お金を扱う相場が特別なものとは思わない。
でも本当に面白いゲームだと思う。
技術と偶然性とリスクとリターンの混ざり具合が最高のゲームだと思っている。
僕の手法は主にデイトレードで、長期投資はほぼしていない。社会的観点からの投資はせず、純粋に勝負としてやってきた。
それでもこの本を出すことにしたのは、麻雀ライターであり 10年以上の付き合いがある福地誠さんに声をかけられたからに尽きる。
ふだんほとんど本は読まないが、福地さんの麻雀の本はだいたい読んでいて、ロジックを最優先する考え方に強いシンパシーを感じていた。
福地さんにまとめてもらえるなら面白くなるかもと思ったことが大きい。
投資家や投資を始める人に「何かアドバイスください」と言われたとき、僕は「上がり続けるものは上がり、下がり続けるものは下がる」とだけ言うことが多い。
今現在買われていることで上がっている、売られていることで下がっているというのは明確な事実としてそこにある。であればマーケットの潮目に沿って行動するのがいちばん勝つ可能性が高い。
概念上のランダムは、バランスよく散らばるイメージがあるんだろうけど、
ミクロで見れば、かなり偏る。
現実のランダムは残酷なもの。
誰もがイメージしやすい行儀のいいランダムとは違ってバランスを取ってくれない。
僕の場合、あまり小さな動きは気にしないで、ある程度下がったときに売ることが多い。
相場用語で、上がってきた株が一時的に下がることを「押し目」というけれど、僕は 2度目の押し目で売ることが多い。
押し目買いは、下がったところで買おうとするわけだから、逆張りの一種になる。
つまり、やってはいけない買い方のひとつ。
重要なのは勝率ではなく、トータルの損益。
そう考えられるかどうかが株で勝つための鍵となる。
株でいちばん大切なのは迅速な損切り。
失敗から逃げてはダメで、失敗は当然としていかに最小にとどめるか。
自分の予想どおりに動かないときは、自分が気づいていない〝何か〟がある可能性が高い。不自然な動きがあるときは、仕手筋の介入があったりインサイダー情報による売買だったりする。
そういう不自然さを感じたら、結果はどうあれ、基本はすぐ売るべき。
勝ちたい気持ちというより、損するのが怖いという心理を制御しないと、相場で勝つのは難しい。難しいというより不可能。
過去の事例を勉強しても通常時は勝てるようにならない。ただしとんでもなくイレギュラーな事態が起こったとき、類似する過去の事例を知っていると、こうしたほうがいいんじゃないかという、勝てるロジックをすぐ思いつくことができる。
相場では、 1匹目のドジョウがものすごくオイシイ。だけれども 2匹目のドジョウもそれなりにいる。
ただし 3匹目からは、いるかいないかもうわからない。
だから、みんなに先んじて動くように努めているけど、 1匹目のドジョウを捕まえるのはすごく難しい。 2匹目のドジョウは、マーケットから学習して、儲かっているだろう事象をすぐやること。これでもそれなりに利益を上げることができる。
企業の価値を株価が正しく反映していないと考えるよりも、株価こそが答えであり、世の中の総意として適正だとみなされている数字だと考えるほうが正しい。
僕の場合は、ただひたすら値動きを見た。
マーケットのことはマーケットでしか学べない。
本に書いてあるのは過去のことで、未来には役に立たない。「どれくらい努力しているか?」ともよく聞かれる。
夜中に値動きを見たくて起きちゃうくらいだから、努力はしている。
年金のような「盲目の資金」が流入しているか流出しているときがいちばんの儲かりどころ。
今は全体のボリュームが上がったわりに盲目の資金が比率的には少なくなっているけれど、年金とか投資信託とか海外ファンドとかがそういったものにあたる。
ちなみに今、僕がネット証券で使う可能性があるのは、 SBI証券、楽天証券、カブドットコム証券、 SMBC日興証券、モルガン・スタンレー MUFG証券、みずほ証券の6つくらい。
昔はひとつの証券会社がメンテナンスなどで取引不能になったら他の証券会社を使ったから、数が必要だった。けれども今はそういうことはなくなってきた。
僕だったら、まず日本市場では運用しない。
年金くらい大きくなると国内で回すには効率が悪くなる。
国内で運用すれば、結局多くの場合で日本人の金を奪ってくるのと同じことになる。日本人のためのお金を日本人同士で取り合っても意味がない。
通貨の信用を上げるのはいかなる国でも難しいけれど、信用を下げて通貨を安くするのは簡単。そうすると円安になる。
そうやって世界の資源の権利を買えば、日本政府としては大きく儲けられる。金融緩和もコントロールしながらやれば、 100兆円とかのレベルで儲けられるんじゃないだろうか。
ただ、もちろん国際社会から恨まれるだろうし、どこかに暴力で攻撃されるかもしれない。
富が増え続けると、どうなるのか?
富というのは、人間が綱引きしている状態を数値化したものだと思う。
激しいインフレが起きて円の価値が落ちない限り、自分の持っている資産は維持されると考えているなら、それは誤り。
たとえば仮想通貨などの新たな価値が生まれてくれば、自分の持っている資産は自然に薄まっていく。 新たな価値が生まれたとき、他の通貨や有価証券や不動産などの価値は、目に見える数字としては減っていなくても、実質的には毀損されて以前より薄まっているということ。
I Tバブル崩壊後やリーマンショックなどが起きたときには、証券会社のアナリストは「今は業績も悪いので売りです」などと言いがち。そういうときに売るのではなく買っていれば儲かっていた。
サブプライムローン問題が起きた 2007年には、日本の銀行もサブプライムローンを 1兆円持っているんじゃないか、減損会計で潰れるんじゃないか、と言われていたけど、あとから振り返れば絶好の買い時だった。
そういうタイミングを逃さないのが大切。
逆に、好況時は買わないほうがいい。
景気は循環するから、全体の株価が上がってきて、週刊誌に特集が組まれ、アナリストが勧めているようなときには、伸び代がなくなっている可能性が高い。
努力とリターンのスパイラルというものは存在する。 勉強すれば勝つ。
勝つと気分がいいからさらに勉強する。
すると、ますます上達して、さらに勝つ。