医療業界のことはほぼ知らないまま読みましたが、日本の医療制度の特徴や歴史が分かり、へぇと思った本です。証券アナリストの方が書いていることもあってか、定量的なデータが多く用いられ、医療業界内部の規模感も掴めます。
著者も冒頭で記載している通り、医療は一生のうちいつか一度は関わることになる業界であ
...続きを読むり、政治とも密接に関係するため、有権者であれば一度は読むと良いかと思います。ただ、内容がそれなりに細かいため、休日にがっつり読むのが良いかもしれません。
そもそも私自身医療業界の人ではないのですが、身の回りに医療関係者がいるということもあり、医療全般に関する概要は面白いと思いました。
アメリカに留学している友人は、アメリカの医療は日本と違って制度上高額になるとよく言っているのですが、例えば諸外国と比較して質・料金・アクセス性がどうなっているかであったり、それらの実態である病床数、薬、医療の収支などがどのように整備されてきたかが記載されています。ど素人の身としては、このような多面的な視点で医療業界を把握できる点は面白いなと思いました。
ただし読んでいて気になる点も1つあります。当然ではあるのですが、この本の内容は題名の通り患者目線であり、既存の公開されている情報や著者の実体験から考えられる内容を整理されているものであるため、あくまで医療業界の外部からの視点で記載されています。そのため、最後のほうの章にある政策提言に関しては、一方的な目線のみで提言してしまっており、どうにも違和感を覚えてしまいます。
とはいうものの、医療従事者側の視点に関してはこの本の趣旨からズレる話かとは思いますので、今後他の本を読んだり知り合いの話を聞いたりして知見を深めようと思います。
医療業界の本は全く手に取ったことがないので、著者の他の本などはよく知らないのですが、シンクタンクや証券会社で長年医療業界に関する分析をされてきた方のようです。分析家らしい書き振りなので、気軽に他の本も、とは言いづらいですが、信頼しやすい内容かなとは思います。
今まで病院のお世話になった経験はほぼないものの、身の回りに医療関係者がいるため、ものは試しにと思って読んでみました。知らない世界を知ることができたという点で、読んでよかったと思います。