の基礎を築きながら、その名は忘却され、彼が築いた分類と体系だけが、所与であるかのように、世界中で広く使用される診断マニュアルの土台となっている。 冷酷非情である一方、純粋で情熱的な面もあわせ持つ複雑な人物の半生を辿り、葛藤と煩悶を繰り返して生み出された体系の功罪を描き出す。精神医学誕生秘史! 「汝が名は忘却の淵に沈めども その業績は永遠なり」――。クレペリンが眠るハイデルベルクの墓碑にはそう刻まれている。 心臓や肝臓などの内臓の疾患は、その器官の病変や症状から、病を特定し治療にあたることができる。しかし、どこでどのような異常が生じているのか目で見ることのできない精神の疾患は、何をもって同じ病、あるいは違う病であると診断し、治療にあたるのだろうか。 同じ症状を呈しているからと言って、同じ病とは限らず、まったく違う症状でも同じ病ということもありうる。そもそも分類自体が可能かどうかさえ疑問だった時代に、悩みながらもそれらを分類し、体系化した人物こそエミール・クレペリンにほかならない。その成果は今、日本はもちろん世界でも広く使用されているDSM‐5やICD‐10と呼ばれる精神疾患診断マニュアルの土台となった。目に見えない精神の病を分類・体系化することで、言わば「精神病」を発明したともいえる。 奇しくも無意識を発見したフロイト同年に生まれ、フロイトに匹敵する影響を残しながら、フロイトとは対照的に、皮肉にも墓碑銘のとおりその名が忘却されたクレペリン。その「発明」は葛藤と煩悶のうちになされ、晩年には、それまでとまったく違う方向を模索しさえしていた。 またドイツ留学中の斎藤茂吉を冷たくあしらい傷つけたクレペリンは、ユーモアを介さない陰鬱な人物として語られてきた一方、その自伝をひもとけば、少年のような純粋さと情熱も秘めている。 今や自明のもののように扱われている診断基準は、一体どのような人間がいかにして創り上げたものなのか。クレペリンの半生をたどりつつ描かれる、知られざる精神医学誕生の歴史。 【本書の内容】 はじめに――なぜ、いま、クレペリンを問うのか 序 第1章 誕生と助走(一八五六―九一年) 第2章 創造と危機(一八九一―一九一五年) 第3章 静かなる浸透(一九一五―二六年) 第4章 〈精神医学〉制作あるいは〈精神病〉発明の途上にて(一九二六―八〇年) おわりに
  • 創造の星 天才の人類史
    -
    1巻1,980円 (税込)
    魔女狩りの嵐が吹き荒れる15世紀から、「魔術」と「科学」が分岐する17世紀、その結果として「非理性」が噴出を始める18世紀を経て、ベートーヴェンの《第九》で開始され、ヴァーグナーの《ニーベルングの指環》を生み出す19世紀、そして「非理性」を特異な形で先鋭化させたナチスを登場させた20世紀へ──。第一級の精神科医が放つ、500年間に及ぶヨーロッパ精神史!
  • 緊張病
    -
    1巻5,060円 (税込)
    本書は、内因性精神病のみならず、精神病研究全般に大きな影響を与えた。これは精神医学の疾病論、精神病像をどのように把握すべきかという大きな問いかけであった。

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ユーザーレビュー

  • モーセと一神教

    Posted by ブクログ

    エス論ゴリ押しのフロイト大先生によるモーセとユダヤ教の大胆な読み解き。
    この本の問題点を訳者の方が最後に指摘しているがとても面白かった。
    掘り上げた宝物が意外と重くて開けるのが複雑だった、みたいな感じ。

    0
    2023年04月11日
  • モーセと一神教

    Posted by ブクログ

    本書は、精神分析学の創始者と言われるジークムント・フロイト(1856~1939年)が、死の直前に発表した作品である。
    松岡正剛氏は、「千夜千冊895夜」(2003年11月)で本書を取り上げ、「これは恐ろしい本である。引き裂かれた書である。しかも、これはフロイトの遺書なのだ。人生の最後にフロイトが全身全霊をかけて立ち向かった著作だった。」と述べているが、ユダヤ教をはじめとするアブラハムの宗教に関わる人びとにとっては、衝撃の書であろう。
    モーセは、アブラハムの宗教において、最重要な預言者の一人とされ、伝統的には旧約聖書のモーセ五書(トーラー)の著者であるとされている。その中の一つ『出エジプト記』に

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    2019年11月30日
  • モーセと一神教

    Posted by ブクログ

    ユダヤ民族の解放者にして立法者であり、宗教創始者でもあったモーセ。
    フロイトはそのモーセがユダヤ人ではなくエジプト人であったという仮説を立てます。

    フロイトは、エジプトに一神教をもたらした古代エジプトのファラオ、イクナトンの業績に着目し、ユダヤ人のエジプト脱出はイクナトンの宗教改革が失敗に終わった結果、行われたものだと考えます。
    しかし、もしそうだすれば、モーセがセム人の神に対する信仰をユダヤ人にもたらしたという歴史家たちの研究と矛盾してしまいます。その矛盾を説明するために、フロイトは、モーセが実際には二人いたという大胆ですが単純な仮説を立てました。

    一人目のモーセは、エジプトの神アトンに

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    2010年10月08日
  • モーセと一神教

    Posted by ブクログ

    マルクスは資本主義を否定すると同時に唯物論者になった。
    それは恐らくはアブラハムの唯一神を否定しなければ資本主義に対向する論理を組み立てられなかったからではないかと愚考する。

    ならば、その大本の唯一神の成立を考察することは無益ではないだろう。

    フロイトのこの最後の著作は多くの矛盾を孕み、なおかつ歴史学者の間では異端とされる書物である。

    しかし、ここには極東の私のような人間には一抹の真実を含んでいると思えてならないのである。

    一度読んでみるといい。
    この市場の底にいる原則を産み出すものが何か考えるきっかけにはなるだろう。

    0
    2010年05月23日
  • モーセと一神教

    Posted by ブクログ

    満点であります!
    まずジークムントフロイトとは精神医学の権威であるのに宗教について書かれている。
    視点が他の宗教本に比べ斬新であり、聖書のはじめの5巻を書いたモーセを深く落とし込んでいるところに魅力を感じます。

    0
    2010年04月28日

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